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第32話 緊急事態が起きました
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森の中は、思ったより静かだ。森の外はあんなに風が強いのに、ここは風が穏やかで地面はごつごつした岩が多く、太い木がまばら育っていた。
外から見ると密林の様に見えていたが、実際は森の周囲になぜか草木が生い茂っていたのだ。
「うーん。どれが魔鉱石だろう? 聞くの忘れちゃった」
借りたリュックを手にマイゼンドは、辺りを見渡した。
「とりあず、魔鉱石と思われる石を入れて行こう!」
すっかり魔鉱石の特徴を聞き忘れていた。
手あたり次第、魔鉱石だと思った石をリュックに入れて行く。
ガルルル……。
唸り声が聞こえマイゼンドが顔を上げると、オオカミの様なモンスターが彼に飛びかかって来ていた!
「うわ!」
驚くも、その攻撃をかわした。
(アーシャリーさんが言った通り、簡単にかわせる)
思ったよりモンスターの攻撃は、速く感じなかった。たぶんモンスターに自分の攻撃は効かないだろうと、攻撃をかわしつつ魔鉱石拾いを続行する。
だが1体だと思って拾っていると、いつの間にか囲まれていた。
「あわわわ……。いつの間にか、いっぱいになっちゃった」
と台詞を言っている間も、モンスターは襲って来る。マイゼンドはそれをひょいとかわす。
かわせるとはいえ、6体も居れば魔鉱石を拾う余裕がない。でも一旦引くにしても、またここに来るのが面倒だった。
「あ、そうだ」
ふとマイゼンドは、数を減らす方法を思いつく。
モンスターが、マイゼンドを追いかけ襲ってきた時に、傍にいたモンスターを鎖鎌を引っ掛け、自分の前に持って来た。盾にしたのだ。
予めそのモンスターに浮遊を掛け動けなくしておき、タイミングを合わせて引き寄せた。それは大成功して、攻撃してきたモンスターに盾にされたモンスターは倒された!
「やった。うまくいった!」
この作戦で次々とモンスターを倒して行く。数が少なくなれば魔鉱石を拾えるので、多くなるとそうやって数を減らしていた。これはこれで、結構楽しかったのだ。自分で倒しているわけではないが、何となく戦っている気分を味わえた。
「だんだんリュックが重くなってきたな……」
モンスターに浮遊を使うので、リュックに浮遊を使えないのだ。半分ぐらいになったので、そろそろ切り上げようかと思った時だった――
ふと見た目の前のモンスターが、むくむくと巨大化していく。
「………」
一瞬何が起きたかわからないマイゼンドだったが、大きくなる=レアモンスターだと思い出した。
「え~~!! なんで? モンスターを食べてないよね?」
確かに食べてはいないが、モンスターを倒していたので経験値がレア化したモンスターに入っていたのだ。勿論そんな事は思いつかないマイゼンドは、とにかく逃げ出した!
走って森からポンと飛び出し、浮遊でゆっくりと……煽られながらも地面に着地する。
「どうしよう。またレアモンスターにしちゃったよ!」
亀のモンスターに続き、2体目だ。モンスターをレア化させた冒険者などそんなにいないだろう。しかも2回目なのだ。
「アーシャリーさん!」
川を渡ったマイゼンドは、泣きそうだった。
「よかった無事だったのね。って、何かあった?」
青ざめた顔のマイゼンドを見て、アーシャリーが聞くと彼は項垂れた。
「また、レアモンスターにしちゃった。どうしよう……」
「うん? レアモンスター? えぇ!! あの森にレアモンスター!? 初めて聞いたわ」
「そうなの? ど、どうしよう……」
「報告しに行くわよ。急がないと! あの森には魔鉱石を取りに行く冒険者しか行かないけど、その人達が強いとは限らないから!」
「え!」
凄く大変な事をしてしまったと、さらにマイゼンドは青ざめる。
(余計な事をしてごめんなさい!)
心の中で謝るマイゼンドは、ひょいとアーシャリーを持ち上げた。
「きゃ。ちょっと何!?」
「急がないといけないから!」
浮遊を掛けられ逃げられないアーシャリーは、傍から見るとお姫様抱っこされて運ばれている様に見える。
「ちょっと待って! これ、恥ずかしいから~」
アーシャリーの悲鳴に似た言葉は、風に乗ってかき消されていった。
□
「シバリさん!」
冒険者協会に入って、ちょうど見つけたシバリにマイゼンドが声を掛けると、彼は振り向き二人を見て驚いた。二人共顔色が真っ青だったのだ。
アーシャリーは、浮遊で浮かされ凄い速さで運ばれたからだが。
「何があった?」
「レアモンスターを作っちゃいました!」
「……うん?」
マイゼンドの意外な言葉に、色々ともめ事を解決してきたシバリも驚いた。
「とりあず、部屋へ」
ふらふらと歩くアーシャリーに、マイゼンドが大丈夫と聞くと軽く頷く彼女だが、今にも倒れそうだ。
部屋の木のイスに座るとアーシャリーは、大きなため息をついた。
「で、一体何がありました?」
「魔鉱石の森でレアモンスターを作っちゃいました! ごめんなさい!」
二人が座る中、立ったままのマイゼンドが深々と頭を下げるも二人は「?」が頭に浮かぶだけだ。まさか言葉通り、マイゼンドがモンスターをレアモンスターにしたなど思いつきもしなかった。
外から見ると密林の様に見えていたが、実際は森の周囲になぜか草木が生い茂っていたのだ。
「うーん。どれが魔鉱石だろう? 聞くの忘れちゃった」
借りたリュックを手にマイゼンドは、辺りを見渡した。
「とりあず、魔鉱石と思われる石を入れて行こう!」
すっかり魔鉱石の特徴を聞き忘れていた。
手あたり次第、魔鉱石だと思った石をリュックに入れて行く。
ガルルル……。
唸り声が聞こえマイゼンドが顔を上げると、オオカミの様なモンスターが彼に飛びかかって来ていた!
