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『レベル11―天の川に魚は泳いでいませんから! ―』

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 大場と二色さんは、僕を見て驚いている。

 「なしたのお前」

 さてどうしよう。
 本当の事を言うと面倒だよな。

 「か、川に落ちた」
 「はぁ? 何やってんだよ」
 「大丈夫なの? 怪我は?」
 「うんまぁ。右手がちょっと痛いかな」

 二人は、チラッとミーラさんを見た。
 怪しんでいるのかもしれない。

 「うんとね。魚を追いかけて……」
 「うわぁ!」

 僕は、慌ててミーラさんの口を塞ぐ。
 これでまた、自分達もモンスターを出すなんて言われたら僕は帰れない。
 早く帰りたい。寒いんだよ!

 「そう! 魔法で魚をすくおうと!」
 「それで川に落ちたと?」

 僕が頷くと、大場は大きなため息をついた。

 「気持ちはわかるけどさ」

 わかるって何?
 大場も魔法で魚をすくいたいって事!?

 「まあそれは、また今度という事で花火しましょう!」
 「花火って何?」
 「これよ。これ買いに行っていたら遅くなって」

 買い物袋から出したのは、花火セットだ。線香花火もある。
 帰りたいけど言ったら帰してくれるだろうか?

 「わぁ。すごーい」

 って、もう始めてるのかよ!
 結局、僕は花火をして帰る事になった。
 寒い! これ絶対風邪ひいた。
 明日は、大人しく寝ていよう。

 まあこのずぶ濡れがなければ、楽しい時間だったんだけどね。
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