上 下
26 / 32

振り出しでスタート 1

しおりを挟む
 「私がそう呼んで欲しいと頼んだのだ。彼はそれに従っただけだ」
 「そうですか。結局命令しておいでですね」
 「別に命令ではなく、お願いだ」
 「そうですか」
 「で、さっきの質問の答えは?」

 さっきって、僕を殺そうとしたかもしれないという事?

 「えぇ。彼はダンジョンハンターになりたくなかったように見えました。その彼が、あなたに認めて欲しくて死ぬほど頑張ったんですよ。俺も驚きましたよ。まさか少ないながらも倍になったんですからね」

 やっぱりわかっていたんだ。きっと先生も気がついていたよね。

 「よほどあなたの家来になりたかったようです。けどご覧の通り、自分がどういう状態なのかさえ把握できていない愚か者です」
 「な……。まさか本当にワザと僕を瀕死の状態にしようとしたの?」
 「前日にお前のステータスを見ただろ? あれだけ減っていれば、傷薬を普通は使うんだよ。それすら知らなかったんだろう? そんなお前が、殿下の側近? 笑わせるな! 誰が納得すると言うんだ!」
 「………」

 そうかもしれない。別に側近とかそんな凄い立場でいるつもりはなかったけど、ガーナラルドの側にいるならそういう役割を担うって事だよね。僕では役不足。
 ずっとダンジョンハンターという責務から逃げる事ばかり考えていた。自分の事ばっかり。

 「……側近とかそういうつもりはなかった。役にたたなくてもいいと言われて鵜呑みにして、現状から逃げてばかりだった。迷惑を掛けてごめんなさい。僕は……」
 「元々、側近になれなど言ってないだろう? 私が欲しいのは仲間だったんだ。腕っぷしの強さを求めたのではなく、精神的なモノを鍛え直せと言ったんだ。まあそこまで腕を上げたのだからそれなりに鍛え直したようだな」
 「え……」
 「殿下自ら、クラドのお守りをすると?」
 「お守り!?」

 それってなんぼ何でも酷くない?

 「それと仲間とは対等と言う事でしょうか? その割には、我々とは違う出で立ちですよね? その剣、クラドと交換してやったらいかがですか? 少しはマシになるでしょう」
 「きさま、先ほどから聞いていれば殿下に何て言い草だ!」

 デモンガリーの目の前に剣が振り下ろされた。

 あわわわ。どうしよう。大事になってきた!
 って、なんでこんなところで、言い合いを始めちゃったかな。

 「みなさんが思っている事を伝えているだけじゃないですか。殿下に捨てられそうになったら必死になって……」
 「な! そんなんじゃないから!」
 「もういいやめろ! 君が気にいらないのは、彼だけでなく私もなのだろう?」

 そう言ったガーナラルドはなぜか、カウンターに向かって行く。

 「これを彼らと同じ支給される剣と交換してほしい」
 「え!? そ、それは……」

 カウンターのお姉さんが困り顔だ。
 たぶんあの剣は、王族専用の剣だろう。それと僕達が持っている剣と交換すれと言われても困るよね。

 「交換できないのなら素手で戦うしかないか」
 「こ、交換致します!」

 ガーナラルド、それは脅しだ。貸さないわけにはいかないだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

ハズれギフトの追放冒険者、ワケありハーレムと荷物を運んで国を取る! #ハズワケ!

寝る犬
ファンタジー
【第3回HJ小説大賞後期「ノベルアップ+」部門 最終選考作品】 「ハズワケ!」あらすじ。 ギフト名【運び屋】。 ハズレギフトの烙印を押された主人公は、最高位のパーティをクビになった。 その上悪い噂を流されて、ギルド全員から村八分にされてしまう。 しかし彼のギフトには、使い方次第で無限の可能性があった。 けが人を運んだり、モンスターをリュックに詰めたり、一夜で城を建てたりとやりたい放題。 仲間になったロリっ子、ねこみみ何でもありの可愛い女の子たちと一緒に、ギフトを活かして、デリバリーからモンスター討伐、はては他国との戦争、世界を救う冒険まで、様々な荷物を運ぶ旅が今始まる。 ※ハーレムの女の子が合流するまで、マジメで自己肯定感の低い主人公の一人称はちょい暗めです。 ※明るい女の子たちが重い空気を吹き飛ばしてゆく様をお楽しみください(笑) ※タイトルの画像は「東雲いづる」先生に描いていただきました。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

【ヒーロー追放】防衛隊から追放された俺、「ざまぁ」そっちのけで世界を守っていたら、後釜の防衛隊員に復讐を誓われていた

白慨 揶揄
ファンタジー
世界にダンジョンが現れ、魔物が侵略する世界。 人々は対抗するためにダンジョン防衛隊を設立した。 瀬名 力はダンジョン防衛隊に努めていたが、ある日、所属していた班から「必要ない」と追放されてしまう。 追放された理由は単純明白で、敵に背を見せ逃げるからという真っ当なものだった。 瀬名 力が背中を見せて逃げるワケ。 それは相棒異世界人の力を使っており、正体を隠すために戦闘になると隠れて変身をしていたのだった。 相棒の異世界人――ガイが持つ能力 【無機質の記憶】 それは、命を持たぬ無機物の記憶を呼び出し、自分に付与する能力だった。 異世界より運ばれた【勇者の鎧】 【魔物】を討伐することで得られる素材。 二つの力を組み合わせて戦う瀬名とガイは追放されても戦うことを辞めなかった。 「世界、守らせて貰います!」 ……だが、瀬名は知らなかった。 自身の後釜として赴任された隊員が同じ目にあっているということを。 追放が成功したことで、より、加速する上司たち。 家族までもが被害に遭ったことで、上司を殺した隊員は次の復讐相手を瀬名に決めるのだった

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...