「うわ!」
驚くも、その攻撃をかわした。
(アーシャリーさんが言った通り、簡単にかわせる)
思ったよりモンスターの攻撃は、速く感じなかった。たぶんモンスターに自分の攻撃は効かないだろうと、攻撃をかわしつつ魔鉱石拾いを続行する。
だが1体だと思って拾っていると、いつの間にか囲まれていた。
「あわわわ……。いつの間にか、いっぱいになっちゃった」
と台詞を言っている間も、モンスターは襲って来る。マイゼンドはそれをひょいとかわす。
かわせるとはいえ、6体も居れば魔鉱石を拾う余裕がない。でも一旦引くにしても、またここに来るのが面倒だった。
「あ、そうだ」
ふとマイゼンドは、数を減らす方法を思いつく。
モンスターが、マイゼンドを追いかけ襲ってきた時に、傍にいたモンスターを鎖鎌を引っ掛け、自分の前に持って来た。盾にしたのだ。
予めそのモンスターに浮遊を掛け動けなくしておき、タイミングを合わせて引き寄せた。それは大成功して、攻撃してきたモンスターに盾にされたモンスターは倒された!
「やった。うまくいった!」
この作戦で次々とモンスターを倒して行く。数が少なくなれば魔鉱石を拾えるので、多くなるとそうやって数を減らしていた。これはこれで、結構楽しかったのだ。自分で倒しているわけではないが、何となく戦っている気分を味わえた。
「だんだんリュックが重くなってきたな……」
モンスターに浮遊を使うので、リュックに浮遊を使えないのだ。半分ぐらいになったので、そろそろ切り上げようかと思った時だった――
ふと見た目の前のモンスターが、むくむくと巨大化していく。
「………」
一瞬何が起きたかわからないマイゼンドだったが、大きくなる=レアモンスターだと思い出した。
「え~~!! なんで? モンスターを食べてないよね?」
確かに食べてはいないが、モンスターを倒していたので経験値がレア化したモンスターに入っていたのだ。勿論そんな事は思いつかないマイゼンドは、とにかく逃げ出した!
走って森からポンと飛び出し、浮遊でゆっくりと……煽られながらも地面に着地する。
「どうしよう。またレアモンスターにしちゃったよ!」
亀のモンスターに続き、2体目だ。モンスターをレア化させた冒険者などそんなにいないだろう。しかも2回目なのだ。
「アーシャリーさん!」
川を渡ったマイゼンドは、泣きそうだった。
「よかった無事だったのね。って、何かあった?」
青ざめた顔のマイゼンドを見て、アーシャリーが聞くと彼は項垂れた。
「また、レアモンスターにしちゃった。どうしよう……」
「うん? レアモンスター? えぇ!! あの森にレアモンスター!? 初めて聞いたわ」
「そうなの? ど、どうしよう……」
「報告しに行くわよ。急がないと! あの森には魔鉱石を取りに行く冒険者しか行かないけど、その人達が強いとは限らないから!」
「え!」
凄く大変な事をしてしまったと、さらにマイゼンドは青ざめる。
(余計な事をしてごめんなさい!)
心の中で謝るマイゼンドは、ひょいとアーシャリーを持ち上げた。
「きゃ。ちょっと何!?」
「急がないといけないから!」
浮遊を掛けられ逃げられないアーシャリーは、傍から見るとお姫様抱っこされて運ばれている様に見える。
「ちょっと待って! これ、恥ずかしいから~」
アーシャリーの悲鳴に似た言葉は、風に乗ってかき消されていった。
□
「シバリさん!」
冒険者協会に入って、ちょうど見つけたシバリにマイゼンドが声を掛けると、彼は振り向き二人を見て驚いた。二人共顔色が真っ青だったのだ。
アーシャリーは、浮遊で浮かされ凄い速さで運ばれたからだが。
「何があった?」
「レアモンスターを作っちゃいました!」
「……うん?」
マイゼンドの意外な言葉に、色々ともめ事を解決してきたシバリも驚いた。
「とりあず、部屋へ」
ふらふらと歩くアーシャリーに、マイゼンドが大丈夫と聞くと軽く頷く彼女だが、今にも倒れそうだ。
部屋の木のイスに座るとアーシャリーは、大きなため息をついた。
「で、一体何がありました?」
「魔鉱石の森でレアモンスターを作っちゃいました! ごめんなさい!」
二人が座る中、立ったままのマイゼンドが深々と頭を下げるも二人は「?」が頭に浮かぶだけだ。まさか言葉通り、マイゼンドがモンスターをレアモンスターにしたなど思いつきもしなかった。
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