34 / 36
忍び寄る悪意
第33話~形勢逆転アイテムは――
しおりを挟む
「一つ宜しいでしょうか?」
ゼノが証言をしたいとスッと手を上げた。
「いいだろう」
「ありがとうございます」
エミリアーノの承諾にお礼を言うと、ゼノはキッとアルドヘルムを睨み付ける。
「イッロ宅のマジックアイテムですが、賊に流れた形跡はありません。そして、賊はアイテムではなく人の売買をしていたようです。つまり賊は、マジックアイテムの横流しには関与しておりません」
「君の立場なら、そこら辺はどうにでもなりそうだが?」
ゼノの話に、アルドヘルムはそう返す。
確かに書き換える事は可能だ。その場合、ジェスに加担した事になる。
「それはあなたも同じなのでは? 書類上、ジェスが自分から見届け人にと名乗りを上げたとあるが?」
「え!?」
エミリアーノの言葉にジェスは驚いた。
そう言われれば、そうしなければ偶然、ジェスがイッロ宅に行った事になる。自分から名乗りを上げて行ったのであれば、計画的ともとれる。
アルドヘルムの話が成り立つのはその為だ。
「アルドヘルム総隊長、あなたがイッロ宅にレネさんを向かわせるとなった時に、リズ……アルさんを一緒にと提案したそうですね」
ゼノが言うと、アルドヘルムは、眉をピクッとさせる。
「レネは優秀だ。リズアルは、長年見習いをやっていたぐらいの者だ。一緒に組ませた方がいいと思ってな。何か問題でも?」
「あると思いますが? 普通の仕事始めではなく、イッロ宅の密偵も任務にあった。初めての者を同行させる任務ではないと思いますが」
「そこは私も読みが甘かった。まさか賊が絡んでるとは思わなかったのでな」
アルドヘルムは、そう言って「すまなかった」っと頭を下げた。
先ほどからぬらりくらりと、上手く交わしている。
――だめだ! 決定打がない!
攻める材料はあるが、どれも上手く交わされている。
このままだと、ジェスが企てた事で話がまとまりそうだ。
そうなれば、アルドヘルムの疑いは晴れ、今まで通り悪事を働くかもしれない!
そもそも賊に襲わせたのは、リズが魔女だからだ。
アルドヘルムが、魔女であるリズが邪魔だから事を起こした事を証明しなくてはならない。それは凄く難しかった。
彼が魔女だと知ったからといって、襲うとは限らないからだ。知っているだけでは動機にならない。
――何かないか? 彼だけにしか出来ない事とか……。
上手く裏工作もされていて、ジェスにはどうしようもない。
レネに毒を負わせた事だって言った所で、ランベールはあの時引いたのだ。つまり、捉えようでは、仲間を最初から殺すつもりはなかったとも捉えられる。
ランベールがいなくなったのは、ゼノ達も証言出来るのだから。
――そうだ、あの時……。
「あの! 僕からもいいでしょうか?」
ゼノがしたように、ジェスは手を上げた。
それをジッとアルドヘルムが見つめている。何を言う気だと探っている感じだ。
「いいだろう」
「ありがとうございます」
エミリアーノの許可を得て、ジェスはチャンスを得た!
「アルドヘルム総隊長にお聞きします。返してくれたムチですが、どなたが届けてくれたのですか?」
今までの流れの話とは全然違う事なので、周りの者はキョトンとしている。
だがアルドヘルムとゼノは、ジェスの言いたい事がわかったようだ。
「忘れたな」
「思い出して頂きたい。そのムチは、洞窟の岩の下敷きになったはずのムチなのです。彼らが洞窟から出て来てから岩を撤去するまで、特殊警ら隊があの場にいました。ムチが見つかったとしたならば、警ら隊の者しかいないはずなのですが?」
ゼノにそう言われるが、今までの様にすぐに返事が返ってこない。
今までは、答えを用意していのに違いない。
だがムチの事を聞かれるとは思っていなかったので、答えを用意していなかった!
「では、僕がムチを使っていると言う事は誰からお聞きしましたか?」
ジェスがまた、答えを用意していない質問をした。
「噂を耳にしたまでだ……」
「噂ですか? どのような?」
「君が、白いムチを振り回しているという噂だ!」
「本当に白いムチをと聞いたのですか?」
「あぁ……」
アルドヘルムは、しつこいと言う顔つきで、ジェスに答えた。
「それはおかしいです。僕は確かにムチを持ち歩いています。ですが、使った事など殆どありません。仲間の者達もついこないだ知ったぐらいです。噂になりようがないのですが?」
「使った事があるのだろう? だったら君が知らないだけで、流れていたのだろう」
「ちょっとお待ちください。何故ムチがあなたの所に届けられたのですか?」
「知るか!」
ゼノの質問に、イラッと来たのかアルドヘルムの態度が粗暴になった。
「それ、アルドヘルム総隊長が拾ったからですよね? 返したのは、そのムチがマジックアイテムだと、ランベールさんに聞いたからではないですか? マジックアイテムを持っていて、更に疑われたら困ると。違いますか?」
アルドヘルムは、ギロッとジェスを睨んだ!
