36 / 40
第36話 勝負の五分間
しおりを挟む
「うわぁ……」
「「………」」
突風に煽られマイゼンドが流されていくのを驚いて見つめているパーティーナイトのメンバー達。
「本当に連れて行って大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫なはずだ」
魔鉱石の森に行く前の関門の川を越える為、マイゼンドは自分の浮遊で渡った。今まで通り風に煽られナイトのみんなより離れた位置に着地する。それを残念な目で、パーティーナイトのメンバー達は見ていた。
☆持ちと知っているので、何となくがっかりの皆だが、そんな事に気づかないマイゼンドは「すみません」と皆の元に戻る。
「よし、気を取り直し、森へ行くぞ。あ、彼も上げてやってくれ」
彼とは、マイゼンドの事だ。声を掛けられたナイトのメンバーは無言で頷く。
無事森へと着いた。
森の中は静まり返っている。
「やはりモンスターの死体はないか」
モーアンドが言った。
マイゼンドが残して行ったモンスターの死体は、綺麗になくっていた。
(こんな事ならザラに食べさせればよかった)
そんな暇もなかったとは思うが、そういう方法があったとマイゼンドは思っていた。こういう時に、食べに出てこなかったのだ。
「よし、手分けして探すぞ」
二人ずつに分かれ探し出す。
パーティーナイトは、6人組なので3組に分かれた。マイゼンドは、モーアンドと一緒だ。
探し出して直ぐに発見された。
それはそれは大きなオオカミモンスターだ。ゾウより大きい。
「でかすぎだろう」
「しまった。見つかった」
レアモンスターではなく通常モンスターに見つかり、戦闘開始になった。
「マイゼンド、君は逃げまくれ。絶対にモンスターには手を出すな! いいな」
「あ、はい!」
「いいか。レアだけに攻撃しろ。ミュランドアラは、通常モンスターの足止めを頼む」
「はい!」
モーアンドは、次々とメンバーに指示を出していく。通常モンスターは足止めされ、動けない様に魔法をかけ、レアモンスターに集中攻撃。
「「うわぁ!!」」
通常モンスターの足止めは上手くいったものの、レアモンスターの方は苦戦していた。足が速いのだ。攻撃どころではなかった。一瞬で近づかれ前足の一撃で皆吹き飛んでいた! 逃げきれたのは、マイゼンドだけだ。
「っく。素早さがありすぎる……」
傷口を押さえ、モーアンドが言った。
モーアンドがメンバーを見れば、全員吹き飛ばされてはいるが生きている。撤退がいいだろうが、逃げ切れるかどうかと思案する。
「あの、モーアンドさん。動きを止めればいいですか?」
「うん?」
「五分だけなら可能ですけど」
「は? ……わかったやってみてくれ」
「はい!」
頷くと、レアモンスターに近づいて行く。まだある程度近づかないと浮遊を掛けられないのだ。
「おい!?」
まさか近づいて行くとは思っていなかったモーアンドは、驚いて叫ぶ。
「五分しか持ちませんので、早くお願いします!」
近づいていたマイゼンドがピタッと止まるとそう叫んだ。レアモンスターを見れば、足をばたつかせているがその場からは動いていない。
「動ける奴は攻撃を! マルチャードは回復を! 攻撃は魔法攻撃で!」
指示を出すと、攻撃が開始された。
通常モンスターは、ミュランドアラが足止めしていた。その彼は、怪我で立ち上がる事が出来ないでいたが、なぜか一瞬で回復する。
何が起きたかわからないが、マルチャードではないのはわかった。
その不思議な現象は、他のメンバーにも起きていた。勿論リーダーのモーアンドにもだ。手で押さえていた傷口がふさがったようで、痛みがスーッと消えた。
マルチャードも驚いて、おどおどしてモーアンドの側に来た。
「皆の傷が完全回復しています!」
「どうなっている」
どう考えてもマイゼンドだと思われるが、彼を見てもそんな素振りはない。
「今はそんな事を考えている時間はなさそうだな」
もうそろそろ五分経つのだ。
「マルチャード、後は頼んだ」
「はい!」
「死ねぇ! デスアロー!」
モーアンドが、強烈な魔法を放つ。これは、全MPを消費し、更にHPの半分も削られる諸刃の魔法だ。この魔法の凄い所は、魔法防御無視!
