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振り出しでスタート 1

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 「私がそう呼んで欲しいと頼んだのだ。彼はそれに従っただけだ」
 「そうですか。結局命令しておいでですね」
 「別に命令ではなく、お願いだ」
 「そうですか」
 「で、さっきの質問の答えは?」

 さっきって、僕を殺そうとしたかもしれないという事?

 「えぇ。彼はダンジョンハンターになりたくなかったように見えました。その彼が、あなたに認めて欲しくて死ぬほど頑張ったんですよ。俺も驚きましたよ。まさか少ないながらも倍になったんですからね」

 やっぱりわかっていたんだ。きっと先生も気がついていたよね。

 「よほどあなたの家来になりたかったようです。けどご覧の通り、自分がどういう状態なのかさえ把握できていない愚か者です」
 「な……。まさか本当にワザと僕を瀕死の状態にしようとしたの?」
 「前日にお前のステータスを見ただろ? あれだけ減っていれば、傷薬を普通は使うんだよ。それすら知らなかったんだろう? そんなお前が、殿下の側近? 笑わせるな! 誰が納得すると言うんだ!」
 「………」

 そうかもしれない。別に側近とかそんな凄い立場でいるつもりはなかったけど、ガーナラルドの側にいるならそういう役割を担うって事だよね。僕では役不足。
 ずっとダンジョンハンターという責務から逃げる事ばかり考えていた。自分の事ばっかり。

 「……側近とかそういうつもりはなかった。役にたたなくてもいいと言われて鵜呑みにして、現状から逃げてばかりだった。迷惑を掛けてごめんなさい。僕は……」
 「元々、側近になれなど言ってないだろう? 私が欲しいのは仲間だったんだ。腕っぷしの強さを求めたのではなく、精神的なモノを鍛え直せと言ったんだ。まあそこまで腕を上げたのだからそれなりに鍛え直したようだな」
 「え……」
 「殿下自ら、クラドのお守りをすると?」
 「お守り!?」

 それってなんぼ何でも酷くない?

 「それと仲間とは対等と言う事でしょうか? その割には、我々とは違う出で立ちですよね? その剣、クラドと交換してやったらいかがですか? 少しはマシになるでしょう」
 「きさま、先ほどから聞いていれば殿下に何て言い草だ!」

 デモンガリーの目の前に剣が振り下ろされた。

 あわわわ。どうしよう。大事になってきた!
 って、なんでこんなところで、言い合いを始めちゃったかな。

 「みなさんが思っている事を伝えているだけじゃないですか。殿下に捨てられそうになったら必死になって……」
 「な! そんなんじゃないから!」
 「もういいやめろ! 君が気にいらないのは、彼だけでなく私もなのだろう?」

 そう言ったガーナラルドはなぜか、カウンターに向かって行く。

 「これを彼らと同じ支給される剣と交換してほしい」
 「え!? そ、それは……」

 カウンターのお姉さんが困り顔だ。
 たぶんあの剣は、王族専用の剣だろう。それと僕達が持っている剣と交換すれと言われても困るよね。

 「交換できないのなら素手で戦うしかないか」
 「こ、交換致します!」

 ガーナラルド、それは脅しだ。貸さないわけにはいかないだろう。
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