上 下
10 / 71

第9話 本物の神官

しおりを挟む
 彼は、本物の神官だったのか……。

 惚けた様にディアルディは、ルナードを見つめていた。精霊は、いつの間にかいなくなっていた。

 うーん。まさかと思うが今ので、私に惚れちゃったりしないよな? 逆効果だったか?

 ルナードは、自分を怒らせると怖いと、二人に見せつけたつもりだった。だが、ディアルディの思わぬ放心状態に戸惑っていた。

 あぁ。やりすぎた。恐怖で固まったか。さて、どうするか……。
 しかし、彼女はどうしてのこのことこんな所までついて来たのか。今までだって、寄って来る男はいただろうに。

 「驚かせてすまなかった。歩けないのなら少し落ち着くまでここにいよう。そこに座るといいよ」

 座れそうな岩に座らせようとルナードが手を伸ばすと、ディアルディがビクッと体を震わす。

 まいったなぁ。

 断って抜けて来たとはいえ、そんなに長居はできない。だがしかし、ディアルディは動けないのだ。

 ディアルディは、どうしたらいいか思案していた。
 自分の精霊が姿を現せば、ルナードにばれてしまう。女性の姿でそうなれば、魔女だ。かと言って、男だとばらせば理由を話さなければならない。それは、できないのだ。

 絶対にばれてはいけない!

 しばらくは、精霊は呼ばない事にした。ルナードとも距離を置こう。そうディアルディは思う反面、騙している罪悪感が湧いて来た。
 さっきまでは、少しムカつく奴だと思っていた。だが、ルナードは、特別な力を持った本当の神官だったのだ。きっと、生涯独身を通し神官を全うしようと本気で思っていた。そこに、ディアルディが現れて、そうできなくなった。
 子供が出来なければきっと、第二婦人を娶る事になる。独身だったらそれをしなくてすんだ。

 俺に絶対手を出さないとマカリーさんは、ふんでいたって事か。

 興味がないではなく、神に誓ったって事だろうと、ディアルディは完結した。
 ディアルディは、深々とお辞儀を突然し、ルナードを驚かす。

 「やっと正気に戻りましたか。帰りましょう。送ります」

 ディアルディは、こくりと頷く。
 ルナードが歩き出すと、その後ろをついていく。

 やれやれだ。

 軽くため息をつき、ルナードはディアルディを家まで送り届けたのだった。

□□□

 戻って来たディアルディは、湯を浴び一息ついていた。

 「参ったな。あの人、なんで黙っていたんだ」

 あの人とは、勿論マカリーの事だ。彼は、ディアルディを男だと知っている。だがマカリーが、特別な力を持っているのをディアルディも知っていた。ルナードが持っているかもしれないと警戒すべきだった。

 いやばれてはいないのだから、これから気を付ければいい。ルナードは、昼間いないのだから。
 しかしあの男、神官のくせに無理やりってあるか? やばい、ルナードが彼を傷つけた。あの男が、大人しく引き下がってるといいけど……。

 ふと、マカリーにも迷惑がかかった事に気がついた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

【完結】巻き戻りを望みましたが、それでもあなたは遠い人

白雨 音
恋愛
14歳のリリアーヌは、淡い恋をしていた。相手は家同士付き合いのある、幼馴染みのレーニエ。 だが、その年、彼はリリアーヌを庇い酷い傷を負ってしまった。その所為で、二人の運命は狂い始める。 罪悪感に苛まれるリリアーヌは、時が戻れば良いと切に願うのだった。 そして、それは現実になったのだが…短編、全6話。 切ないですが、最後はハッピーエンドです☆《完結しました》

【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく

たまこ
恋愛
 10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。  多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。  もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。

御機嫌ようそしてさようなら  ~王太子妃の選んだ最悪の結末

Hinaki
恋愛
令嬢の名はエリザベス。 生まれた瞬間より両親達が創る公爵邸と言う名の箱庭の中で生きていた。 全てがその箱庭の中でなされ、そして彼女は箱庭より外へは出される事はなかった。 ただ一つ月に一度彼女を訪ねる5歳年上の少年を除いては……。 時は流れエリザベスが15歳の乙女へと成長し未来の王太子妃として半年後の結婚を控えたある日に彼女を包み込んでいた世界は崩壊していく。 ゆるふわ設定の短編です。 完結済みなので予約投稿しています。

【完結】今夜さよならをします

たろ
恋愛
愛していた。でも愛されることはなかった。 あなたが好きなのは、守るのはリーリエ様。 だったら婚約解消いたしましょう。 シエルに頬を叩かれた時、わたしの恋心は消えた。 よくある婚約解消の話です。 そして新しい恋を見つける話。 なんだけど……あなたには最後しっかりとざまあくらわせてやります!! ★すみません。 長編へと変更させていただきます。 書いているとつい面白くて……長くなってしまいました。 いつも読んでいただきありがとうございます!

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。 因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。 そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。 彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。 晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。 それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。 幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。 二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。 カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。 こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

[完]巻き戻りの第二王太子妃は親友の幸せだけを祈りたい!

小葉石
恋愛
クワーロジット王国滅亡の日、冷酷なクワーロジット王太子は第二王太子妃を捨てた。 その日、捨てられたラシーリア第二王太子妃は絶対絶命の危機に面していた。反王政の貴族の罠に嵌り全ての罪を着せられ、迫り来る騎士達の剣が振り下ろされた時、ラシーリア第二王太子妃は親友であったシェルツ第一王太子妃に庇われ共に絶命する。 絶命したラシーリアが目覚めれば王宮に上がる朝だった… 二度目の巻き戻りの生を実感するも、親友も王太子も自分が知る彼らではなく、二度と巻き込まれなくて良いように、王太子には自分からは関わらず、庇ってくれた親友の幸せだけを願って……… けれど、あれ?おかしな方向に向かっている…? シェルツ   第一王太子妃 ラシーリア  第二王太子妃 エルレント  クワーロジット王国王太子

私は愛する婚約者に嘘をつく

白雲八鈴
恋愛
亜麻色の髪の伯爵令嬢。 公爵子息の婚約者という立場。 これは本当の私を示すものではない。 でも私の心だけは私だけのモノ。 婚約者の彼が好き。これだけは真実。 それは本当? 真実と嘘が入り混じり、嘘が真実に置き換わっていく。 *作者の目は節穴ですので、誤字脱字は存在します。 *不快に思われれば、そのまま閉じることをお勧めします。 *小説家になろうでも投稿しています。

処理中です...