ただし一気にMPがなくなるので、必ず昏倒する。
膝を付き魔法を撃ったモーアンドは、崩れ落ちる様に倒れるもマルチャードが支えた。
そして、レアモンスターもどすんと言う音と共に倒れたのだった。
「すげぇ。流石モーアンドさん」
「感心してないで、レアモンスターの回収を!」
「……す、すみません。この大きさだと、俺ではしまえません」
収納係のトーマスが言った。
この大きいのを運ぶのは無理だと皆が頭を抱える。置いて行くわけにもいかない。また次のレアモンスターを生むだけだ。
皆が悩んでいるとは知らずマイゼンドは、ほっと一息をついていた。そして、レアモンスターに近づくザラを発見。
「だめ!」
とっさにレアモンスターを転化空間にしまった。ザラにしまわれたらどうしようもないからだ。
「「はぁ?」」
後ろから驚いた声が聞こえたマイゼンドは、慌ててザラを鞄に隠した。ザラが見えたのかと思ったからだ。そして、そっと振り向く。
皆が、マイゼンドを凝視していたのであった。
「「………」」
突風に煽られマイゼンドが流されていくのを驚いて見つめているパーティーナイトのメンバー達。
「本当に連れて行って大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫なはずだ」
魔鉱石の森に行く前の関門の川を越える為、マイゼンドは自分の浮遊で渡った。今まで通り風に煽られナイトのみんなより離れた位置に着地する。それを残念な目で、パーティーナイトのメンバー達は見ていた。
☆持ちと知っているので、何となくがっかりの皆だが、そんな事に気づかないマイゼンドは「すみません」と皆の元に戻る。
「よし、気を取り直し、森へ行くぞ。あ、彼も上げてやってくれ」
彼とは、マイゼンドの事だ。声を掛けられたナイトのメンバーは無言で頷く。
無事森へと着いた。
森の中は静まり返っている。
「やはりモンスターの死体はないか」
モーアンドが言った。
マイゼンドが残して行ったモンスターの死体は、綺麗になくっていた。
(こんな事ならザラに食べさせればよかった)
そんな暇もなかったとは思うが、そういう方法があったとマイゼンドは思っていた。こういう時に、食べに出てこなかったのだ。
「よし、手分けして探すぞ」
二人ずつに分かれ探し出す。
パーティーナイトは、6人組なので3組に分かれた。マイゼンドは、モーアンドと一緒だ。
探し出して直ぐに発見された。
それはそれは大きなオオカミモンスターだ。ゾウより大きい。
「でかすぎだろう」
「しまった。見つかった」
レアモンスターではなく通常モンスターに見つかり、戦闘開始になった。
「マイゼンド、君は逃げまくれ。絶対にモンスターには手を出すな! いいな」
「あ、はい!」
「いいか。レアだけに攻撃しろ。ミュランドアラは、通常モンスターの足止めを頼む」
「はい!」
モーアンドは、次々とメンバーに指示を出していく。通常モンスターは足止めされ、動けない様に魔法をかけ、レアモンスターに集中攻撃。
「「うわぁ!!」」
通常モンスターの足止めは上手くいったものの、レアモンスターの方は苦戦していた。足が速いのだ。攻撃どころではなかった。一瞬で近づかれ前足の一撃で皆吹き飛んでいた! 逃げきれたのは、マイゼンドだけだ。
「っく。素早さがありすぎる……」
傷口を押さえ、モーアンドが言った。
モーアンドがメンバーを見れば、全員吹き飛ばされてはいるが生きている。撤退がいいだろうが、逃げ切れるかどうかと思案する。
「あの、モーアンドさん。動きを止めればいいですか?」
「うん?」
「五分だけなら可能ですけど」
「は? ……わかったやってみてくれ」
「はい!」
頷くと、レアモンスターに近づいて行く。まだある程度近づかないと浮遊を掛けられないのだ。
「おい!?」
まさか近づいて行くとは思っていなかったモーアンドは、驚いて叫ぶ。
「五分しか持ちませんので、早くお願いします!」
近づいていたマイゼンドがピタッと止まるとそう叫んだ。レアモンスターを見れば、足をばたつかせているがその場からは動いていない。
「動ける奴は攻撃を! マルチャードは回復を! 攻撃は魔法攻撃で!」
指示を出すと、攻撃が開始された。
通常モンスターは、ミュランドアラが足止めしていた。その彼は、怪我で立ち上がる事が出来ないでいたが、なぜか一瞬で回復する。
何が起きたかわからないが、マルチャードではないのはわかった。
その不思議な現象は、他のメンバーにも起きていた。勿論リーダーのモーアンドにもだ。手で押さえていた傷口がふさがったようで、痛みがスーッと消えた。
マルチャードも驚いて、おどおどしてモーアンドの側に来た。
「皆の傷が完全回復しています!」
「どうなっている」
どう考えてもマイゼンドだと思われるが、彼を見てもそんな素振りはない。
「今はそんな事を考えている時間はなさそうだな」
もうそろそろ五分経つのだ。
「マルチャード、後は頼んだ」
「はい!」
「死ねぇ! デスアロー!」
モーアンドが、強烈な魔法を放つ。これは、全MPを消費し、更にHPの半分も削られる諸刃の魔法だ。この魔法の凄い所は、魔法防御無視!
ただし一気にMPがなくなるので、必ず昏倒する。
膝を付き魔法を撃ったモーアンドは、崩れ落ちる様に倒れるもマルチャードが支えた。
そして、レアモンスターもどすんと言う音と共に倒れたのだった。
「すげぇ。流石モーアンドさん」
「感心してないで、レアモンスターの回収を!」
「……す、すみません。この大きさだと、俺ではしまえません」
収納係のトーマスが言った。
この大きいのを運ぶのは無理だと皆が頭を抱える。置いて行くわけにもいかない。また次のレアモンスターを生むだけだ。
皆が悩んでいるとは知らずマイゼンドは、ほっと一息をついていた。そして、レアモンスターに近づくザラを発見。
「だめ!」
とっさにレアモンスターを転化空間にしまった。ザラにしまわれたらどうしようもないからだ。
「「はぁ?」」
後ろから驚いた声が聞こえたマイゼンドは、慌ててザラを鞄に隠した。ザラが見えたのかと思ったからだ。そして、そっと振り向く。
皆が、マイゼンドを凝視していたのであった。
0
お気に入りに追加
561
あなたにおすすめの小説

伯爵家の三男は冒険者を目指す!
おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました!
佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。
彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった...
(...伶奈、ごめん...)
異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。
初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。
誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。
1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

みんながみんな「あの子の方がお似合いだ」というので、婚約の白紙化を提案してみようと思います
下菊みこと
恋愛
ちょっとどころかだいぶ天然の入ったお嬢さんが、なんとか頑張って婚約の白紙化を狙った結果のお話。
御都合主義のハッピーエンドです。
元鞘に戻ります。
ざまぁはうるさい外野に添えるだけ。
小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる