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第3話最後と最初の日
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久しぶりの実家。そうよ。私の家よ!
お母さんも笑顔で迎えてくれた。おかえりって。
夢だったの夢。
「これが最後になるのね……」
でもぼそりと言ったお母さんの言葉が、現実だと語った。
とりあえず、お母さんにも話を聞いてきてと言われ帰って来たけど、そんな言葉を聞くなんて……。
「私は、お母さんが本当のお母さんでなくても親子でいたいわ」
「私もそうよ。でもここに戻って来たという事は、侯爵の娘だったのでしょう? 侍女でいるわけにもいかないでしょう。もうお金の心配もする必要もないわ」
「お金は、私が王宮入りしてから困ってないでしょう。それにお母さんに私、親孝行してないわ」
「ありがとう。でも本当の親元に帰りなさい。私の心配は何もいらないわ。私は、ミリルイナの命恩人。たんまりお金を頂けるから……」
うつむいてそう言うお母さん。そうよね。お母さんもつらいよね。
私が行かないとお母さんを困らせる。普段、こんな風にたんまりなんて言わないもの。
「わかったわ。でもお母さんは、一人だけよ。命の恩人でもお育ての親でもない。私のたった一人の母親よ!」
「ミリルイナ!」
私たちは抱き合って泣いた。
嫌だと私が断ったところで、事実は変わらない。それどころか、どうにかしようと策を立てて来るに違いない。それに侍女として働く事もできなくなった。だって、解雇されて戻ってきたのだから。
次の日、街へ二人で買い物に出た。いつもはウィンドショッピング。見てるだけだけど、最後のお給料も貰って帰って来たからそれでお母さんにプレゼントするんだ。
□
「おかえりなさい。ミリルイナ」
「おかえり、待っていたよ」
夕方に迎えに来た馬車に乗り込んでグレンパール侯爵宅へ着くと、ご夫妻が出迎えてくれた。
「……ただいま戻りました」
「もう。堅苦しいわね」
くすりと夫人が笑う。
このお二人は、私を娘として受け入れているの? 舞い上がっているだけで、落ち着いたらやっぱりってならないかな?
それはそれで、怖い気がする。
「大丈夫だ。何も心配いらない。君の部屋はちゃんと用意してある。それとこの二人が君のお世話をする侍女だ」
「いいこと。自分でしてはだよめ。あなたが今までやっていたことをしてくれるのですからね」
夫人がぼそっと耳打ちしてきた。
「よ、宜しくお願いします」
「「はい。ミリルイナ様」」
侍女の二人は、頭を下げて返事をしてなんだか変な気分。
案内された部屋は広く、サラディラ様のお部屋に匹敵するほどで驚いた。
「ひ、広いですね」
部屋は三階にあり、寝室、浴室、そして客間まであった。
「普通ですよ。ドレスも用意しておきました。明日、王宮へ赴きましょう」
「え?」
「サラディラ様が会いたがっているの。ご挨拶に参りましょう」
「はい……」
そういえば、同年代は数人で新しく配属になった私によくしてくださった。今度は、令嬢としてのお付き合いか。む、難しいかも。
夕飯はかなり豪勢な食事だった。侍女の仕事をしていたので、見たことはあるものの食べたことがないものばかり。それなのに……。
「今度、お祝いしましょうね」
これより豪勢な食事だよね!?
