上 下
27 / 50

第二十七話

しおりを挟む
 「どうなってるのよ! こうなったら! ユリーナ! 断りなさい!」
 「………」
 「何をしているの? 返事を返すのよ!」

 ルミージュ嬢が私を睨んでいる。
 おかしいわ。たぶん、今のは命令なのよね? きっと魔法をかけたのよのね? でも気持ちは変わらない。考えも変わらない。
 私は、魔法に掛かっていないわ!

 「マイステリー様。ありがとうございます。ミャも一緒にいいですか?」
 「あぁ。もちろんだ!」
 「何を言っているのよ! なぜ? どうして! 魔法が効かないのよ!」
 「魔法? あの婚約者だという、暗示の魔法の事か?」
 「え……」

 ルミージュ嬢は、自分が魔法を使っていたと言ってしまった事に気づいた様で、一瞬躊躇するも私達を睨む。

 「そうよ! あなたは私の婚約者! 彼女に惑わされてはだめよ! この女は、私を池に突き落とし私のお腹を蹴ったのよ! 動けない私をあなたは背負ってくれたのよ! リボンだって自分で切り刻んで、新しいの用意してきていたじゃない!」
 「え!」

 新しいの用意してきたのは、そっちでしょう!

 「婚約者を貶めるのはやめてほしいな」

 マイステリー様が、そう呟いた。そして、ルミージュ嬢を睨み付けた。

 「池に落とした? 僕が見た時は、ユリーナが君を助け出そうとしている所だったけど? それなのに君はユリーナを池へ引きづり込んだ!」

 見ていたの!? って、ルミージュ嬢も驚いている。見られていたのを知らなかったのだわ。

 「君を背負って帰った記憶なんてないし、リボンは魔法で刻まれていた。魔法を使えない彼女がどうやって刻むって?」
 「な、な、なんなのよ! どうして突然効かなくなったの!」

 その台詞に、マイステリー様は溜息をついた。

 「最初から掛かってなんていないよ。僕が君の婚約者だと名乗った事があるかい?」
 「え……。じゃなぜ、違うと否定しないのよ!」
 「君が何を企んでいるか知りたかったからかな? やっとわかったよ。僕だけが狙いではなかった。僕の家だよね? 姉さんまで陥れていたなんて、許せない!」
 「まさか、何の事かしら?」
 「とぼけるな! ユリーナがカーリア姉さんから僕が君の婚約者だと聞いたと言っている! 君が学園だけでそう言いふらしていたのならあり得ない! 君より能力が高いカーリア姉さんに、君が魔法をかける事も不可能だ!」
 「そうね。不可能ね! だったらカーリア様は私が婚約者にふさわしいと思ったのではありません?」
 「そんなわけあるか! 突然、継がないといいだした。そして姉さんは、ユリーナに接触して、君から僕を奪えと言ったんだ!」

 ちょっと! 私、そんな話し方してませんよね? 確かにその様な感じでは言われましたけど、そうハッキリとは……。
 でも、頷いてしまいました。少なくともカーリア様は、私を認めて下さっておりましたからね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

【完結】ご安心を、問題ありません。

るるらら
恋愛
婚約破棄されてしまった。 はい、何も問題ありません。 ------------ 公爵家の娘さんと王子様の話。 オマケ以降は旦那さんとの話。

「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!

友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください。 そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。 政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。 しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。 それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。 よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。 泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。 もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。 全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。 そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。 無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。 彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。 ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。 居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。 こんな旦那様、いりません! 誰か、私の旦那様を貰って下さい……。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

婚約破棄されたおっとり令嬢は「実験成功」とほくそ笑む

柴野
恋愛
 おっとりしている――つまり気の利かない頭の鈍い奴と有名な令嬢イダイア。  周囲からどれだけ罵られようとも笑顔でいる様を皆が怖がり、誰も寄り付かなくなっていたところ、彼女は婚約者であった王太子に「真実の愛を見つけたから気味の悪いお前のような女はもういらん!」と言われて婚約破棄されてしまう。  しかしそれを受けた彼女は悲しむでも困惑するでもなく、一人ほくそ笑んだ。 「実験成功、ですわねぇ」  イダイアは静かに呟き、そして哀れなる王太子に真実を教え始めるのだった。 ※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。

処理中です...