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第五話

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 王宮薬師は、住み込みでした。部屋は二人部屋。
 私は、夜についたので仕事は明日から。本当は、次の日の朝でもと言ったんだけど、朝の方が忙しいからと言われて連れて来られた。

 「数か月前に採用になったアルザンヌさんと同室よ」
 「はい」

 少し前を歩く王宮薬師副長のネツレスアさんの後姿を見つめていた。彼女は、水色の髪に瞳で、ピアスの色も水色。魔法属性は水という事ね。魔法は、毒を作るのには関係ないけど。
 魔法は大抵、水、火、風、土に分かれている。火は赤、風は緑、土は茶。それ以外にも色々あるらしいけど、私は他の色の属性を知らない。そう自分の属性も知らないのです。ただ毒属性ではないという事だけわかっている。

 トントントン。
 ネツレスアさんが、扉をノックした。

 「アルザンヌさん。同室の者を連れて来ました」

 部屋の中には、少し焼けた肌にニッコリ微笑んでアルザンヌさんが立っていた。髪と瞳は紺、ピアスはネツレスアさんより濃い水色のピアス。彼女も水属性なのね。色の濃さは多少違う。でも彼女は、ちょっと濃いかなぁ。まあ紺色の髪だからそう見えるんでしょうけどね。

 「初めまして。アルザンヌよ。あなたよりちょっと先輩なだけだから仲良くしましょう」
 「あ、はい。リリナージュです。宜しくお願いします」
 「では、基本的な事を教えてあげて下さいね」
 「はい」

 アルザンヌさんは頷いた。

 「荷物はそこに置くといいわ」
 「はい」

 アルザンヌさんが指差す床に置いた。

 「ネツレスアさんが基本的な事と言っていたけど、難しくないわ。まず朝食は七時。薬師全員で食べるの。王宮内用の薬を作る班と他国へ売る薬を作る班があるわ。私達は、王宮内用の薬を作る班よ。そしてお休みは、十日に一度」
 「十日に一度のお休みなの?」
 「えぇ、そうよ。あと、王宮の建物から出ては行けない事になっているわ。これは、薬のレシピなど流出させない為。だから王宮内から出る時は、届け出が必要よ」

 なんと、王宮に缶詰!? 聞いてないわ。

 「まあ規則的な事は、ざっとこんな所ね。何か質問ある?」
 「いえ……」
 「じゃ、私から質問いいかしら? あなたの属性は? 黒色なんて初めて見たわ」

 私の顔……いえ、耳についたピアスをジッと見て言った。隠してもすぐにばれると思って隠さずにいたけど、黒ね。ちょっと暗い場所だと黒に見えるのよね。黒と比べると、紫だってわかるんだけど。

 「実は、私も自分の属性知らないの」
 「そうなんだ。まあ四属性以外にもあるらしいけど、珍しいわ」

 彼女は、毒魔女の事を知らない人みたい。
 街に住んでいた人でないと、知らないのかもしれない。私は少し、ホッとした。この王宮内では、毒魔女と虐げられる事はなさそうでです。
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