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第15話 見習い神官に戻ったルナード

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 「おはようございます」

 「おはよ……って、ルナード!? お前、どうしたんだよ!」

 同年代で見習いのサーターだ。彼も代々、神官の家系だ。

 「見ての通り、見習いに降格」

 「何したのお前? まあ俺は、戻って来て嬉しいけどよ」

 「嬉しいってなんだよ。酷いなぁ」

 「あははは。完ぺきだと思っていたお前もミスするんだな」

 「完璧?」

 「何でもそつなくこなしてさ。誰にでも平等で」

 「平等ねぇ。腹の中まではわからないだろう?」

 「ルナードからそんな言葉が出て来るとは……」

 「……君は、私を買い被り過ぎだ」

 「そうかぁ?」

 二人はせっせと、神殿の掃除をする。
 神官は、人で不足なのだ。男しかならないし、代々神官の家柄も違う商売を始め、神官にしない家系も出て来てなり手がいない。
 だからこそ、ダンザルの様な者も神官にしたのだ。

 今は、見習いはサーターだけだった。見習いになれるのは十歳からで、見習い候補者はいるが、見習いになるかどうかまではわからない。最低五年見習いをすれば、神官にはなれる。
 なので、ルナードの様に十六歳で神官になる事もあったのだ。
 ダンザルは、十二歳の時に見習いになった。
 なりたいと言う者は、すべて受け入れているのだが、それでもなり手がいない状況だ。

 「ふう。終わった。二人だと早いな」

 「あはは。三人でやっていた時と変わらないとは……」

 「あの人、やったふりしかしてなかったからなぁ。なんで、あんな人が神官で、俺がまだ見習いなんだ……」

 「いや、しっかり見習いをした方がいい。私の様に降格されて振り出しよりいいだろう」

 「まあ、それよりはね……。って、俺なら耐えられないけどなぁ」

 「私には、これしか生きる道がないからね」

 「……はぁ。神官長の孫って言うのも大変そうだね」

 そう言う意味ではないけどね。女である私が、生きていくためには、神官でいるしかないって事なんだけど。

 サーターの言葉にそう思うもそれは言えない。

□□□

 午後、二人は買い出しに街へと向かった。

 「ルナードさん、おめでとう」

 そう声を掛けられ振り返ると、パン屋の女将さんだ。

 「こんにちは」

 「婚約なさったそうだね」

 そう言いつつも不思議そうに、ルナードのみなりを見つめている。

 「また見習いからになりました」

 「おや……じゃ、これを持っておいき」

 パンの耳だ。カリッと揚げてあって砂糖をまぶしてある。

 「よ、よろしいのですか?」

 そう言いつつ、既に手渡して貰うルナード。となりでサーターが笑いを殺している。
 ルナードの好物で、神官になってからは貰うのはご法度なので、久しぶりに食べられるのだ。

 「いただきます。あ~幸せ」

 「そんなんで幸せだなんて。ところで本当に婚約したのかい?」

 見習いに降格したからだろう。そう聞かれ、知りたそうにサーターもルナードを見ている。

 「マカリー様のご紹介で、婚約は致しました。発表は、神官の儀式の時と思っていたのですが、遠のいてしまいました」

 神官の儀式――年に一度、一年間務め上げた新人の神官を祝う儀式だ。これを得て、本当の神官になったと言ってもいい。逆に言えば、儀式の後に見習いに戻る事はない。除名になる。

 しかし、わざわざ広めなくてもいいのに……。

 目立つ事この上ないと、ルナードは溜息をつくのだった。
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