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『レベル1―少女がくれた杖―』

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 それは、学校からの帰り道。予報を聞いて、折りたたみ傘を持って来ていた僕は、雨が降っていたので当然差して帰る。暫くは平穏だった。
 そこに、声が響いた。

 「――この世界とリンクする!」

 僕は、辺りを見渡す。雨の中、凛と響くその声の主を探す。僕以外、誰一人探していないその人物を!

 彼女は、まさかの空中に浮いていた! そして彼女の頭上には、光る円が見えた! ファンタジーの世界で言えば――魔法陣!
 それは、不思議と光を放って見えた。

 「お願い落ちて!」

 僕は、レーザー光線でこんな事できるの? 彼女はどうやって浮いているの? って一瞬関心していたら――モンスターが落ちて来た!
 そう、まさに落ちただった! いち、にい、さん……十体も! 魔法陣からボトボトと! それは辺りを見渡し、少ししたら周りの人にかぶりついた! それなのに、かぶりつかれた人は、悲鳴すら上げない。少しフラフラする程度!
 僕は、後ずさりながら『わー!』と叫んで走り出した。その時はまだ、傘をギリギリ差し――持っていた。
 悲鳴を上げて走り出してせいか。そのモンスター達は、僕を追いかけ始めた!

 「私に力を! あの魔物を消滅せよ! えい! ……あれ?」

 頭上で、少女の声が聞こえた。しかも最後に『あれ?』って言っていた。それって何か失敗したって事? いや、そんな事に構っている暇などない! 逃げないと!

 「私に力を! あの魔物を消滅せよ! えい! えい! えいってば! なんでよ!」

 頭上の少女がなんかうるさい。って、いうか、このモンスター何とかしてよ! キミの責任だよね? ――もう、追いつかれそう!
 結局僕は、走りづらいので傘を放り投げた。過行く人は、ジッと不思議そうに僕を見ていた。そりゃそうだ。土砂降りの冷たい雨の中、持っていた傘を放り投げ、全力疾走しているんだから!

 かぶりつかれても、死にはしないのかもしれない。さっきかぶりつかれていた人は、ちょっとよろめいただけだったから。でも、想像したらわかるでしょ! モンスターにかぶりつかれる恐怖! きっと僕は『ギャー』と叫び、のたうち回るに違いない! そして、救急車で病院へ。でも、何も問題なくて、これは頭が――違う意味で病院送りさ! ――でも、このままだと、それは現実になりそうだよ!

 そして、冒頭のダイビングに繋がる――これじゃ、睨まずにいれないのわかるよね!
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