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第十五話

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 はぁ……。昨日は、興奮して眠れなかったわ。
 奪っていいと言われても……難しいわよね。好きになってもらわなくてはいけない。カーリア様が言っていた通り、マイステリー様が私に好意を抱いていればいいけど。
 できれば、ルミージュ嬢も傷つけたくない。と都合がいい事ばかりを考えている。
 まあ、マイステリー様を見つめているだけで精一杯なんですけれど……。

 よく考えれば、お姉様に近づくなって言われていると言っていたわね。マイステリー様に近づけば、またお姉様に何か言われるかもしれない。
 ど、どうすればいいのかしら?

 「ユリーナさん。ちょっといいかしら? この前の魔力の事なのですが」

 あ、そう言えばそんな話があったわね。そうだ!

 「あの、先生。大切なお話があります」

 ごめんなさい。マイステリー様。

 「マイステリー様も私と同じようにロッドに魔力があったようですと、ルミージュ嬢が言っていたのを聞いたのですが、マイステリー様も一緒にいいでしょうか?」
 「あら? そうなの? では、そうしましょう」
 「はい!」

 やったわ! でも、マイステリー様は怒るかもしれないわね。



 「では、二人共水晶の上に手を置いて」

 チラッとさっきからマイステリー様が私を見ている。怒っているのかもしれないわ。嫌われたらどうしましょう。
 でもこうやって一緒にいるだけで嬉しいなんて……。恋って不思議ね。

 「おかしいわね。二人共反応がないわ」

 まあ私はあれだとして、マイステリー様はそうしているのだと思いますけどね。

 「少し休憩してからやりましょうか。緊張しているのかもしれないわね」
 「はい」
 「私は少し、席を外すわね」
 「はい……」

 って、二人っきり!?
 チラッとマイステリー様を見ると、憮然としている! あぁかなり怒っているわ。どうしましょう。

 「ビールドリィ嬢が、僕の事を気がついたって聞いたけど嘘だよね? どういうつもり?」
 「え……」

 ですよね、バレますよね……。

 「その、ごめんなさい。一緒にやりたくて……」
 「……昨日、カーリア姉さんと一緒に居たよね?」

 見られていたのね。
 俯いていた顔を上げると、マイステリー様はジッと怖い顔で私を見つめていた。

 「何を言われたの? 僕に魔法を使えるって言うように言われた?」
 「……そ、それは」

 かなりまずい状況だわ。信用がなくなったら心を開かせるところではなくなる。というか、嫌われた?

 「もしかして、カーリア姉さんに言ったの? 僕が君にヒールを使った事」
 「え? それは言ってない! 本当よ。ほ、本当なの……」

 なぜ、こうなるの。
 未来を変えるなんてただの口実で、マイステリー様とお話がしたかった。そんな、やましい気持ちが見透かされたのかもしれない。

 「ごめんなさい……」

 どうしていいかわからず、私は走ってその場を後にした。
 これからどうしたらいいのでしょうか?
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