ステータスに攻撃力はありませんが、☆《白星》スキルで乗り切ります

すみ 小桜(sumitan)

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第36話 勝負の五分間

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 「うわぁ……」

 「「………」」

 突風に煽られマイゼンドが流されていくのを驚いて見つめているパーティーナイトのメンバー達。

 「本当に連れて行って大丈夫ですか?」

 「だ、大丈夫なはずだ」

 魔鉱石の森に行く前の関門の川を越える為、マイゼンドは自分の浮遊で渡った。今まで通り風に煽られナイトのみんなより離れた位置に着地する。それを残念な目で、パーティーナイトのメンバー達は見ていた。
 白星持ちと知っているので、何となくがっかりの皆だが、そんな事に気づかないマイゼンドは「すみません」と皆の元に戻る。

 「よし、気を取り直し、森へ行くぞ。あ、彼も上げてやってくれ」

 彼とは、マイゼンドの事だ。声を掛けられたナイトのメンバーは無言で頷く。
 無事森へと着いた。
 森の中は静まり返っている。

 「やはりモンスターの死体はないか」

 モーアンドが言った。

 マイゼンドが残して行ったモンスターの死体は、綺麗になくっていた。

 (こんな事ならザラに食べさせればよかった)

 そんな暇もなかったとは思うが、そういう方法があったとマイゼンドは思っていた。こういう時に、食べに出てこなかったのだ。

 「よし、手分けして探すぞ」

 二人ずつに分かれ探し出す。
 パーティーナイトは、6人組なので3組に分かれた。マイゼンドは、モーアンドと一緒だ。

 探し出して直ぐに発見された。
 それはそれは大きなオオカミモンスターだ。ゾウより大きい。

 「でかすぎだろう」

 「しまった。見つかった」

 レアモンスターではなく通常モンスターに見つかり、戦闘開始になった。

 「マイゼンド、君は逃げまくれ。絶対にモンスターには手を出すな! いいな」

 「あ、はい!」

 「いいか。レアだけに攻撃しろ。ミュランドアラは、通常モンスターの足止めを頼む」

 「はい!」

 モーアンドは、次々とメンバーに指示を出していく。通常モンスターは足止めされ、動けない様に魔法をかけ、レアモンスターに集中攻撃。

 「「うわぁ!!」」

 通常モンスターの足止めは上手くいったものの、レアモンスターの方は苦戦していた。足が速いのだ。攻撃どころではなかった。一瞬で近づかれ前足の一撃で皆吹き飛んでいた! 逃げきれたのは、マイゼンドだけだ。

 「っく。素早さがありすぎる……」

 傷口を押さえ、モーアンドが言った。
 モーアンドがメンバーを見れば、全員吹き飛ばされてはいるが生きている。撤退がいいだろうが、逃げ切れるかどうかと思案する。

 「あの、モーアンドさん。動きを止めればいいですか?」

 「うん?」

 「五分だけなら可能ですけど」

 「は? ……わかったやってみてくれ」

 「はい!」

 頷くと、レアモンスターに近づいて行く。まだある程度近づかないと浮遊を掛けられないのだ。

 「おい!?」

 まさか近づいて行くとは思っていなかったモーアンドは、驚いて叫ぶ。

 「五分しか持ちませんので、早くお願いします!」

 近づいていたマイゼンドがピタッと止まるとそう叫んだ。レアモンスターを見れば、足をばたつかせているがその場からは動いていない。

 「動ける奴は攻撃を! マルチャードは回復を! 攻撃は魔法攻撃で!」

 指示を出すと、攻撃が開始された。

 通常モンスターは、ミュランドアラが足止めしていた。その彼は、怪我で立ち上がる事が出来ないでいたが、なぜか一瞬で回復する。
 何が起きたかわからないが、マルチャードではないのはわかった。

 その不思議な現象は、他のメンバーにも起きていた。勿論リーダーのモーアンドにもだ。手で押さえていた傷口がふさがったようで、痛みがスーッと消えた。
 マルチャードも驚いて、おどおどしてモーアンドの側に来た。

 「皆の傷が完全回復しています!」

 「どうなっている」

 どう考えてもマイゼンドだと思われるが、彼を見てもそんな素振りはない。

 「今はそんな事を考えている時間はなさそうだな」

 もうそろそろ五分経つのだ。

 「マルチャード、後は頼んだ」

 「はい!」

 「死ねぇ! デスアロー!」

 モーアンドが、強烈な魔法を放つ。これは、全MPを消費し、更にHPの半分も削られる諸刃の魔法だ。この魔法の凄い所は、魔法防御無視!
 ただし一気にMPがなくなるので、必ず昏倒する。

 膝を付き魔法を撃ったモーアンドは、崩れ落ちる様に倒れるもマルチャードが支えた。
 そして、レアモンスターもどすんと言う音と共に倒れたのだった。

 「すげぇ。流石モーアンドさん」

 「感心してないで、レアモンスターの回収を!」

 「……す、すみません。この大きさだと、俺ではしまえません」

 収納係のトーマスが言った。
 この大きいのを運ぶのは無理だと皆が頭を抱える。置いて行くわけにもいかない。また次のレアモンスターを生むだけだ。

 皆が悩んでいるとは知らずマイゼンドは、ほっと一息をついていた。そして、レアモンスターに近づくザラを発見。

 「だめ!」

 とっさにレアモンスターを転化空間にしまった。ザラにしまわれたらどうしようもないからだ。

 「「はぁ?」」

 後ろから驚いた声が聞こえたマイゼンドは、慌ててザラを鞄に隠した。ザラが見えたのかと思ったからだ。そして、そっと振り向く。
 皆が、マイゼンドを凝視していたのであった。
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