英雄になんてなりたくないから!

すみ 小桜(sumitan)

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僕に足りないモノ 1

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 コボルトダンジョンへ向かう馬車には、スライムダンジョンと違ってそれなりのダンジョンハンターが乗っていた。コボルトダンジョンの方が、スライムダンジョンより近かった様で、一時間程で着く。

 よかったよ。一時間で。なぜかと言うとガーナラルドも一緒だったから注目されたんだ。別々に行こうと言ったのに、迎えに来るんだもん。この王子の行動がたまにわからないよ。なぜそこまでするのか……。

 ぞろぞろと馬車からハンター達が降りる。もちろん僕達も。

 「思ったより人が多かったな」
 「うん。驚いた」

 馬車は、二時間に一本だ。朝一での馬車で来たというのに。
 早起きは平気だ。なにせいつも早起きして、畑仕事をしてから学校へ行っていたからね。

 それにしてもほとんどの人が、僕と同じ装備だった。つまり初期装備。年齢から言えば、20代の人もいたんだけど。宝箱って手に入れづらい物なのかな?
 剣ぐらいだよ。バラバラなのは。

 「まずは、ダンジョン内の地図をもらうぞ。後、入る時には手続きして入るからな。出た時もだ」
 「へえ」
 「手続きは忘れるなよ。忘れると入った事にならないからな。つまり魔石だけ持って帰ってもダメだと言う事だ。僕達の行動は、このシステムで監視されている」
 「え? 監視?」
 「あぁ」

 監視って。王族のガーナラルドが言うセリフ?
 月の半分をダンジョンで過ごした証拠は、手続きしないと残らないって事かな?

 「初めてなんだ。地図がほしい」
 「はい。かしこまりました」
 「………」

 チラッとガーナラルドを見ると、少しムッとしている。
 地図を貰うとガーナラルドは、少し離れた場所に移動した。
 一応僕も地図貰っておくかな。

 「僕も地図下さい」
 「はい。どうぞ」

 ガーナラルドがやっていたように、装置の下に手を入れると指輪のガラスが白くなった。よくわからないけど、これで手続き終了。地図を貰ってガーナラルドが居る場所へ向かう。

 「まずは入ってすぐに、コボルトを倒してみよう」
 「はい……」

 なんか凄く見られている。
 ガーナラルドが、第三王子だと知れ渡っているって事だろうな。そしてたぶん、僕とギルドを組んだ事も。正確には、居住地が決まってないから申請中になるけどね。

 「周りが気になるか?」
 「え? まあね。こんなに注目された事ないから、あまりいい気分ではないよ」
 「いい気分ではないか」

 ふふっと笑いながらそう復唱された。
 何かおかしな事言っただろうか?

 ダンジョンに入り、剣を手に持って進む。ハンター達は見えないけど、声や音は響いて来る。スライムダンジョンとは全然雰囲気が違った。
 そして僕は、コボルトを見て驚いた。

 「犬型のモンスターだけど、これって……」

 教科書には図などは載っていないかったわからなかったけど、目の前のコボルトは二本足で立っている。しかもぼろぼろだけど、ナイフを手にしていた。
 モンスターってすげぇ。

 「気を抜くなよ」
 「あ、うん」

 ガーナラルドは、目の前のコボルトを斬りつける。攻撃を受ける前にあっさりと倒してしまった。彼が強いのか、コボルトが弱いのか。
 よし! 僕も!

 剣を振り上げ、コボルトに斬りかかった。
 カキン!
 僕の攻撃は、コボルトのナイフで防がれた! しかも振り払われ、剣は僕の手から飛ばされて吹っ飛んで行った!

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