17 / 40
17話 エインズワイス侯爵視点
しおりを挟む
どうしたものか。
私は、イリスにとって頼れる父親ではなかったのだろうな。
貴族の矜持。イリスはそれを捨て、自身の幸せをとった。
ベント・イスキルドル伯爵になった彼は、私と同じ侯爵家の息子だったのだ。その彼が、手引きをするなど思いもしなかった。話を聞いた今でも信じられん。
すべてが本当かは疑問もあるが、彼が了承して娘が逢瀬した結果だとすれば、身ごもったと知られるわけにもいかなかったのだろう。
そうなっていれば、彼は好きだった彼女とは結婚出来ていない。
その事実を両家は何としても隠し、子供をおろさせ二人を無理やり結婚させていただろう。
失踪は、二人のそれぞれの幸せを掴む為に行われた。
もうこの際、イリスもいない事だしこの事は考えない様にしよう。
ただ、イリスの相手、アイデラの父親がわからないのが厄介だ。
失踪時、教師も含め学園内の者をそれこそ私の権限をフルに使い調べたが、怪しい者がいなかった。まあ婚約者であった彼を無意識に除外していたのは確かだ。
アイデラの父親が善人とは限らない。孫だという事は隠して引き取る事にしよう。
今更自分の子供がひょっこり出てくれば、彼も人生を狂わされるだろう。相手の爵位が高いほど危うい。
アイデラがイリスの子というのは、父親が誰か判明してからだ。
しかし、何もなしに突然引き取れば怪しまれる。
上手い具合にイヴェットに光魔法の適性があったのがわかった。これを利用しよう。
アイデラとイヴェットは双子。片割れだけを引き取るのはかわいそうだから二人を引き取った。これならまあ、なんとか世間を欺けるだろう。
あともう一つ懸念されるのは、妻のブレナだな。彼女には、ある程度本当の事を話そう。
ブレナは、遠縁の子。夫が亡くなり、男児が産まれたにも拘わらず出戻りを余儀なくされた。
夫に年の離れた弟がいたので、跡取りにする為に厄介払いされたのだ。
彼女は、子もいて実家に居づらかった。
それを知った私は、彼女の子を養子にしようと考えたのだが、ブレナと再婚する条件を提示してきたのだ。
私としてはどちらでもよかった。子供も母親が一緒の方がいいだろうと条件を飲んだ。
ブレナは、10歳以上離れた者との結婚をどう思ったかはわからないが、どうせ白い結婚だ。私には、相手の年齢など関係なかった。
息子のブラインを将来当主とする事。
ブレナに、夫人としての権限を与える事。
再婚時に結んだ契約だ。
これらを守ると言えば、大丈夫だと思うが。
◇
「というわけだ。ブラインを当主とするのは変らない。大変だとは思うが二人も面倒を見てもらえないだろうか」
「……それは構いませんが。本当にその子がイリス嬢の子供だという証拠はあるのでしょうか?」
「私の手元にある」
本当はまだ、ペンダントは見つかっていないが。証拠として必要になる時までに探し出せば問題ないだろう。
「そうですか。ところでお相手の方は誰なのですか?」
「それは……言えない」
ブレナには、イリスが子を産んだ事を相手は知らないので、ひた隠す事にしたと伝えてある。
見た目が似ていたイヴェットも連れて来たところ、光魔法の適性がある事がわかったので、このまま養女にする事にしたと伝えた。
「彼女達には、孫だと言う事は伝えないでほしい。子供だと口にしてしまうかもしれないからな。ある程度の齢になったら私から話すつもりだ」
「わかりました。では、孫だという事はブラインにも内緒でいいのですね」
「その方がいいだろう。大変だとは思うが宜しく頼むな」
「はい。お任せ下さい。イリス嬢の代わりにはなりませんが、愛情を注ぎます」
私は、ありがとうと伝え、アイデラ達がいる屋敷へと向かう。
彼女達は、私と出会った時の事を覚えていないようだし、作戦は上手くいくだろう。
私は、イリスにとって頼れる父親ではなかったのだろうな。
貴族の矜持。イリスはそれを捨て、自身の幸せをとった。
ベント・イスキルドル伯爵になった彼は、私と同じ侯爵家の息子だったのだ。その彼が、手引きをするなど思いもしなかった。話を聞いた今でも信じられん。
すべてが本当かは疑問もあるが、彼が了承して娘が逢瀬した結果だとすれば、身ごもったと知られるわけにもいかなかったのだろう。
そうなっていれば、彼は好きだった彼女とは結婚出来ていない。
その事実を両家は何としても隠し、子供をおろさせ二人を無理やり結婚させていただろう。
失踪は、二人のそれぞれの幸せを掴む為に行われた。
もうこの際、イリスもいない事だしこの事は考えない様にしよう。
ただ、イリスの相手、アイデラの父親がわからないのが厄介だ。
失踪時、教師も含め学園内の者をそれこそ私の権限をフルに使い調べたが、怪しい者がいなかった。まあ婚約者であった彼を無意識に除外していたのは確かだ。
アイデラの父親が善人とは限らない。孫だという事は隠して引き取る事にしよう。
今更自分の子供がひょっこり出てくれば、彼も人生を狂わされるだろう。相手の爵位が高いほど危うい。
アイデラがイリスの子というのは、父親が誰か判明してからだ。
しかし、何もなしに突然引き取れば怪しまれる。
上手い具合にイヴェットに光魔法の適性があったのがわかった。これを利用しよう。
アイデラとイヴェットは双子。片割れだけを引き取るのはかわいそうだから二人を引き取った。これならまあ、なんとか世間を欺けるだろう。
あともう一つ懸念されるのは、妻のブレナだな。彼女には、ある程度本当の事を話そう。
ブレナは、遠縁の子。夫が亡くなり、男児が産まれたにも拘わらず出戻りを余儀なくされた。
夫に年の離れた弟がいたので、跡取りにする為に厄介払いされたのだ。
彼女は、子もいて実家に居づらかった。
それを知った私は、彼女の子を養子にしようと考えたのだが、ブレナと再婚する条件を提示してきたのだ。
私としてはどちらでもよかった。子供も母親が一緒の方がいいだろうと条件を飲んだ。
ブレナは、10歳以上離れた者との結婚をどう思ったかはわからないが、どうせ白い結婚だ。私には、相手の年齢など関係なかった。
息子のブラインを将来当主とする事。
ブレナに、夫人としての権限を与える事。
再婚時に結んだ契約だ。
これらを守ると言えば、大丈夫だと思うが。
◇
「というわけだ。ブラインを当主とするのは変らない。大変だとは思うが二人も面倒を見てもらえないだろうか」
「……それは構いませんが。本当にその子がイリス嬢の子供だという証拠はあるのでしょうか?」
「私の手元にある」
本当はまだ、ペンダントは見つかっていないが。証拠として必要になる時までに探し出せば問題ないだろう。
「そうですか。ところでお相手の方は誰なのですか?」
「それは……言えない」
ブレナには、イリスが子を産んだ事を相手は知らないので、ひた隠す事にしたと伝えてある。
見た目が似ていたイヴェットも連れて来たところ、光魔法の適性がある事がわかったので、このまま養女にする事にしたと伝えた。
「彼女達には、孫だと言う事は伝えないでほしい。子供だと口にしてしまうかもしれないからな。ある程度の齢になったら私から話すつもりだ」
「わかりました。では、孫だという事はブラインにも内緒でいいのですね」
「その方がいいだろう。大変だとは思うが宜しく頼むな」
「はい。お任せ下さい。イリス嬢の代わりにはなりませんが、愛情を注ぎます」
私は、ありがとうと伝え、アイデラ達がいる屋敷へと向かう。
彼女達は、私と出会った時の事を覚えていないようだし、作戦は上手くいくだろう。
応援ありがとうございます!
6
お気に入りに追加
68
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる