偽りステータス冒険者は神秘級ステータス

すみ 小桜(sumitan)

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029 ★マーリンの死因★(リー視点)

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 目を覚ますと話し声が聞こえた……。

 「よかった。マーリンさんは?」

 その問いに答えは帰った来なかった。でもフェアルが泣きだしたから、きっとアーチさんが首を横にでも振ったんだろう。
 彼は死んだのか……。

 俺はどうやって助かったんだ?
 回復魔法をかけてもらったのはわかるけど……。
 俺が気を失ってから何が起きた?

 チラッとカーテンの向こう側にいるだろうフェアルに声を掛けようと振り向くも、アーチさんが出て行った後にわんわん泣いていた声が聞こえない。
 寝たのか……。

 俺は体を起こした。
 あんなに苦しかったのに何ともない。痛くもない。
 魔法って凄いもんだな。

 でも死んでしまえば、助けようもない。
 出来れば聞きだしたかった。誰がフェアルを殺そうとしているのか……。その為に泳がせたのに。最悪の結末だ……。

 身を守る|術(すべ)を何か身に付けなくてはいけないかもしれない……。
 はぁ……。

 「起きたのか?」

 そう言って、様子を見に来たアーチさんが顔を出す。

 「話いいか?」

 俺が頷くと、彼はフェアルと反対側に来て椅子に座る。

 「体はどうだ?」
 「お蔭さまで、驚くほど治ってます」
 「そうか。で、何があったんだ?」

 「目的はわからないけど、マーリンさんは賊の仲間だったんじゃないかと思う。あの場所に誘導されて、女性しか入れないと言って二人で入って行った。でも不審に思った俺は、こっそり後をつけて行ったら、あぁなった……」

 鑑定した事は言えない。だからこういうしかないだろう。これで納得してくれればいいけど……。

 「女? 彼は男だろう?」
 「女のフリをしていた。グレイブさんに聞けばわかる。彼もそう思っていたはずです」
 「なるほど」

 納得したのかそう言って、アーチさんは頷く。

 「で、彼はなぜ切り刻まれていた?」
 「切り刻まれていた?」

 そのまま同じ問いで返す。
 まさか! 反射を使ったのか!
 俺はチラッとフェアルが寝るカーテンを見る。

 「直接の死因ではないけどな。どうしてそうなったのかがわからない。彼は魔法を持っていなかった」

 だろうな。って……。

 「直接の死因じゃない? どうしてそうわかるんですか?」
 「HPがゼロだったからさ」

 アーチさんの返答に俺は眉を顰める。それは普通だ。HP0=死。意味がわからない。それに何故原因がそれじゃないと断言出来るんだ?

 「最大HPがゼロだったんだ! ヌティーナに鑑定させた。疑うんだったら鑑定してみるか?」
 「最大値がゼロって……。そんな事あるのか?」

 どういう事だ? ……バットスキルなのか? それしか考えられないが……でもマーリンは、魔力3……。

 「いや、鑑定は別にいい……」
 「一つ聞くが、お前達は魔法なんて持ってないよな?」
 「ないと思うけど?」

 そう返す。実際持っていない。でもきっと彼が、鑑定結果で反射を持っていたのがわかったはず。魔法を反射しこねたと思っても不思議じゃない。

 「だよな……」

 ボソッとアーチさんは呟く。

 「うーん。文献に稀に最大HPがゼロで死亡した者がいると記されていた。それも予知持ちに起こるらしい……」

 腕を組みアーチさんは言った。

 「条件に当てはまるって事ですか……」
 「お前……」

 しまった! つい……。彼のスキルについて何も言っていなかったのに……。やばい!

 「当たりですか?」

 務めて平然として言ってごまかす。

 「……そう、予知を持っていた」

 疑いの眼差しだけど、アーチさんはそう言った。
 何やってるんだ俺は。自分から暴露するような真似……。気を付けないと。

 「どうやら体の傷の事は、フェアルに聞かないとダメか……」

 そう言ってアーチさんは立ち上がる。

 「まだ休んでいろ」

 そしてそう言い残し部屋を出て行った。

 出来ればフェアルには、聞いて欲しくないな。
 反射を使ってウィンドバーストを跳ね返したのはまず間違いない。自分が殺したと思っているはずだ!

 しかし最大HPがゼロか。
 気を失う前に鑑定したステータスは、鑑定師になっていた! 予知じゃなくて予言に……。
 でも死んだら戻っていた?

 あれは別人なのか? そういえば、俺の自動鑑定の事知っていたな……。下調べ済みって事か。

 フェアルだけじゃなくて、俺も狙われていたのか? グレイブさんとの関係も知っていて近づいたとするとそうなるよなぁ……。
 一体誰なんだ? これってダウスさんが助けろと言った事と何か関係あるのか?

 あぁもう! 何故よりによって最大HPゼロに!
 ――HP代償! 確認すればそんなスキルが女性のステータスにあった! もしかして女性のステータスの時に魔法やスキルを使ったから最大HPが減ったのか?

 一体どういう仕組みで、二つのステータス?
 一人で予言と予知持ちはいないとあの本には書いてあった。同じ体だけど、別人のステータスなのかも……。

 あの時、もっと余禄があれば、さらに鑑定したんだけど……。本当に今更だ……。

 「……くすん」

 うん? 起きた?

 シャーっとカーテンを開けると、目を真っ赤にしたフェアルと目が合う。

 「リーさん……」

 俺は彼女のベットに行き、腰掛ける。

 「大丈夫。君は彼を殺してないから」

 フェアルは、首をブンブンと横に振る。やっぱり殺してしまったと思っていたみたいだ。

 「君じゃない。彼を殺したのは、彼の中にいた女性だ! 何故か彼の中にはもう一人存在していたみたいなんだ。ウィンドバーストを使ったのは、その彼女。そしてその彼女は、HP代償というバットスキル持ちだった!」
 「え……。バットスキル?」

 俺は頷く。このスキルはバットスキルに違いない! マーリンの中にいた女性は、魔力5以上の者! 同一人物じゃない!

 「いい? わかった? だからアーチさんに聞かれても変な事言わないでよ。魔法の事とか、何も言わないで! 知らないで通すんだ! 俺の言ってる意味わかるよね?」

 フェアルの目をジッと見て言うと、彼女はこくんと頷いた。彼女が余計な事を言えば終わりだ。俺のステータスも彼女のステータスも露見する。まあ確認する事は出来ないけどね。

 「フェアルごめんね。俺は君を助ける事が出来なかった!」

 そう謝ると、彼女は首を横に振った、泣きながらブンブンと――。
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