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第六章 ヒカルの正体

第三九話

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 俺がINすると辺りは、いつもより少し賑やかになっていた。名前を表示してるプレーヤーがちらほら。テスターをしてないプレイヤーがINし始めたようだ。
 さて、今日は何しようかな。修行かそれとも、双子の丘の向こう側に行ってみるとか……。
 食堂で食事を終え、そんな事を考えながら噴水の広場に向かっていた。

 ポン。
 from ヒカル
 《今、いいですか?》

 おっと、ヒカルからだ。またクエストか? まあ、やる事決まってないしいいか。

 《大丈夫だ。クエストか?》
 ポン。

 俺は返信を返した。

 ポン。
 from ヒカル
 《いえ、お話です。今どこですか?》

 話ってなんだ? 相談事? 俺にゲームの事相談されてもなぁ。まあ、聞くだけ聞くか。

 《噴水のとこ》
 ポン。

 俺は軽い気持ちで返答したが、暫くして来たヒカルの表情は浮かない顔だ。
 結構深刻みたいだな。一体何があったんだ?

 「どうした? 何かあったのか?」

 俺がそう声を掛けると、ヒカルが珍しく泣きそうな顔で作り笑顔をして頷いた。

 「お別れを言いに……。キソナには、お世話になったから……」

 「ちょっと待て! それって引退するって事じゃないだろうな」

 「うん。辞める」

 俺は耳を疑った。賢者になると言って少し無理をして、クエストを受けたりしていたのに一体何があったんだ? そこまでやる気をなくす事って!

 「理由は? 始まってまだ三日目だぞ?」

 驚いて言うと、ヒカルは俯く。

 「同じ人に二度、PvPを受けた。それもよくわかんない理由で。それで、噂流すって言われて……。なんか、やる気なくしたというより、怖くなって……」

 「噂? 待て待て。俺にわかるように話せって! 力になるから!」

 顔を上げたヒカルの目は潤んでいた。相当まいっているみたいだな。
 まあ、テスターの仕返しをされたんだとは思うけど。自業自得だと思うが、まずは聞こう。数日だが一緒に居て、テスターの時とは明らかに違う様に感じた。もしかしたら心を入れ替えていたのかもしれない。
 それに万が一にも人違いって事もあるかもしれない……。同じ名前は作成出来ない。だからこれはあり得ないとは思うけど……。

 俺はヒカルを噴水の縁に座らせると、自分も隣に座った。

 「で、攻撃された理由は何だって言っていたんだ?」

 ヒカルは、ぼぞぼそと経緯を話し始める。

 「一緒にパーティー組んでオオカミンを狩っていて、私一〇レベルになったの。そうしたら急にパーティー解除して、前世の恨みとか言われて突然襲われた……。レベル下がるし意味わかんないし。で、連絡入れたら説明するから近くの森に来いって言われて行ったら、今度は忘れたのかよってまた攻撃受けて死んだ……」

 まあ一回目は不意打ちだったとして、そんな目にあって、何故街で話さないかな……。うん? 待てよ。連絡を入れてって……。

 「そいつ、メル友だったのか?」

 俺の質問に小さく頷いた。
 だったらやっぱりテスターの時にヒカルに嵌められた奴だな。メル友になってチャンスを伺っていたってところだろうな。でもなぁ、テスターだし、二度も殺す事ないだろうに。そう言えば、噂流すって言われてるんだっけ? よほど恨んでるんだな。

 「噂って、どんな内容なんだ?」

 「よくわかんないけど、卑怯者だって……」

 ボソッとヒカルは、呟いて答えた。
 これで確実だな。テスターの復讐だ。間違いない。
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