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4――探求者になりまして
15話目
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木の根元から木のてっぺんまで食べつくしたチロは、戻って来ないと思ったら寝ていた。
寝る子は育つって言うけど、寝すぎじゃないか?
取りあえず先に魔石を売りに行ってみるか。
チロを抱き上げ、街へ走って戻る。
そして、さっき訪ねた場所へ行った。
「あの~」
「うん? あなたはさっきの……」
「これ、引き取ってもらえますか?」
俺が魔石を2個見せると、こちらへと部屋に移された。
窓がなくテーブル一つにイスが四つ。小さな部屋だ。
「そこに座って少々お待ちください」
「はい」
俺は、イスに腰を下ろす。
背もたれがない木のイスだ。
テーブルには何故か、白いテーブルクロスが敷いてある。
食堂とかならわかるだ、この世界ではこれが普通なのだろうか?
「お待たせしました」
先ほどの男の人が俺の前に座り、右隣に違う男の人が座った。
「私は、探求協会の支部長のマイル。彼は、タートと申します」
なんと! 支部長自ら受付をしていたのか。
「で、持ち込んだのはどれかね?」
「あ、はい。これです」
「拝見します」
タートさんに手渡すと、魔石をジッと見て、バッと俺に振り向いた。
「魔石だ! これをどこで?」
「どこって、すぐそこの森の中でですけど」
「森ですと?」
マイルさんが驚いた顔をする。
もしかして、勝手に取っちゃいけない場所だったのか?
やばい。どうせなら、禁止区域あるか聞けばよかった。
「もしかしてあなたは、魔素を感知できる体質ですか?」
「へ? 体質?」
男は頷く。
「あの森には、魔素は発生していないと思っておりました」
「はあ……」
禁止区域ではなかったんだ。
あれ? 探求者って、魔素感知を持ってるんじゃないの? そうじゃないと探すのたいへんじゃないか?
「……変な事聞いていいです? 魔素感知って、普通は出来ないものですか?」
俺の質問に二人は顔を見合わせる。
「こちらも聞いてよろしいでしょうか? あなたは、今まで探求者をしていた訳ではないのですか? これは偶然見つけた者ですか?」
と、マイルさんが聞いた。
あ、そっか。
魔素感知がありながら素人の様な事を聞いたから何だこいつってなっているのか。
ここはやはり定番の――
「それが記憶が曖昧で。気がついたらこの街に居て……」
「そういう事ですか。探索していて事故に遭われたのですね。たまにおられます。でも習慣で、魔石を拾ってきたと」
マイルさんが頷きながらそう言った。簡単に信じちゃったよ。
事故に遭って記憶を無くす人っているんだな。助かった。
俺は、頷いておく。
「大抵の方は、魔素が入っているかもしれないと持ち込んできます。それを我々は、鑑定して魔素値を測り、それに見合った料金をお支払いしております」
という事は、魔素感知は持ってないって事か。
しかも、鑑定もないからただ拾って来てるだけなのか!
凄い職業だな。
「稀に、魔素化した動物をお持ちになる方もおられますがね」
タートさんが、苦笑いをする。
「あ、それも持ち込みOKなんですか?」
「そうですね。食べられる動物で新鮮なら別料金もつきます。でも無理なさらないで下さいよ。今度は記憶を無くすだけでは済まないかもしれません」
「あ、はい。気を付けます」
そっか。拾うだけなら危ない目に遭う事はあまりないものな。
寝る子は育つって言うけど、寝すぎじゃないか?
取りあえず先に魔石を売りに行ってみるか。
チロを抱き上げ、街へ走って戻る。
そして、さっき訪ねた場所へ行った。
「あの~」
「うん? あなたはさっきの……」
「これ、引き取ってもらえますか?」
俺が魔石を2個見せると、こちらへと部屋に移された。
窓がなくテーブル一つにイスが四つ。小さな部屋だ。
「そこに座って少々お待ちください」
「はい」
俺は、イスに腰を下ろす。
背もたれがない木のイスだ。
テーブルには何故か、白いテーブルクロスが敷いてある。
食堂とかならわかるだ、この世界ではこれが普通なのだろうか?
「お待たせしました」
先ほどの男の人が俺の前に座り、右隣に違う男の人が座った。
「私は、探求協会の支部長のマイル。彼は、タートと申します」
なんと! 支部長自ら受付をしていたのか。
「で、持ち込んだのはどれかね?」
「あ、はい。これです」
「拝見します」
タートさんに手渡すと、魔石をジッと見て、バッと俺に振り向いた。
「魔石だ! これをどこで?」
「どこって、すぐそこの森の中でですけど」
「森ですと?」
マイルさんが驚いた顔をする。
もしかして、勝手に取っちゃいけない場所だったのか?
やばい。どうせなら、禁止区域あるか聞けばよかった。
「もしかしてあなたは、魔素を感知できる体質ですか?」
「へ? 体質?」
男は頷く。
「あの森には、魔素は発生していないと思っておりました」
「はあ……」
禁止区域ではなかったんだ。
あれ? 探求者って、魔素感知を持ってるんじゃないの? そうじゃないと探すのたいへんじゃないか?
「……変な事聞いていいです? 魔素感知って、普通は出来ないものですか?」
俺の質問に二人は顔を見合わせる。
「こちらも聞いてよろしいでしょうか? あなたは、今まで探求者をしていた訳ではないのですか? これは偶然見つけた者ですか?」
と、マイルさんが聞いた。
あ、そっか。
魔素感知がありながら素人の様な事を聞いたから何だこいつってなっているのか。
ここはやはり定番の――
「それが記憶が曖昧で。気がついたらこの街に居て……」
「そういう事ですか。探索していて事故に遭われたのですね。たまにおられます。でも習慣で、魔石を拾ってきたと」
マイルさんが頷きながらそう言った。簡単に信じちゃったよ。
事故に遭って記憶を無くす人っているんだな。助かった。
俺は、頷いておく。
「大抵の方は、魔素が入っているかもしれないと持ち込んできます。それを我々は、鑑定して魔素値を測り、それに見合った料金をお支払いしております」
という事は、魔素感知は持ってないって事か。
しかも、鑑定もないからただ拾って来てるだけなのか!
凄い職業だな。
「稀に、魔素化した動物をお持ちになる方もおられますがね」
タートさんが、苦笑いをする。
「あ、それも持ち込みOKなんですか?」
「そうですね。食べられる動物で新鮮なら別料金もつきます。でも無理なさらないで下さいよ。今度は記憶を無くすだけでは済まないかもしれません」
「あ、はい。気を付けます」
そっか。拾うだけなら危ない目に遭う事はあまりないものな。
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