2 / 40
2話
しおりを挟む
私が前世持ちだと気が付いたのは、三歳の時。イヴェットと喧嘩をしてちょっと頭をぶつけたんだよね。きっとそれまでは、年相応の子だったと思う。前世の記憶を持ってからは、イヴェットと遊ぶのが嫌で放置してた。だって面倒見切れないんだもん。
私達は、同じ日に施設の敷地内に捨てられていたらしい。
施設では、出来る事は自分でするのが当たり前。掃除に洗濯、調理も。
そんなある日、アーロイズ子爵家が来た。
来たことがない貴族で、何だろうとこっそり覗いてみていると、イヴェットと私が呼ばれる。
「この二人が、条件に合います」
施設長がそう言って私達を紹介した。
紹介された私達を見てアーロイズ子爵は、うーむと困り顔。きっと青色の髪の子という大雑把に言われて来たに違いない。小説ではそうだった。
自分では判断が付かないと思ったようで、私達二人とも連れていかれる事になる。
こうして、初めての馬車に乗り込んだ。
私は嬉しくなかったけど、イヴェットは大喜び。
前世持ちの私としては、馬車などお尻が痛くなる乗り物として記憶されている。と言っても、乗った事などないけど。思ったより硬くはなかったけど、一時間半も座ればお尻も痛い。
最初上機嫌だったイヴェットも、施設に帰ると泣き出した。
アーロイズ子爵がイラついているのが見ていてわかる。
私達の世話をする為に来た侍女にあやされるイヴェットは、お尻が痛いと言って侍女の上に座った。
私はと言うと、そんな彼女を放っておいて流れる景色を見ていた。
施設は、民家より少し離れて建っていて、こんな近くでたくさんの建物を見たのは初めてだ。
私からするとヨーロッパ風の景色? 行ったことないけど。前世の記憶にある日本の建物ではない。だから見ていて楽しかった。お尻は痛いけど。
きっと印象は、私は大人しい子。イヴェットは、騒がしい子またはわがままな子かな。
着いたと馬車から降りて屋敷を見て驚いた。大きい。貴族が住む建物だから当たり前なのかもしれないけど。実際に見るとデカいなぁというのが、感想だ。
「わぁ」とイヴェットは、目をキラキラとさせている。
私達は、応接室に通された。ここで待つように言われた。
見た事がない立派なソファーに装飾品の数々。
お願いだからイヴェット、それらに触れないでね。
私達についた侍女もそう思ったらしく、イヴェットと手を繋いでいる。
手を振りほどこうとすると侍女にダメですと言われ、顔を膨らます。かわいくしたって、侍女には通じない。
お菓子がテーブルに並べ慣れれば、イヴェットの関心はそっちに向かい、ソファーに並んで座ってお菓子を食べて待つ。
凄い速さで食べるイヴェットに侍女だけでなく、私も驚いた。
まあ施設では、絶対に見る事がないものだからね。私もお菓子など前世の記憶しかなかったから食べられるとはと感動していた。
あぁ、甘くておいしい。幸せ。
食べるのに飽きたイヴェットが、私に遊ぼうと言い出した。彼女が言う遊びとは走り回る事。
「広いけど、ここで走ったらダメ」
「だってつまんない」
「つまんないって……」
「じゃ、これ貸して」
「ダメ!」
私の胸を指さしイヴェットが言う。私が首から下げているペンダントを貸せと言ってきた。そう言われるのが嫌で、前世の記憶が戻ってからは誰にも見せない様にしていたのに、覚えていたのね。3歳まではたまに貸したりしていたけど、一応形見だから奪われるのが嫌だった。
「ううう」
っげ。泣くつもり?
