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『レベル5―航空祭に魅せられて―』

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 数日前の放課後部室にて突然大場が呟いた。

 「今度の日曜日、航空祭だな。今年も晴れるかな?」

 「こうくうさい? って何?」

 知らないよねと大場と二色さんはミーラさんを見て頷いた。
 ミーラさんは帰国子女という事になっている。その為の反応だ。

 「航空機が飛ぶ姿が披露されるお祭りよ! 凄いんだから!」

 二色さんも見に行った事があるらしく、ミーラさんに熱弁する。

 「こうくうき?」

 ミーラさんは可愛く首を傾げる。

 「飛行機だよ。ブルーインパレスとか聞いた事ないか?」

 ミーラさんは、大場の話に首を横に振る。すると大場と二色さんは顔を見合わせ頷いた。
 嫌な予感がする……。

 「航空祭に行こうぜ!」

 大場がそう言うと、嬉しそうにミーラさんは頷く。それを確認した二色さんはこう言った。

 「許可を取りに行くわよ! 七生くん!」

 「何で? 必要ないじゃん! それにそうなると先生か大人がいないとダメだと思うけど!」

 許可という事は、部活動として行くという事。行きたいなら三人で行けばいいのに!

 「大人がいればいいの?」

 何故かミーラさんがそう聞いて来た。

 「師匠に頼んでみようか?」

 「はぁ?」

 「お願い出来るの?」

 二色さんの問いにミーラさんは頷く。

 ちょっと待てよ。僕が持っている杖がレベルアップするまで異世界には帰れないんじゃなかった?

 「あのさ。師匠とは連絡取れるの?」

 「うん。この世界にも魔法があったって言えば喜んで来るよ。きっと!」

 ミーラさんは興奮して言った。
 どうやら、魔法のお披露目と受け取ったらしい。あれほどこの世界には魔法使いはいません! と言ったのに!

 「今日、帰ったら言うよ!」

 「ちょっと待って! もしかして帰ってるの?! 戻れないって話は?!」

 僕が驚いて言うと、ミーラさんは、あっという顔つきになる。
 僕はまたもや騙されていたらしい! って、よく考えればわかる事だった。彼女は、僕の家に泊まるでもなく、姿を消していた。毎回、異世界に戻っていたんだ!
 マ、マヌケすぎる……。

 はぁ……。

 「じゃ、話は決まったわね! ほら許可をもらいに行くわよ!」

 「いや、部活動にする事ないくない?」

 僕は抵抗を試みてみた。

 「何を言ってますか! 師匠に来て頂くチャンスなのよ!」

 「………」

 目的が変わっていた。二色さんは航空祭に行きたいから師匠に会いたいに変わっていた。多分、反対しても無駄だろうなぁ……。なんでこうなるんだろう?

 「わかったよ。許可がおりたらね」

 何の事はない。大人が同行すると言ったら許可はあっけなくおりた。
 あぁ、行きたくない。
 絶対に何か起きそうな予感がする。師匠まで一緒だなんて!

 ミーラさんもそうだが、師匠もこの世界の常識が通用しない。大変な目に遭うのが目に見えている。
 こうして、僕以外は皆、航空祭を心待ちにしていた。
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