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39話 エインズワイス侯爵視点
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どうしてそこまでするんだ!!
ミチェスラフ殿下にアイデラのドレスの事を聞いたのか? だから嫌がらせにイヴェットに紫色のドレスを贈ったのか? 二人を比べさせる為に。
ここに居る者はどうやら、アイデラがメレンデレス辺境伯の庶子だと知っているようだ。我々が来る前に、クロリッセ陛下が広めたのだろう。
メレンデレス辺境伯を蔑んでいるのはわかるが、子供には罪はないだろう。そんなにアイデラの事が嫌ならもういっその事、彼の子だと発表して彼と暮らさせればいい。
いやしないだろうな。クロリッセ陛下は親子を引き裂いて、メレンデレス辺境伯に愚かな行為をしたと苛ませたいのだろう。
だが忘れてもらっては困る。アイデラは我が娘イリスの子。本来は家系を継ぐ孫なのだ。
相手が王家でなければ、どんな手を使っても償わせてやるのだが!
それにしてもやっぱりわからない。
なぜミチェスラフ殿下の話に乗ったのか。彼が王になればアイデラは、王妃になる。蔑んでいる弟の子が他国だとはいえ、王の一員になるというのに。
まさか彼に王にならないからと聞いてそれを信じた?
いやあり得ないか。
たぶんミチェスラフ殿下が、自身とこの国での感覚の違いを逆手に取り、上手い具合に言いくるめたのだろうな。
私も彼から説明を受けなければ、第一王子が即位すると確信していた。
グランチェック魔術王国は、女性も男性と同じく家系を継げる。我が国フォルデードの貴族も娘が継げるが弟がいれば男児が継ぐ。
クロリッセ陛下もこれは知っているだろう。だから安心しているのだ。ミチェスラフ殿下は第二王子だが、姉が二人いる。つまりこの国に置き換えれば、王位継承権の順位は4番目。
指名制だとはいえ、彼が王になる事はないだろうと。
しかし、ミチェスラフ殿下によれば、より優秀な者を王に指名する。これが本当なら我が子ではなく、王位継承権を持つ甥や姪でも指名するという事だ。
クロリッセ陛下にしてみれば、あり得ない事だろう。
それをわかっていて、クロリッセ陛下さえたぶらかしたのだ。末恐ろしい。
そんな事を考えているとまた辺りが静まり返った。皆の視線の先を追えば、ミチェスラフ殿下が、颯爽とこちらへ来るのが見える。
「この度は、即位おめでとうございます」
「ありがとう。そうだわ。皆さんにご紹介致します。彼は隣国グランチェック魔術王国の第二王子のミチェスラフ殿下よ」
「ミチェスラフです」
紹介された彼は、軽くお辞儀をする。王族が下の者に頭を下げるなどこの国にはないが、グランチェック魔術王国では位に関係なく敬意を表する時は軽く頭を下げると聞いていたが、我々に対してそうするとは驚いた。
ふう。やっぱりそうだ。
我々に向けた態度に、クロリッセ陛下が冷ややかな瞳をミチェスラフ殿下に向けていた。彼を見下しているのだ。まあ相手は、大人として来ているが10歳だ。私達にしてみれば、まだまだ子供。
「それと彼は、そこにいるアイデラの婚約者でもあります。お似合いな二人ですね」
「ありがとうございます、女王陛下。できれば、彼女が大人になったらすぐに婚姻したいのですが、よろしいでしょうか」
これは私に向けて言ったのではない。クロリッセ陛下に確認をしているのだ。私を見た後に彼女に顔を向けたのだから。
渡したくない! だがどうする手段も見つかっていない。せめてペンダントを見つけないと、イリスの子だという証明をしなければならない。
「そうね。10歳は無理だけど13歳になれば婚姻できるわ。ね、エインズワイス侯爵」
「え!?」
「………」
13歳と聞き、アイデラが驚いて私を見た。
まさか13歳で結婚させられるとは思っていなかったのだろう。私とて聞いていない!
