偽りステータス冒険者は神秘級ステータス

すみ 小桜(sumitan)

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027 ★もう一人のマーリン★(リー視点)

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 最悪だ! 入ろうとするも、 洞窟の入り口が結界で覆われた!
 これではこの入り口からは追えない!

 ――甘かった! やばい! あいつが結界師だって事忘れていた!

 こうする為にフェアルを手なずけていたのか!!
 もっと素直になってついて行けばよかった! 後悔するも既に遅しだった……。

 「くそ!」

 俺は入口の上の岩をガンと叩く。
 もうやる事と言ったらこれしかない!

 俺は祈りつつ眼鏡を外し、山の中にある洞窟を鑑定していくと、洞窟は下に続いていた。そしてもう一つの出入り口を発見する!
 そこは、山の麓だった! あった! 何とかなるかもしれない!

 結界は二人が入って行った入り口付近にしか張られていない。俺が入れない様にする為だろう。
 ここにしか張ってないって事は、他の入り口を知らないか、見つからないと思っているって事だ。
 まあ見つけた時には、かなり時間がかかっている。ここを下りるのには、どう頑張っても四時間はかかる。

 俺は急いで山を下りる。ジャンプを使い一時間ぐらいでもう一つの出入り口にたどり着く。
 ジャンプなんてあったってっと思っていたけど、結構役に立っている……。

 「はぁはぁ……。あった。くそ……。クラクラする」

 俺は壁に手を着きながら前に進む。本当は走りたいけど、このまま走れば倒れそうだ。だいぶ自動鑑定になれたけど、やっぱり情報量が多いとダメだ……。
 今、倒れる訳にはいかない。俺のミスでフェアルが殺されるかもしれない……。

 間に合ってくれ!

 もう一つの入り口の通路には、たいまつに火がつけられていた。ここから逃げる気だったのかもしれない。
 逃げ道も用意していたとなると、ちゃんと作戦を立てていたって事か……。流石だな。

 十分程歩くと行き止まりになる。
 辺りを触ってみるも、タダの岩だ。

 「くそ、鑑定しないとダメか」

 出来ればしたくない。けどしないとこれ以上先に進めない……。

 はぁ……。
 俺は覚悟を決めて、眼鏡を外す。
 仕掛けを見つけ、岩を押すとそれは内側に崩れた!

 「げっほ。やっと開いた……」

 見れば二人は目の前にいた。フェアルがマーリンに壁に押し付けられていた!
 何とか間に合った! 俺は安堵する。

 穴が小さいので四つん這いになり這い出ると、目の前にいるフェアルの手を取る。グイッと引っ張れば、あっけない程彼女はなだれ込んで来た。

 彼は驚いた顔をして俺を見ている。
 まさかここから来るとは思ってなかったみたいだな――。



 「……私の楽しみを!」
 「楽しみ!? 正気の沙汰じゃないな!」

 殺人を楽しむなんて!
 ってさてどうしようか。一番いいのは、この穴から外に逃げるだけど。
 チラッと足元の穴を見る。

 「逃がさないわよ!」

 その声にマーリンを見れば、そう言った後、手を開き何かを呟く。

 なんだ? 何をする気だ?
 何か雰囲気も変わったような……。

 「ここで一緒に死になさい!」

 何! マーリンは手を俺達に向けて来た!
 俺は咄嗟にグイッとフェアルを抱き上げ、横に飛び攻撃をよけた!

 「きゃー!」
 「あぶな……」

 どういう事だ? 何故風の魔法を? そんなモノ持ってなかっただろう? 彼が持っていたのは、反射と予知だろう? どうなってる?
 嫌な汗が流れてくる。

 地面に下ろすも、フェアルは俺の腕の中で震えている。
 まずいな。逃げ場がない……。それに俺も限界に近い。

 「あら? 交わしたんだ。恐怖が長引くだけなのに」
 「や、やめて、マーリンさん!」

 泣きながらフェアルが叫ぶ。だが全くマーリンは動じない。微笑みさえない。

 「あなた邪魔なのよね」

 また何かを呟く。
 くる!!

 バッとフェアルを突き飛ばす! 攻撃は真っすぐ俺を狙ってきた! それを避けようとするも無理だった! 俺は壁まで吹き飛ばされた!

 バン!

 「う……」
 「きゃー! リーさん」

 フェアルの悲鳴が聞こえる。
 俺は、壁に寄しかかるように座り込む。息が苦しい……。
 これは、あばらがいったかも……。

 うっすらと目を開けると、眼鏡が吹っ飛び目の前にいるマーリンの鑑定が流れて来る。

 何だこれ……。どうなってる? ステータスがまるで違う。性別まで……。
 女性で鑑定師? 何で予知が予言になっている? 何故レベルが上がっているんだ。予言は予知の神秘級に当たる……。

 「はぁ……はぁ……。逃げるんだ、フェアル! 彼女は……ウィンドバーストを持っている……」
 「嫌よ!」

 フェアルは泣きながら叫んだ。

 「ふーん。自動鑑定って職業鑑定も出来たのね。でも今更ね」

 確かに今更だ。あぁ反撃するスキルもないのに、俺は何故行かせたんだ……。
 このままだとフェアルが殺される! ごめん、ダウスさん。彼女を守れなかった……。

 「リーさん!」

 フェアルの叫ぶ声が聞こえる。
 ごめん、フェアル。君を守ってあげられなかった……。
 俺は闇に落ちて行った――。
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