「違う! どうやって拾ったというんだ!」
「勿論見ていたんです。そこにランベールさんが投げたムチが足元に飛んできた。だからつい拾った。魔法陣の効果をその目で見たかったのではないですか! あなたが立てた作戦です! あの魔法陣だってあなたが用意した!」
話ながらジェスは、そうだ! そうすればつじつまが合う! と納得しながら語っていた。
あの丘で、アルドヘルムは、作戦を立てたのは自分だと語っていた。だったらあの魔法陣を考え出したのも彼かも知れない。
あの場所へ来る事に最初からなっていたのだから、アルドヘルムはジェス達が来るのを待っていればいい。そして、見届けて戻ればいいだけだ。
「たかがムチだけで! 偽物を置いて行ったんだろう! あの場所では拾ってなかったんじゃないのか!」
すっごい言い訳をアルドヘルムは言った。
「それはないですね。確かに彼が今持っているムチは、私が差し上げた物です。あなたもどうしてあの場所に私が現れたか不思議に思っていたでしょう? このムチは、使うと私にわかるようになっているのです」
アルドヘルムは、ゼノの説明に驚いた顔を見せた。
「なるほどな。そういう事か。余計な事を」
アルドヘルムは、ジェスが何故、ゼノが来ると思っていたかやっとわかったのだ。
SOSがあったと偶然聞いて、探し出したとアルドヘルムは思っていた。
「あと、付け加えるなら、そのムチは落としたその日に頂いた物です。知っているのは、一緒にイッロ宅に行った仲間だけです。もしアルドヘルム総隊長が言う様に、ムチを用意したとしても白いムチにならないですよ!」
「っち」
観念したのか、アルドヘルムは舌打ちした!
形勢逆転だ!
ゼノが証言をしたいとスッと手を上げた。
「いいだろう」
「ありがとうございます」
エミリアーノの承諾にお礼を言うと、ゼノはキッとアルドヘルムを睨み付ける。
「イッロ宅のマジックアイテムですが、賊に流れた形跡はありません。そして、賊はアイテムではなく人の売買をしていたようです。つまり賊は、マジックアイテムの横流しには関与しておりません」
「君の立場なら、そこら辺はどうにでもなりそうだが?」
ゼノの話に、アルドヘルムはそう返す。
確かに書き換える事は可能だ。その場合、ジェスに加担した事になる。
「それはあなたも同じなのでは? 書類上、ジェスが自分から見届け人にと名乗りを上げたとあるが?」
「え!?」
エミリアーノの言葉にジェスは驚いた。
そう言われれば、そうしなければ偶然、ジェスがイッロ宅に行った事になる。自分から名乗りを上げて行ったのであれば、計画的ともとれる。
アルドヘルムの話が成り立つのはその為だ。
「アルドヘルム総隊長、あなたがイッロ宅にレネさんを向かわせるとなった時に、リズ……アルさんを一緒にと提案したそうですね」
ゼノが言うと、アルドヘルムは、眉をピクッとさせる。
「レネは優秀だ。リズアルは、長年見習いをやっていたぐらいの者だ。一緒に組ませた方がいいと思ってな。何か問題でも?」
「あると思いますが? 普通の仕事始めではなく、イッロ宅の密偵も任務にあった。初めての者を同行させる任務ではないと思いますが」
「そこは私も読みが甘かった。まさか賊が絡んでるとは思わなかったのでな」
アルドヘルムは、そう言って「すまなかった」っと頭を下げた。
先ほどからぬらりくらりと、上手く交わしている。
――だめだ! 決定打がない!
攻める材料はあるが、どれも上手く交わされている。
このままだと、ジェスが企てた事で話がまとまりそうだ。
そうなれば、アルドヘルムの疑いは晴れ、今まで通り悪事を働くかもしれない!
そもそも賊に襲わせたのは、リズが魔女だからだ。
アルドヘルムが、魔女であるリズが邪魔だから事を起こした事を証明しなくてはならない。それは凄く難しかった。
彼が魔女だと知ったからといって、襲うとは限らないからだ。知っているだけでは動機にならない。
――何かないか? 彼だけにしか出来ない事とか……。
上手く裏工作もされていて、ジェスにはどうしようもない。
レネに毒を負わせた事だって言った所で、ランベールはあの時引いたのだ。つまり、捉えようでは、仲間を最初から殺すつもりはなかったとも捉えられる。
ランベールがいなくなったのは、ゼノ達も証言出来るのだから。
――そうだ、あの時……。
「あの! 僕からもいいでしょうか?」
ゼノがしたように、ジェスは手を上げた。
それをジッとアルドヘルムが見つめている。何を言う気だと探っている感じだ。
「いいだろう」
「ありがとうございます」
エミリアーノの許可を得て、ジェスはチャンスを得た!
「アルドヘルム総隊長にお聞きします。返してくれたムチですが、どなたが届けてくれたのですか?」
今までの流れの話とは全然違う事なので、周りの者はキョトンとしている。
だがアルドヘルムとゼノは、ジェスの言いたい事がわかったようだ。
「忘れたな」
「思い出して頂きたい。そのムチは、洞窟の岩の下敷きになったはずのムチなのです。彼らが洞窟から出て来てから岩を撤去するまで、特殊警ら隊があの場にいました。ムチが見つかったとしたならば、警ら隊の者しかいないはずなのですが?」
ゼノにそう言われるが、今までの様にすぐに返事が返ってこない。
今までは、答えを用意していのに違いない。
だがムチの事を聞かれるとは思っていなかったので、答えを用意していなかった!
「では、僕がムチを使っていると言う事は誰からお聞きしましたか?」
ジェスがまた、答えを用意していない質問をした。
「噂を耳にしたまでだ……」
「噂ですか? どのような?」
「君が、白いムチを振り回しているという噂だ!」
「本当に白いムチをと聞いたのですか?」
「あぁ……」
アルドヘルムは、しつこいと言う顔つきで、ジェスに答えた。
「それはおかしいです。僕は確かにムチを持ち歩いています。ですが、使った事など殆どありません。仲間の者達もついこないだ知ったぐらいです。噂になりようがないのですが?」
「使った事があるのだろう? だったら君が知らないだけで、流れていたのだろう」
「ちょっとお待ちください。何故ムチがあなたの所に届けられたのですか?」
「知るか!」
ゼノの質問に、イラッと来たのかアルドヘルムの態度が粗暴になった。
「それ、アルドヘルム総隊長が拾ったからですよね? 返したのは、そのムチがマジックアイテムだと、ランベールさんに聞いたからではないですか? マジックアイテムを持っていて、更に疑われたら困ると。違いますか?」
アルドヘルムは、ギロッとジェスを睨んだ!
「違う! どうやって拾ったというんだ!」
「勿論見ていたんです。そこにランベールさんが投げたムチが足元に飛んできた。だからつい拾った。魔法陣の効果をその目で見たかったのではないですか! あなたが立てた作戦です! あの魔法陣だってあなたが用意した!」
話ながらジェスは、そうだ! そうすればつじつまが合う! と納得しながら語っていた。
あの丘で、アルドヘルムは、作戦を立てたのは自分だと語っていた。だったらあの魔法陣を考え出したのも彼かも知れない。
あの場所へ来る事に最初からなっていたのだから、アルドヘルムはジェス達が来るのを待っていればいい。そして、見届けて戻ればいいだけだ。
「たかがムチだけで! 偽物を置いて行ったんだろう! あの場所では拾ってなかったんじゃないのか!」
すっごい言い訳をアルドヘルムは言った。
「それはないですね。確かに彼が今持っているムチは、私が差し上げた物です。あなたもどうしてあの場所に私が現れたか不思議に思っていたでしょう? このムチは、使うと私にわかるようになっているのです」
アルドヘルムは、ゼノの説明に驚いた顔を見せた。
「なるほどな。そういう事か。余計な事を」
アルドヘルムは、ジェスが何故、ゼノが来ると思っていたかやっとわかったのだ。
SOSがあったと偶然聞いて、探し出したとアルドヘルムは思っていた。
「あと、付け加えるなら、そのムチは落としたその日に頂いた物です。知っているのは、一緒にイッロ宅に行った仲間だけです。もしアルドヘルム総隊長が言う様に、ムチを用意したとしても白いムチにならないですよ!」
「っち」
観念したのか、アルドヘルムは舌打ちした!
形勢逆転だ!
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。
梅雨の人
恋愛
私にはイザックという愛しの婚約者様がいる。
ある日イザックは、隣国の王女が私たちの学園へ通う間のお世話係を任されることになった。
え?イザックの婚約者って私でした。よね…?
二人の仲睦まじい様子を見聞きするたびに、私の心は折れてしまいました。
ええ、バッキバキに。
もういいですよね。あとは好きにさせていただきます。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
言葉にしなくても愛情は伝わる
ハチ助
恋愛
二週間前に婚約者のウィルフレッドより「王女殿下の誕生パーティーでのエスコートは出来なくなった」と謝罪と共に同伴の断りを受けた子爵令嬢のセシリアは、妊娠中の義姉に代わって兄サミュエルと共にその夜会に参加していた。すると自分よりも年下らしき令嬢をエスコートする婚約者のウィルフレッドの姿を見つける。だが何故かエスコートをされている令嬢フランチェスカの方が先に気付き、セシリアに声を掛けてきた。王女と同じく本日デビュタントである彼女は、従兄でもあるウィルフレッドにエスコートを頼んだそうだ。だがその際、かなりウィルフレッドから褒めちぎるような言葉を貰ったらしい。その事から、自分はウィルフレッドより好意を抱かれていると、やんわりと主張して来たフランチェスカの対応にセシリアが困り始めていると……。
※全6話(一話6000文字以内)の短いお話です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる