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『レベル6―雪の結晶を求めて―』

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 学校の裏は、雑木林になっていて、その奥にぽっかりと空いた場所がある。僕達はそこに向かった。

 まあここならば人目につかないし、火を扱わない限り大事にもならないだろうけど。

 ミーラさんは、平然と二人の前で魔法陣を描き、そこから杖を出した。
 もう何も言うまい。
 大場も二色さんも魔法は信じているらしいけど、この行為は手品だと思っている。

 けど非科学的な行為なので、もしかしたら魔法だと思っているかもだけど。まあ二人に知られても害があるのは、僕にだけ……。
 こうやって、モンスターを出そうとするって事ね!!

 「はい」
 「ありがとう」

 ミーラさんから嬉しそうに二色さんは杖を受け取る。

 「じゃ、行くわよ!」
 「はい! 準備OKだよ!」

 ミーラさんは、しっかりと手袋をしてそう返した。
 そうだった。雪の結晶を見たいんだったね。

 「いでよ! 雪女!」

 はぁ!? 雪女!?
 そう言えばその杖、唱えた本人がイメージするモンスターが出現するんだった!

 二色さんが振るった杖の先に、女性が現れた!
 透き通る様な白い肌。銀の長い髪に白い着物。
 ひんやりとした空気が漂い始めた――。

 「凄い! イメージ通りだわ!」
 「おぉ、雪女!」

 二人は大はしゃぎ!
 と、その雪女の周りから、凄まじい風が吹き始めた!

 「ちょ!!」

 立っているのもやっとなぐらいの強風が、落ち葉を舞い上げる! それが冷気を帯び始め、いつの間にか辺りは吹雪になっていた!

 「マジかよ!」

 僕は叫ぶ!

 「あの……風はいらないわ!」

 二色さんがそう言うも、雪女はやめない。
 当たり前だが、二色さんが召喚したとしても、彼女が主人でも何でもない!

 「すげぇ。これ本物の雪じゃねぇ?」

 感動したように言う大場だが、見ればガクガクと寒さに震えている。

 僕達は薄い上着を羽織っているだけ。こんな真冬の天候には適さない!

 「どうするのさ!」
 「凄いね! これが雪? 白い。綺麗! わぁ、冷たい!」

 ミーラさんは、喜んで走り回るだけ! 彼女は調節機能付きだから寒くないらしい。元気いっぱいだ!

 「取りあえず倒してもいいんじゃねぇ? 雪見れたんだし!」

 僕の問いに大場が答えた。彼も寒いんだろう。
 よかった。これで倒しても文句は言われない!

 僕はポケットから杖を手に取る。

 「るすになにする」

 杖を元に戻す言葉じゅもんを口にすると、ペン型だった杖は元の大きさになった。
 それを雪女に向けて振るう!

 「消滅しろ! 消滅しろ! 消滅しろ!」

 僕は三度攻撃した! 目に見える攻撃ではないけど、言葉だけで効果がある。だが、相手が強いと一回で倒れない。なので連続攻撃をしてみたんだけど……。

 吹雪は納まり、辺りは雪野原になっていた。
 これ、月曜日までに解けるかな? ここに人が来たら大変な事になりそう。

 「え~! 結晶まだ見てないのに!」
 「いや、この状況を見てよ!」

 ミーラさんの文句に、速攻僕はこの真っ白な景色を指差し返す。

 「ミラさん。結晶は本当の雪が降った時まで取っておきましょう」

 二色さんも寒かったらしく、今回は僕の味方になってくれた。まあミーラさんだけ寒くないからね。

 「そういう事で、審、とどめ宜しく!」

 寒さに震えながら大場が言った。

 雪女は膝をついて、僕を赤い目で睨んでいた!
 やばい! 赤い目になっている! ゲームでいうなら、ある程度HPが削れると、敵が狂暴化になる状況と一緒だ!

 どんな攻撃してくるかわからないし、攻撃される前に倒さないと!!
 そう思って、両手で杖を持った時だった、凄い強風が吹き荒れた!

 「きゃぁ!!」

 「うわー!」

 二色さんと大場が軽く飛ばされ、雪の中に倒れた!
 って、僕も雪の上に転がった!
 そのまま僕は杖を雪女に向けた!

 「消滅! 消滅! 消滅!!」

 雪女が消滅したのか、強風は納まった。

 「倒したか?」

 僕はそう言いつつ、体を起こす。雪女の姿はない。……って、ミーラさんの姿もない!!

 「え……」

 まさか、一緒に消滅って事ないよね?
 僕はブルブルと震えがきた。寒さからじゃない。ミーラさんを一緒に消滅、つまり殺してしまったかもしれないと思ったから。

 どうしよう……。

 「びっくりした……」

 頭上からぼそりと声が聞こえ、潤んだ瞳を上に向けた。
 ふんわりと浮いたミーラさんがそこにいた!

 「ミ、ミーラさん!!」

 僕は叫んでいた。
 もう、間際らしいんだよ!!

 「生きてた……」

 「浮いてるわ」
 「浮いてるな……」

 二人はあんぐりと、ミーラさんを見上げていた。
 げ! そうだった! これで完全にミーラさんの正体がしれた。
 まあ今更感はあるけどね。

 「何やってるのさ! おりてきなよ!」

 僕が叫ぶと、ミーラさんは僕の前に降り立った。

 「今回もレベルアップしたわ!」

 うん。彼女らしいよ。まずは杖だよね。
 僕は何故か彼女の声に安堵する。

 くっしゅん!
 さむ!!

 雪をはらうと、僕は立ち上がった。何か出会った時の事を思い出す。あの時は、雨だったけど。
 二人も立ち上がった。
 そして僕達四人は、改めてこの真っ白な景色を見渡した――。
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