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『レベル7―チョコにはご用心!?―』

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 次の日、部活は休みになった。
 二色さんとミーラさんが手作りチョコにチャレンジする為だ。

 「胃薬用意しないとな……」
 「胃薬?」

 僕は、珍しく大場と一緒に帰っていた。
 いつも大場と一緒に帰っている二色さんが、先に帰ったからだ。
 思うんだけど、二人の関係ってなんだろう?
 恋人どうしでもなさそうだ。
 普通、モテてしかたがないって、恋人の前で言わないだろうし、言っていたらやきもちの一つでも焼くよね?
 本当に、魔女っ子大好き繋がりなのか?

 「なんだよ。ジッと人の顔を見て」
 「え? いや、別に」
 「しかし、どんなの作らせる気なんだろうな」
 「あのさ。二色さんからもチョコ貰ってるの?」
 「あぁ……」

 あぁって。気のない返事。大場は、別に二色さんの事を好きではないのか?
 やっぱりただのオタク仲間なのか!
 二色さんも大人しくしていたら可愛いのに……。
 って、二色さんは僕にくれるのかな?
 もしかしたら人生初のチョコを貰えるかも!!
 ちょっとだけ期待して、その日は帰った。

 そして次の日。
 廊下を歩いているとフッと視線を感じ、チラッと見ると、キッとこっちを睨んでいる!
 え? 何で?

 「どうしたの? あ、そうだ。今日も愛音さんのところに行くから!」
 「そういう事で。今日も部活はなしよ」

 今日は何故か、色んな人に睨まれる!
 しかも女子に! って、もしかして僕じゃなくて、この二人?
 あり得るけど、本人に聞いても自覚がない事が多いからなぁ。
 そう思って僕は、何も聞かなかったんだ。でもこの時、確かめるべきだった!

 そしてバレンタインの当日。
 放課後になったけど、一つも僕のところにはチョコは届かない。
 部室に行くと、大場がいた。けどチョコを一つも持っていないじゃないか!
 見栄だったのか?

 「はぁ。とうとうこの日が来たな……」

 何故かため息交じりで、大場が僕に言った。
 何なんだ一体。やっぱり自慢なのか? ここに持って来てないだけでいっぱい貰ったのか?

 「あのさ……」

 トントントン。
 気になって聞こうとした時だった。
 ドアがノックされる。

 「はい?」

 誰だろうとドアを開けた。
 僕は立っている人物に驚いた。
 二年生の安達あだち陽乃ひなの先輩が立っていた!
 誰もが憧れるこの学校のマドンナだ!

 ま、まさか。大場にチョコを!?
 そんなにモテるのか大場って!

 「確か、あなたがこの部の部長の審くんですよね?」
 「え? あ、はい」
 「お話があります。来てください」
 「え?! 僕?」

 大場じゃなくて、僕に用事? て、部長の僕にだよね……。
 それでも高鳴る胸。
 僕は頷いて、彼女について行った。
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