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2話

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 私が前世持ちだと気が付いたのは、三歳の時。イヴェットと喧嘩をしてちょっと頭をぶつけたんだよね。きっとそれまでは、年相応の子だったと思う。前世の記憶を持ってからは、イヴェットと遊ぶのが嫌で放置してた。だって面倒見切れないんだもん。
 私達は、同じ日に施設の敷地内に捨てられていたらしい。
 施設では、出来る事は自分でするのが当たり前。掃除に洗濯、調理も。
 そんなある日、アーロイズ子爵家が来た。

 来たことがない貴族で、何だろうとこっそり覗いてみていると、イヴェットと私が呼ばれる。

 「この二人が、条件に合います」

 施設長がそう言って私達を紹介した。
 紹介された私達を見てアーロイズ子爵は、うーむと困り顔。きっと青色の髪の子という大雑把に言われて来たに違いない。小説ではそうだった。
 自分では判断が付かないと思ったようで、私達二人とも連れていかれる事になる。
 こうして、初めての馬車に乗り込んだ。
 私は嬉しくなかったけど、イヴェットは大喜び。
 前世持ちの私としては、馬車などお尻が痛くなる乗り物として記憶されている。と言っても、乗った事などないけど。思ったより硬くはなかったけど、一時間半も座ればお尻も痛い。

 最初上機嫌だったイヴェットも、施設に帰ると泣き出した。
 アーロイズ子爵がイラついているのが見ていてわかる。
 私達の世話をする為に来た侍女にあやされるイヴェットは、お尻が痛いと言って侍女の上に座った。
 私はと言うと、そんな彼女を放っておいて流れる景色を見ていた。
 施設は、民家より少し離れて建っていて、こんな近くでたくさんの建物を見たのは初めてだ。
 私からするとヨーロッパ風の景色? 行ったことないけど。前世の記憶にある日本の建物ではない。だから見ていて楽しかった。お尻は痛いけど。
 きっと印象は、私は大人しい子。イヴェットは、騒がしい子またはわがままな子かな。
 
 着いたと馬車から降りて屋敷を見て驚いた。大きい。貴族が住む建物だから当たり前なのかもしれないけど。実際に見るとデカいなぁというのが、感想だ。

 「わぁ」とイヴェットは、目をキラキラとさせている。
 私達は、応接室に通された。ここで待つように言われた。
 見た事がない立派なソファーに装飾品の数々。
 お願いだからイヴェット、それらに触れないでね。
 私達についた侍女もそう思ったらしく、イヴェットと手を繋いでいる。
 手を振りほどこうとすると侍女にダメですと言われ、顔を膨らます。かわいくしたって、侍女には通じない。
 お菓子がテーブルに並べ慣れれば、イヴェットの関心はそっちに向かい、ソファーに並んで座ってお菓子を食べて待つ。

 凄い速さで食べるイヴェットに侍女だけでなく、私も驚いた。
 まあ施設では、絶対に見る事がないものだからね。私もお菓子など前世の記憶しかなかったから食べられるとはと感動していた。
 あぁ、甘くておいしい。幸せ。

 食べるのに飽きたイヴェットが、私に遊ぼうと言い出した。彼女が言う遊びとは走り回る事。

 「広いけど、ここで走ったらダメ」
 「だってつまんない」
 「つまんないって……」
 「じゃ、これ貸して」
 「ダメ!」

 私の胸を指さしイヴェットが言う。私が首から下げているペンダントを貸せと言ってきた。そう言われるのが嫌で、前世の記憶が戻ってからは誰にも見せない様にしていたのに、覚えていたのね。3歳まではたまに貸したりしていたけど、一応形見だから奪われるのが嫌だった。

 「ううう」

 っげ。泣くつもり?
 相手は5歳児。私はそう自分に言い聞かせる。

 「ちょっとだけよ」

 そう言って渡してしまった。
 よく考えれば、私も5歳児だ。でも前世の記憶を思い出してからは、精神年齢がぐーんと上がってしまったんだよね。
 この判断が間違いだったと気が付いた時にはすでに遅しだった。
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