美味しいはずの料理は味わうところじゃなく、緊張して食べていた。こればかりは、侍女をしていてよかったわ。使った事がなくてもわかるもの。
「明日、王宮に行く前にこれからの事を話し合いましょう。今日はゆっくりおやすみなさい。ミリルイナ」
「おやすみ、ミリルイナ」
「おやすみなさい」
そんな期待に満ちた目で見ても、お父様、お母様なんて呼べないから。
部屋に戻ったところで、侍女と一緒なので気も休まらない。
「今日は疲れたからもう寝ます」
必ず一人付いていた侍女が部屋を出ていった。
ふうっと肩の力が抜ける。
必ず誰かが付くように言ってあるんでしょうね。一人になったとしても三階では逃げようもないけどね。
窓から見える景色は、落ち着かない。
真っ暗闇の果ては、逆に街の明かりが見えて明るかった。
お母さんも笑顔で迎えてくれた。おかえりって。
夢だったの夢。
「これが最後になるのね……」
でもぼそりと言ったお母さんの言葉が、現実だと語った。
とりあえず、お母さんにも話を聞いてきてと言われ帰って来たけど、そんな言葉を聞くなんて……。
「私は、お母さんが本当のお母さんでなくても親子でいたいわ」
「私もそうよ。でもここに戻って来たという事は、侯爵の娘だったのでしょう? 侍女でいるわけにもいかないでしょう。もうお金の心配もする必要もないわ」
「お金は、私が王宮入りしてから困ってないでしょう。それにお母さんに私、親孝行してないわ」
「ありがとう。でも本当の親元に帰りなさい。私の心配は何もいらないわ。私は、ミリルイナの命恩人。たんまりお金を頂けるから……」
うつむいてそう言うお母さん。そうよね。お母さんもつらいよね。
私が行かないとお母さんを困らせる。普段、こんな風にたんまりなんて言わないもの。
「わかったわ。でもお母さんは、一人だけよ。命の恩人でもお育ての親でもない。私のたった一人の母親よ!」
「ミリルイナ!」
私たちは抱き合って泣いた。
嫌だと私が断ったところで、事実は変わらない。それどころか、どうにかしようと策を立てて来るに違いない。それに侍女として働く事もできなくなった。だって、解雇されて戻ってきたのだから。
次の日、街へ二人で買い物に出た。いつもはウィンドショッピング。見てるだけだけど、最後のお給料も貰って帰って来たからそれでお母さんにプレゼントするんだ。
□
「おかえりなさい。ミリルイナ」
「おかえり、待っていたよ」
夕方に迎えに来た馬車に乗り込んでグレンパール侯爵宅へ着くと、ご夫妻が出迎えてくれた。
「……ただいま戻りました」
「もう。堅苦しいわね」
くすりと夫人が笑う。
このお二人は、私を娘として受け入れているの? 舞い上がっているだけで、落ち着いたらやっぱりってならないかな?
それはそれで、怖い気がする。
「大丈夫だ。何も心配いらない。君の部屋はちゃんと用意してある。それとこの二人が君のお世話をする侍女だ」
「いいこと。自分でしてはだよめ。あなたが今までやっていたことをしてくれるのですからね」
夫人がぼそっと耳打ちしてきた。
「よ、宜しくお願いします」
「「はい。ミリルイナ様」」
侍女の二人は、頭を下げて返事をしてなんだか変な気分。
案内された部屋は広く、サラディラ様のお部屋に匹敵するほどで驚いた。
「ひ、広いですね」
部屋は三階にあり、寝室、浴室、そして客間まであった。
「普通ですよ。ドレスも用意しておきました。明日、王宮へ赴きましょう」
「え?」
「サラディラ様が会いたがっているの。ご挨拶に参りましょう」
「はい……」
そういえば、同年代は数人で新しく配属になった私によくしてくださった。今度は、令嬢としてのお付き合いか。む、難しいかも。
夕飯はかなり豪勢な食事だった。侍女の仕事をしていたので、見たことはあるものの食べたことがないものばかり。それなのに……。
「今度、お祝いしましょうね」
これより豪勢な食事だよね!?
美味しいはずの料理は味わうところじゃなく、緊張して食べていた。こればかりは、侍女をしていてよかったわ。使った事がなくてもわかるもの。
「明日、王宮に行く前にこれからの事を話し合いましょう。今日はゆっくりおやすみなさい。ミリルイナ」
「おやすみ、ミリルイナ」
「おやすみなさい」
そんな期待に満ちた目で見ても、お父様、お母様なんて呼べないから。
部屋に戻ったところで、侍女と一緒なので気も休まらない。
「今日は疲れたからもう寝ます」
必ず一人付いていた侍女が部屋を出ていった。
ふうっと肩の力が抜ける。
必ず誰かが付くように言ってあるんでしょうね。一人になったとしても三階では逃げようもないけどね。
窓から見える景色は、落ち着かない。
真っ暗闇の果ては、逆に街の明かりが見えて明るかった。
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