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20話 ブレナ侯爵夫人視点
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「今日はお招き頂きありがとうございます。アルディネ伯爵夫人」
「ようこそいらっしゃいました。エインズワイス侯爵夫人」
柔らかな新緑の瞳を細めほほ笑むアルディネ伯爵夫人ですが、相変わらず目が全く笑っておりませんわね。
貴族の習わしだとは言え、10歳以上年下の侯爵夫人の私が気に入らないのなら呼ばなくても宜しいのに。
席につけば、私など無視して噂話に花を咲かせるご婦人達。
この頃は、家に居ても落ち着けない。ブラインがなぜか養女になった二人と距離を置いてしまっている。どうしたものかしら。
ここにいる方々は、子育ても一段落しているのだから助言を頂けるとありがたいけど、無理でしょうね。
この方々にしてみれば、小娘が侯爵の寂しさに付け込んで、自身の子供を侯爵の当主にする為に擦り寄ったと思っているのですから。若さにモノを言わせた令嬢。
私をワザと呼び、無駄な時間を過ごさせる。
断ればいいのですけど、ブラインの事を思えば無視もできないわ。
「そういえば、あの噂ご存じ?」
「もしかしてアーロイズ子爵家の?」
「えぇ。何でもある侯爵家に手のひら返しをされて、没落寸前だとか」
「魔法持ちの子を横取りしたという話よね。で、どうなのかしらエインズワイス侯爵夫人」
アルディネ伯爵夫人が私に語り掛ければ、皆が私を興味津々に見つめる。
どういう事? 魔法持ちの子を横取り? あの方が?
「息子が居るのに養女など連れて来ておりませんよね?」
にやりとしてアルディネ伯爵夫人が言った。
この顔、イヴェットが養女に来たのをもう知っているのね。
まだ一か月ぐらいしか経っておらず、大っぴらにしていないのになぜ知っているのかしら。いえ、それより、横取りとはどういう事なの?
「おや? ご存じありませんの?」
「アーロイズ子爵家が言う通り、あなたの所にいる子は彼が施設から連れて来たらしいわよ。その子を譲る代わりに、アーロイズ子爵家の娘に侯爵家と同じ教育を施すと言う口約束をしたのらしいけど、手のひら返しをされたらしいわよ」
「そんなでたらめ……」
「あら少なくとも、エインズワイス侯爵が、アーロイズ子爵家の娘の教育を頼んだのは本当よ。孫の教師も行っているの。夫人に直接聞いたわ」
アルディネ伯爵夫人が、知らなかったの可哀そうにという目で私を見ている。
どうやって彼女達を連れて来たのかは私は知らない。でもアーロイズ子爵家に頼んだようね。見返りとして娘に教育を? それなのに、手のひら返しをした?
たぶん、イヴェットの方がおまけだったのでしょうね。
だけど、魔法持ちだとわかったから彼女も引き取る事にしたが、アーロイズ子爵家が渡さないと言い出したとか?
だからアーロイズ子爵家を嵌めたというの?
あの子、光魔法だと言うし、アーロイズ子爵家に渡すはずがないわ。
辻褄は合うけど、よっぽどな事がなければ没落まで追い詰める事はないと思うわ。
「気を付けた方がいいわよ。あなた達も用なしと手のひら返しされるかもしれないわ」
「………」
あぁ、そういう事。
アーロイズ子爵家の様になればいいわねって言いたいのね。
世間的には、イヴェットが魔法持ちだったので養女にし、双子の片割れであるアイデラも引き取った。
でも本当は逆。イリス令嬢の娘でエインズワイス侯爵の孫であるアイデラを引き取る為。その際にイヴェットも引き取った。
アーロイズ家の娘に教育の施しを受けさせたのは、アイデラの事を口止めする為なのではないかしら?
でも、その事は出回っていないのよね? なぜ?
