【完結】 ご存知なかったのですね。聖女は愛されて力を発揮するのです

すみ 小桜(sumitan)

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第五話

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 愛を受けれますわと思いましたが、まさか直ぐに二人っきりにさせられるとは思いませんでしたわ。

 広い部屋に置かれた立派なソファに二人並んで座っている。

 次の日、ソルムナード様にお呼ばれして、彼が泊まる国賓用の部屋へ訪ねると、ソルムナード様は人払いをなさったのです。

 何もなさらないとは思いますが、まだそこまでの覚悟はないのですが……。

 「怯えさせてしまいましたか」

 「いえ……」

 「婚約を受け入れてくれたとはいえ、私の事はそんなにご存知ないでしょう。その前に、今更ですが本当に宜しいのですね?」

 「え?」

 「いえ、その……国王から言われれば断れないだろうとは思っていたのですが、本当は好きな方がいらっしゃったとか。ありませんか?」

 「今更ですわ。大丈夫です。おりません」

 ホッと安堵した様子を見せるソルムナード様。
 私を気遣ってくれるのがよくわかりますわ。

 「少しずつで宜しいです。私の事を知ってほしい。あなたの事も知りたい」

 ジッと瞳を見つめてそう言って下さいました。
 涙が出そうなぐらい嬉しさが込み上げて来ます。
 聖女としてではなく、女性として扱われている。しかも愛されている。

 ちゅ。
 ソルムナード様は、私の右手をとり、甲にキスを落とす。

 「これぐらいは、許して頂けますか?」

 不意打ちですわ。
 でも嫌ではありませんでした。

 「はい……」

 そう返すのが精一杯です。

 「だ、大丈夫ですか?」

 「え……」

 いつの間にか、涙が頬をつたっていた。

 「こ、これは違うのです。安堵したというか……。大切にされているとわかったものですから」

 って、私何を言っているのかしら。
 もう顔が火照って、汗も出て来そうですわ。

 「あなたは、大切にされておりますよ。この国の一部を譲渡して下さったのですから」

 うん? 譲渡?

 「それってどういう事ですの?」

 「やはり知りませんでしたか。アンドルダール国と我が国ジムナージュの境にある領土を一つ丸ごと、友好の印として頂いたのです。あなたは一般人で持って行く物が無い。なので、陛下がご用意して下さった。土地しか提供できなくてすまないと言われたが、ほとんどが農地なので大助かりです」

 まさか、そこって!
 不作が続いているところなのでは?
 ちゃんとした場所まで把握しておりませんが、ワグナー領土が一番不作だと……。

 「あの何という領土でしょう? そこにご挨拶に伺いたいわ」

 「そうですね。一緒に行きましょう。ワグナー領です。行った事はありますか?」

 「い、いいえ……」

 なんて事なの!
 私ごと、ジムナージュ国に渡すなんて!
 知れれば大変な事になると思わなかったのでしょうか……。
 対策がこれだなんて、信じられません。
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