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第九話

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 嵐です。強い風と大粒雨。ジムナージュ国では、川の氾濫を防ぐ対策をばっちり行っておりました。それでも心配ですが、嵐が過ぎるまでどうする事もできません。今のところ、悪い知らせはないようです。

 「心配いらないよ、リンリー。僕達の披露宴に当たらなくてよかった」

 「そうですね」

 そっと後ろからソルムナード様が、大丈夫と抱きしめて下さいました。


 雨が上がり各領土に行ってみると不思議な事が起きていました。
 どんなに対策しても水が抜けるのに時間がかかりますが、まるで普通の雨に降られたかのように引いています。どこも同じような感じで、被害はほぼゼロ。これが、聖女の力なのでしょう。

 「驚いた。一体何が……」

 ソルムナード様が、凄く驚いています。
 その後の各国の報告も届いた様で、ジムナージュ国が一番被害が少なかったのです。一番多かったのが驚く事に、隣国のアンドルダール国だった。
 今まで聖女をあてにして、対策を行ってこなかったからでしょう。もう聖女がいないので、対策を進めていたようですが莫大な費用がかかり思った通り進まなかったようです。そもそもすぐに準備が整うわけもない。



 パンパーン。
 結婚披露宴を祝う花火が打ち上げられた。
 各国の首席達が集い、宴が行われる。
 各街でも祝いのお祭りが開催されていて、国が喜びに溢れていた。
 私も嬉しさでいっぱいです。

 そんな中、驚く声が響き渡りました。

 「聖女を返せ!」

 もちろんそんな事を言うのは、アンドルダール国。お招きしたのは、国王でしたが、嵐の影響が尾を引いている様で、代わりにヘルラード様がお越しです。

 「聖女とは、リンリーの事をでしょうか? それに、返せとは一体どういう事でしょう? 意味がわかりません。」

 ソルムナード様がいう。

 「意味がわからないだと! 私の国とこの国と見ればわかるだろう! 聖女の力で守ってもらったから被害がなかった! 違うか!」

 「何を言っている。今回は確かに被害がいつもより少ないが、対策をした結果だ。それに、聖女はあなたと婚約したリンリーの妹のリンナール嬢であろう。そもそも私とリンリーの仲立ちもして下さり、お祝いに領土まで下さった。これのどこが奪った事になるのか」

 「リンナールは、聖女ではない! リンリーが聖女だ! そして、リンナールとは婚約を解消する予定だ!」

 なんですって!?

 「どうしてそうなるのです!」

 「そうしないと、国民が納得しないからだ。君を迎えに来た」

 この人は何を言っているのでしょうか?
 全部自分で招いた事ではないですか……。

 「国民がお怒りになるのは仕方がない事ではないでしょうか。あなたはこうなる事がわかってリンナールと結婚なさったではありませんか! リンナールが好きだと言ったのは嘘なのですか? 信じられません!」

 私は怒鳴っておりました。許せなかったのです。
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