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第29話 目覚めてドッキリ

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 爽やかな朝。ふとディアルディは目を覚ます。

 ぐっすり寝てしまった!

 慌ててディアルディは、ルナードの様子を伺う。向こうもぐっすり寝ている様だ。

 おいおい。こんな美女がいるのに何もせずぐっすりかよ。さすが神官様だな。

 ルナードは、ディアルディが寝てしまっても中々寝付けなかった。ようやく朝方眠りについたのだ。
 そっとルナードに近づき、ディアルディは寝顔を覗き込む。

 こいつ髭がないよなぁ。まあ俺も薄い方だけど。

 フッとそう思い、そっと顎に触れてみた。

 凄いすべすべだ。って朝なのに全く髭が無い!? うん……?

 ディアルディは、ある違和感に気がついた。

 神官の制服のまま寝た為か暑かったのだろう。上半身には何も掛かってない。上を向いて寝ているルナードの胸の辺りが、少し盛り上がって見える。普段は気づかない胸の膨らみがシルエットを描いていた。

 何となく盛り上がっているような? 何か入ってるのか?

 そう思いディアルディは、ルナードの胸に触れてみた。

 これって……もしかして晒を巻いている?

 ディアルディ自身も巻いているので気がついたのだ。しかし、自分と違う。

 なんの為に晒を巻いているんだ? 俺の様に胸を……いやいや、なんの為にそんな――。逆か? あるのを隠す為? え――!

 「うーん」

 突然ルナードが寝返りを打ち、ディアルディはビックリとする。
 そして、ゆっくりとルナードから離れた。ルナードが目を覚ます前にと着替えを始める。

 お、落ち着け。ルナードが女のわけないだろう! 女だとしたら魔女って事になる! 神官が魔女なんてあり得ないだろう!
 ……けど、俺に興味がない説明ならこれでつく。

 一度疑惑が湧くと頭から離れない。確認すればいいだけだが、その手段もない。

 もし女なら俺、胸触っちゃった事になるな……。

 自分の顔が真っ赤なのがわかるぐらい顔が火照っていた。

 「あ、おはようございます」

 「!」

 ルナードが目を覚ました。
 声を掛けられたディアルディは、危なく声を上げるところだった。
 ゆっくりと顔だけ振り向き、軽く頭を下げるディアルディは、まともにルナードの顔を見れない。そして、自然と目線は胸に行く。
 上半身を起こしているルナードの胸は平らだ。神官の制服は、たぽっとしている。晒を巻いた胸は目立たない。

 膨らみがないな。でもあったよな?

 「ディアルディさん……」

 ディアルディは、ぎくりとする。

 「顔、赤いけど大丈夫ですか?」

 ディアルディは、大丈夫だと大きく頷いた。自分の心臓の音が、ルナードにも聞こえそうなぐらい大きく感じる。

 あ、そうだ。近くにきたら男だとバレる!

 突然立ち上がるとディアルディは、部屋を出て行った。

 「え? 私何かした?」

 なんとなくいつもと違うディアルディに、ルナードは首を傾げるのだった。
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