相手は5歳児。私はそう自分に言い聞かせる。
「ちょっとだけよ」
そう言って渡してしまった。
よく考えれば、私も5歳児だ。でも前世の記憶を思い出してからは、精神年齢がぐーんと上がってしまったんだよね。
この判断が間違いだったと気が付いた時にはすでに遅しだった。
私達は、同じ日に施設の敷地内に捨てられていたらしい。
施設では、出来る事は自分でするのが当たり前。掃除に洗濯、調理も。
そんなある日、アーロイズ子爵家が来た。
来たことがない貴族で、何だろうとこっそり覗いてみていると、イヴェットと私が呼ばれる。
「この二人が、条件に合います」
施設長がそう言って私達を紹介した。
紹介された私達を見てアーロイズ子爵は、うーむと困り顔。きっと青色の髪の子という大雑把に言われて来たに違いない。小説ではそうだった。
自分では判断が付かないと思ったようで、私達二人とも連れていかれる事になる。
こうして、初めての馬車に乗り込んだ。
私は嬉しくなかったけど、イヴェットは大喜び。
前世持ちの私としては、馬車などお尻が痛くなる乗り物として記憶されている。と言っても、乗った事などないけど。思ったより硬くはなかったけど、一時間半も座ればお尻も痛い。
最初上機嫌だったイヴェットも、施設に帰ると泣き出した。
アーロイズ子爵がイラついているのが見ていてわかる。
私達の世話をする為に来た侍女にあやされるイヴェットは、お尻が痛いと言って侍女の上に座った。
私はと言うと、そんな彼女を放っておいて流れる景色を見ていた。
施設は、民家より少し離れて建っていて、こんな近くでたくさんの建物を見たのは初めてだ。
私からするとヨーロッパ風の景色? 行ったことないけど。前世の記憶にある日本の建物ではない。だから見ていて楽しかった。お尻は痛いけど。
きっと印象は、私は大人しい子。イヴェットは、騒がしい子またはわがままな子かな。
着いたと馬車から降りて屋敷を見て驚いた。大きい。貴族が住む建物だから当たり前なのかもしれないけど。実際に見るとデカいなぁというのが、感想だ。
「わぁ」とイヴェットは、目をキラキラとさせている。
私達は、応接室に通された。ここで待つように言われた。
見た事がない立派なソファーに装飾品の数々。
お願いだからイヴェット、それらに触れないでね。
私達についた侍女もそう思ったらしく、イヴェットと手を繋いでいる。
手を振りほどこうとすると侍女にダメですと言われ、顔を膨らます。かわいくしたって、侍女には通じない。
お菓子がテーブルに並べ慣れれば、イヴェットの関心はそっちに向かい、ソファーに並んで座ってお菓子を食べて待つ。
凄い速さで食べるイヴェットに侍女だけでなく、私も驚いた。
まあ施設では、絶対に見る事がないものだからね。私もお菓子など前世の記憶しかなかったから食べられるとはと感動していた。
あぁ、甘くておいしい。幸せ。
食べるのに飽きたイヴェットが、私に遊ぼうと言い出した。彼女が言う遊びとは走り回る事。
「広いけど、ここで走ったらダメ」
「だってつまんない」
「つまんないって……」
「じゃ、これ貸して」
「ダメ!」
私の胸を指さしイヴェットが言う。私が首から下げているペンダントを貸せと言ってきた。そう言われるのが嫌で、前世の記憶が戻ってからは誰にも見せない様にしていたのに、覚えていたのね。3歳まではたまに貸したりしていたけど、一応形見だから奪われるのが嫌だった。
「ううう」
っげ。泣くつもり?
相手は5歳児。私はそう自分に言い聞かせる。
「ちょっとだけよ」
そう言って渡してしまった。
よく考えれば、私も5歳児だ。でも前世の記憶を思い出してからは、精神年齢がぐーんと上がってしまったんだよね。
この判断が間違いだったと気が付いた時にはすでに遅しだった。
6
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
そして乙女ゲームは始まらなかった
お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。
一体私は何をしたらいいのでしょうか?
使えないと言われ続けた悪役令嬢のその後
有木珠乃
恋愛
アベリア・ハイドフェルド公爵令嬢は「使えない」悪役令嬢である。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したのに、最低限の義務である、王子の婚約者にすらなれなったほどの。
だから簡単に、ヒロインは王子の婚約者の座を得る。
それを見た父、ハイドフェルド公爵は怒り心頭でアベリアを修道院へ行くように命じる。
王子の婚約者にもなれず、断罪やざまぁもされていないのに、修道院!?
けれど、そこには……。
※この作品は小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
悪役令嬢が死んだ後
ぐう
恋愛
王立学園で殺人事件が起きた。
被害者は公爵令嬢 加害者は男爵令嬢
男爵令嬢は王立学園で多くの高位貴族令息を侍らせていたと言う。
公爵令嬢は婚約者の第二王子に常に邪険にされていた。
殺害理由はなんなのか?
視察に訪れていた第一王子の目の前で事件は起きた。第一王子が事件を調査する目的は?
*一話に流血・残虐な表現が有ります。話はわかる様になっていますのでお嫌いな方は二話からお読み下さい。
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
婚約破棄は踊り続ける
お好み焼き
恋愛
聖女が現れたことによりルベデルカ公爵令嬢はルーベルバッハ王太子殿下との婚約を白紙にされた。だがその半年後、ルーベルバッハが訪れてきてこう言った。
「聖女は王太子妃じゃなく神の花嫁となる道を選んだよ。頼むから結婚しておくれよ」
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる