偽りステータス冒険者は神秘級ステータス

すみ 小桜(sumitan)

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016 ★ダウスとの出会い★(リー視点)

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 俺は窓から星を眺めていた。
 懐かしい人物、マルモンドさんに会ったら昔の事を思い出した。って、彼とはちょっとしか会ってないけど、でも『おめでとう』って言われた事は覚えてる――。



 △▽△▽△▽△▽△▽ △▽△▽△▽△▽△▽



 大体の者は十五歳ぐらいに職業鑑定を行う。十二、三歳ぐらいから能力が現れる者が多く、十五歳ぐらいで安定する。
 俺も十二歳ぐらいから、能力が現れた。

 初めてそれを実感したのは、これって何だろうと、拾った物を手に取り見つめた時だった。いきなり頭の中に、声が聞こえた。
 驚いた俺は、辺りを見渡すも誰もいない。

 それからは、疑問に思った物の答えが頭に響くようになった。そして暫くすると声だけじゃなく、見た物に線などが入ったり、文字が浮かんだりするようになる。それぐらいからだった。頭痛が起こり始めたのは。

 頭痛が酷いと医者に掛かると問題ないと診察され、職業の能力の開花かもしれないと、ギルドで職業鑑定を進められた。
 俺の様な者もいて、十五歳前に鑑定を行うものもいる。俺は三時間掛けて向かい、近くのマッターリ街で職業鑑定を行うことになった。

 「怖がることはない。その魔法陣に立つだけだ」

 職業鑑定を行うマルモンドさんに言われ、魔法陣に立った。
 つい、これは何だろうと、魔法陣を見てしまった!
 そうしたら聞いた事のない単語が次々と浮かび、聞こえ、頭痛と共に吐き気がして倒れてしまった。

 それでも鑑定は行われていたらしく、目を覚ますと王宮に行くように言われる。

 「君は、鑑定拒否を持っているようだ。ワシでは鑑定は出来ない。王宮で受けてほしい。……おめでとう」

 おめでとう?
 何故そんな言葉をマルモンドさんに掛けられたかその時はわからなかったが、鑑定拒否は魔力5以上の者しか持たない事がわかっていたからだった。

 その時はまだ十二歳。ワケがわからぬまま、王宮を訪れた――。



 △▽△▽△▽△▽△▽ △▽△▽△▽△▽△▽



 「こんにちは」

 碧い瞳と髪の他の人とはちょっと違った衣装を着た男――ハシントさんが、俺に声を掛けて来た。
 チラッと見るもすぐに目を閉じた。また鑑定を行ったら困るから……。

 マッターリ街のマスターに、多分鑑定が行われていると思う。そのスキルは、バットスキルと言って、魔力5以上の者が持つスキル。それ以外、考えられないと言われた。
 目を瞑ってやり過ごせとも言われ、兎に角目を瞑っていた。

 「うむ。君は賢いな。エルネス!」
 「はい」

 突然、右手を握られた。

 「手を引っ張ってあげるから、目を瞑ったまま歩こうか」

 俺は静かに頷いた。
 他にも数人いる気配がする。確認したい気持ちをグッと堪える。

 「目を瞑ったまま、ここに立っていてもらえるかな?」

 そう言われ、こくんと頷く。
 多分ここは鑑定の間で、魔法陣の上に立たされているのに違いない。

 暫く何かやり取りをしている気配がするも、目を閉じていた。

 「ダウスを呼べ」

 そう叫ぶ声が聞こえた。
 そして、声を掛けられる。

 「もう一度違う者が、鑑定を行う。しばし待つように」

 俺がこくんと頷くと、ぼそぼそと声が聞こえて来た。

 「おいおい、魔力6以上の鑑定拒否持ちって……。凄いのが現れたな」
 「噂では、勝手に鑑定するバットスキル持ちらしいぜ!」

 目を瞑っていても視線がわかるほどだった。

 怖い……。
 大人の中にポツンと立たされて、好奇の目に晒され、親も近くに居ず、不安でしかたがない。

 「そんなに緊張しなくても大丈夫だ」

 騒がしくなったと思ったらポンと肩に手を置かれた。
 つい顔を上げ目を開く。

 王宮の制服を着た俺と同じ灰色の髪をしたおじいさんが、俺を見てほほ笑んでいた。

 「大丈夫」

 目の上に手を掲げられ、目を瞑った。目を瞑れという意味だと思ったからだ。

 「私が、これから君を鑑定するダウスだ」
 「うん。……俺、これ終わったらもう帰れる?」

 優しい声だったので、つい本音が漏れた。
 そっと頭を撫でられる。

 「あぁ、帰れるよ。もう少しだけ頑張れ」

 俺は頷いた。

 「ダウス、始めてくれ」
 「はい」

 撫でていた手が離れる。
 場がシーンと静まり返った。

 「……魔力6の鑑定師です」

 ダウスさんがそう言った声が聞こえると、辺りが騒めき立つ。

 「うむ。詳細は違う部屋で……」
 「はい……」

 俺、本当に鑑定師だったんだ! しかも魔力6!
 皆に自慢できると思った。王宮にも入れる! そう喜んだ。

 「では目を瞑ったまま、部屋に戻ろうか」

 手を引かれ俺は、待機する部屋に連れて行かれた。



 多分一時間ぐらいたった頃、声を掛けられた。

 「眼鏡を掛けようか」
 「眼鏡?」
 「これ掛けたら目を開けてごらん」
 「うん……」

 手に眼鏡を渡され、言われた通り掛けて目を開ける。
 目の前には、ダウスさんがいた。

 「どうだ? 勝手に鑑定になっているか?」
 「えっと……」

 これは何?
 暫くしても何も聞こえないし見えない! ――目に見える物が勝手に鑑定されない!

 「凄い! 何も起こらない!」
 「それは簡易的な物だ。ちゃんとした物は数日掛かる」
 「うん。ありがとう……」

 ニッコリ微笑んで、また俺の頭を撫でる。

 「ちょっと散歩しようか」
 「うん」

 俺は頷いて、ダウスさんについて行く。
 王宮は広かった。
 外には庭園がいくつもあり、そこを歩く。

 見たことがない花が植えられていて、色も綺麗で嬉しさに走り出す。

 「すご~い!」
 「こら、転ぶぞ」
 「だいじょ……あ!」

 お約束の様に俺は転んだ!
 眼鏡は外れなかったがズレて、直接見た世界から勝手に情報が流れ込んで来た!

 「あ……!」

 俺は驚いて、ギュッと目を瞑った。

 「大丈夫か」
 「………」

 体を起こし、ぺたんとその場に座る。

 「どうした?」
 「疑問に思わなかったのに、直接見えた所から情報が……」
 「そうか。大丈夫だ」

 目を瞑って答えた俺を抱きしめ頭を撫でてくれる。

 「鑑定を恐れないでほしい。君は鑑定師なのだから……」
 「………」
 「大丈夫。上手く付き合っていける」
 「うん……」

 俺を離すとダウスさんは、ニッコリ微笑んだ。

 「座って話そうか」
 「うん……」

 ダウスさんが近くのベンチを指差し、そこに座る。

 「私はある日突然、文字が書けなくなった。病気だと思ったが違った。原因は、バットスキルだった」
 「え? それって……」

 俺がダウスさんを見ると頷く。

 「そう君も自動鑑定というバットスキルを持っていた」
 「自動鑑定……それって、どういうスキル?」
 「興味があるか?」

 ダウスさんの質問に俺は頷く。

 「では自分で調べてみるといい。私は文字は書けなくなったが読めたから、本で色々調べて情報を手にいれていた。折角王宮にいるのだから、王宮図書館行こう。私と一緒なら入れるから。どうかな?」
 「うん! 行ってみたい!」

 調べたいというよりは、図書館を見てみたいと思いで頷いた。
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