「うっすらと血の繋がりがあるとはいえ、魔法持ちの子が居れば王族との繋がりを持てるでしょう」
確かに。ブラインと年齢が近い令嬢は伯爵家の子だわ。娘のイリス嬢も侯爵家の息子と結婚するはずだったと聞いているわ。
でもブラインを当主にすると約束してくれている。婿に貰うのではなく、嫁がせるつもりなら……でも養女は二人いるのよ。
一方を王家と結婚させるとして……魔法持ちの子を嫁に出すぐらいならどこかの養女にしてブラインに嫁がせる事も出来たはず。
ただあの子は、平民かもしれない。だとすれば嫁がせる事はないわね。
大丈夫。私は、口約束ではないもの。
私が考え込めば、クスクスと笑う事が聞こえる。
今日の余興に、彼女達は満足したようだった。
「ようこそいらっしゃいました。エインズワイス侯爵夫人」
柔らかな新緑の瞳を細めほほ笑むアルディネ伯爵夫人ですが、相変わらず目が全く笑っておりませんわね。
貴族の習わしだとは言え、10歳以上年下の侯爵夫人の私が気に入らないのなら呼ばなくても宜しいのに。
席につけば、私など無視して噂話に花を咲かせるご婦人達。
この頃は、家に居ても落ち着けない。ブラインがなぜか養女になった二人と距離を置いてしまっている。どうしたものかしら。
ここにいる方々は、子育ても一段落しているのだから助言を頂けるとありがたいけど、無理でしょうね。
この方々にしてみれば、小娘が侯爵の寂しさに付け込んで、自身の子供を侯爵の当主にする為に擦り寄ったと思っているのですから。若さにモノを言わせた令嬢。
私をワザと呼び、無駄な時間を過ごさせる。
断ればいいのですけど、ブラインの事を思えば無視もできないわ。
「そういえば、あの噂ご存じ?」
「もしかしてアーロイズ子爵家の?」
「えぇ。何でもある侯爵家に手のひら返しをされて、没落寸前だとか」
「魔法持ちの子を横取りしたという話よね。で、どうなのかしらエインズワイス侯爵夫人」
アルディネ伯爵夫人が私に語り掛ければ、皆が私を興味津々に見つめる。
どういう事? 魔法持ちの子を横取り? あの方が?
「息子が居るのに養女など連れて来ておりませんよね?」
にやりとしてアルディネ伯爵夫人が言った。
この顔、イヴェットが養女に来たのをもう知っているのね。
まだ一か月ぐらいしか経っておらず、大っぴらにしていないのになぜ知っているのかしら。いえ、それより、横取りとはどういう事なの?
「おや? ご存じありませんの?」
「アーロイズ子爵家が言う通り、あなたの所にいる子は彼が施設から連れて来たらしいわよ。その子を譲る代わりに、アーロイズ子爵家の娘に侯爵家と同じ教育を施すと言う口約束をしたのらしいけど、手のひら返しをされたらしいわよ」
「そんなでたらめ……」
「あら少なくとも、エインズワイス侯爵が、アーロイズ子爵家の娘の教育を頼んだのは本当よ。孫の教師も行っているの。夫人に直接聞いたわ」
アルディネ伯爵夫人が、知らなかったの可哀そうにという目で私を見ている。
どうやって彼女達を連れて来たのかは私は知らない。でもアーロイズ子爵家に頼んだようね。見返りとして娘に教育を? それなのに、手のひら返しをした?
たぶん、イヴェットの方がおまけだったのでしょうね。
だけど、魔法持ちだとわかったから彼女も引き取る事にしたが、アーロイズ子爵家が渡さないと言い出したとか?
だからアーロイズ子爵家を嵌めたというの?
あの子、光魔法だと言うし、アーロイズ子爵家に渡すはずがないわ。
辻褄は合うけど、よっぽどな事がなければ没落まで追い詰める事はないと思うわ。
「気を付けた方がいいわよ。あなた達も用なしと手のひら返しされるかもしれないわ」
「………」
あぁ、そういう事。
アーロイズ子爵家の様になればいいわねって言いたいのね。
世間的には、イヴェットが魔法持ちだったので養女にし、双子の片割れであるアイデラも引き取った。
でも本当は逆。イリス令嬢の娘でエインズワイス侯爵の孫であるアイデラを引き取る為。その際にイヴェットも引き取った。
アーロイズ家の娘に教育の施しを受けさせたのは、アイデラの事を口止めする為なのではないかしら?
でも、その事は出回っていないのよね? なぜ?
「うっすらと血の繋がりがあるとはいえ、魔法持ちの子が居れば王族との繋がりを持てるでしょう」
確かに。ブラインと年齢が近い令嬢は伯爵家の子だわ。娘のイリス嬢も侯爵家の息子と結婚するはずだったと聞いているわ。
でもブラインを当主にすると約束してくれている。婿に貰うのではなく、嫁がせるつもりなら……でも養女は二人いるのよ。
一方を王家と結婚させるとして……魔法持ちの子を嫁に出すぐらいならどこかの養女にしてブラインに嫁がせる事も出来たはず。
ただあの子は、平民かもしれない。だとすれば嫁がせる事はないわね。
大丈夫。私は、口約束ではないもの。
私が考え込めば、クスクスと笑う事が聞こえる。
今日の余興に、彼女達は満足したようだった。
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