「あら? ご存じありませんか。学園に通う者は本来、学園を卒業した後に結婚しますが、他国へ嫁ぐ場合に限り13歳からの婚姻を許されております」
クロリッセ陛下がにっこりして、私に説明した。そんな事はもちろん知っている。13歳と言えばちょうど7年後。つまり王位継承の年。
ミチェスラフ殿下は、次期王になり次第アイデラを連れて行く気なのだろう。だからここで、言質を取った。
だったら私も、取らせて頂きますよ、ミチェスラフ殿下。
「えぇ、存じてます。少し驚いただけです。ここで結婚宣言をしたのですから必ず連れて行って下さい。ミチェスラフ殿下」
「もちろんです」
彼もまた、私にほほ笑んだ。
これでアイデラが、他国の王族へ嫁ぐという噂が広まるだろう。
メレンデレス辺境伯の庶子という噂の上書きだ。
ミチェスラフ殿下にアイデラのドレスの事を聞いたのか? だから嫌がらせにイヴェットに紫色のドレスを贈ったのか? 二人を比べさせる為に。
ここに居る者はどうやら、アイデラがメレンデレス辺境伯の庶子だと知っているようだ。我々が来る前に、クロリッセ陛下が広めたのだろう。
メレンデレス辺境伯を蔑んでいるのはわかるが、子供には罪はないだろう。そんなにアイデラの事が嫌ならもういっその事、彼の子だと発表して彼と暮らさせればいい。
いやしないだろうな。クロリッセ陛下は親子を引き裂いて、メレンデレス辺境伯に愚かな行為をしたと苛ませたいのだろう。
だが忘れてもらっては困る。アイデラは我が娘イリスの子。本来は家系を継ぐ孫なのだ。
相手が王家でなければ、どんな手を使っても償わせてやるのだが!
それにしてもやっぱりわからない。
なぜミチェスラフ殿下の話に乗ったのか。彼が王になればアイデラは、王妃になる。蔑んでいる弟の子が他国だとはいえ、王の一員になるというのに。
まさか彼に王にならないからと聞いてそれを信じた?
いやあり得ないか。
たぶんミチェスラフ殿下が、自身とこの国での感覚の違いを逆手に取り、上手い具合に言いくるめたのだろうな。
私も彼から説明を受けなければ、第一王子が即位すると確信していた。
グランチェック魔術王国は、女性も男性と同じく家系を継げる。我が国フォルデードの貴族も娘が継げるが弟がいれば男児が継ぐ。
クロリッセ陛下もこれは知っているだろう。だから安心しているのだ。ミチェスラフ殿下は第二王子だが、姉が二人いる。つまりこの国に置き換えれば、王位継承権の順位は4番目。
指名制だとはいえ、彼が王になる事はないだろうと。
しかし、ミチェスラフ殿下によれば、より優秀な者を王に指名する。これが本当なら我が子ではなく、王位継承権を持つ甥や姪でも指名するという事だ。
クロリッセ陛下にしてみれば、あり得ない事だろう。
それをわかっていて、クロリッセ陛下さえたぶらかしたのだ。末恐ろしい。
そんな事を考えているとまた辺りが静まり返った。皆の視線の先を追えば、ミチェスラフ殿下が、颯爽とこちらへ来るのが見える。
「この度は、即位おめでとうございます」
「ありがとう。そうだわ。皆さんにご紹介致します。彼は隣国グランチェック魔術王国の第二王子のミチェスラフ殿下よ」
「ミチェスラフです」
紹介された彼は、軽くお辞儀をする。王族が下の者に頭を下げるなどこの国にはないが、グランチェック魔術王国では位に関係なく敬意を表する時は軽く頭を下げると聞いていたが、我々に対してそうするとは驚いた。
ふう。やっぱりそうだ。
我々に向けた態度に、クロリッセ陛下が冷ややかな瞳をミチェスラフ殿下に向けていた。彼を見下しているのだ。まあ相手は、大人として来ているが10歳だ。私達にしてみれば、まだまだ子供。
「それと彼は、そこにいるアイデラの婚約者でもあります。お似合いな二人ですね」
「ありがとうございます、女王陛下。できれば、彼女が大人になったらすぐに婚姻したいのですが、よろしいでしょうか」
これは私に向けて言ったのではない。クロリッセ陛下に確認をしているのだ。私を見た後に彼女に顔を向けたのだから。
渡したくない! だがどうする手段も見つかっていない。せめてペンダントを見つけないと、イリスの子だという証明をしなければならない。
「そうね。10歳は無理だけど13歳になれば婚姻できるわ。ね、エインズワイス侯爵」
「え!?」
「………」
13歳と聞き、アイデラが驚いて私を見た。
まさか13歳で結婚させられるとは思っていなかったのだろう。私とて聞いていない!
「あら? ご存じありませんか。学園に通う者は本来、学園を卒業した後に結婚しますが、他国へ嫁ぐ場合に限り13歳からの婚姻を許されております」
クロリッセ陛下がにっこりして、私に説明した。そんな事はもちろん知っている。13歳と言えばちょうど7年後。つまり王位継承の年。
ミチェスラフ殿下は、次期王になり次第アイデラを連れて行く気なのだろう。だからここで、言質を取った。
だったら私も、取らせて頂きますよ、ミチェスラフ殿下。
「えぇ、存じてます。少し驚いただけです。ここで結婚宣言をしたのですから必ず連れて行って下さい。ミチェスラフ殿下」
「もちろんです」
彼もまた、私にほほ笑んだ。
これでアイデラが、他国の王族へ嫁ぐという噂が広まるだろう。
メレンデレス辺境伯の庶子という噂の上書きだ。
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