30 / 40
第30話 リュックの探し方
しおりを挟む
「お待たせ! 見つけたよ!」
「マイゼンド! こんな遅くまで今日中でなくてもよかったのに! ありがとう!」
「うん。5つも!」
「5つ!?」
戻ってきたマイゼンドを見て安堵したアーシャリーだが、5つと聞いて全部周ってから言いに来てくれた――30軒以上を走って全部周れたのかと驚いたのだ。
「あなた、本当に凄いわね」
「えっとね、これだよ」
マイゼンドは、転化空間から次々と拾ったリュックを床に置いて行く。
「ちょっと、ここで何やってるの!」
アーシャリーは、隠している異空間を普通に使って驚いた。お店の中には、ちょうど客はいなかったが慌てて止めるも全部出し終わってしまう。
「あ、そっか。森に捨てられていたリュックだもんね。床汚しちゃうよね。ご、ごめんなさい」
「そうじゃなくて、あ、これ! 私のリュック!」
一番ボロボロのリュックをアーシャリーは手に取った。そして、中身を覗く。案の序、食料は抜き取られていた。
「おや……そのリュックは」
「これ、見覚えあるのですか?」
アーシャリーは、この店に来た事がなかった。なので店主がアーシャリーのリュックを見たのは初めてのはずだ。
「たしか今日、魔鉱石を売りに来た男がいてな、手にそれを持っていた。だからうちでは魔鉱石以外は買取はしていませんよっと言ったら、最初からこんなゴミ、売るつもりはないと言っていてな。彼らのリュックはどれも新品ではなかったから、買い替えたわけでもなさそうでちょっと不思議に思ってな。覚えていたんだ」
二人は顔を見合わせた。
証人も一緒に見つけたのだ!
「お願いです。今の話を冒険者協会の人にもう一度言って下さい」
アーシャリーは、そう言って頭を下げた。一緒にマイゼンドも下げる。
「あぁ、いいよ。魔鉱石の買い取りリストならあるから名前もわかる」
「ありがとうございます!」
その後、シバリに言いに行くと凄く驚かれ、すぐに店主の聞き取りの手配をしてくれた。マージ達が、リュックを持っていた事が立証され、彼らの聴取の手配がとられたのだ。
因みに、残りの4つのリュックは、落とし物としてマイゼンドが冒険者協会に渡したのだった。
□
街の外れにランプの明かりが一つ。輝く月と星を見つめ、三人はボアの燻製にかぶりつく。ザラも鞄から出て来たので、マイゼンドがこっそりとあげた。マイゼンドの後ろでもぐもぐと食べている。
結局二人共お金がなく宿に泊まれなかったのだ。マイゼンドに至っては、宿に泊まるという事はまったく考えになかったが。
「なんか凄くお世話になっちゃったわね」
「うん? あ! そうだった。リトーンを探すの忘れてた」
「ごめんね。私のせいよね」
違うとマイゼンドは、首を横に振った。
「ねえマイゼンド。あなた別にその人のパーティーに入る気はないのよね?」
「うん。僕も戦える様になったよって、知らせようと思って。だから急いではいないよ」
本当は、早く教えたいが、今日でなくてはダメというわけではない。
「ねえ。もしよかったら私とパーティーを組まない?」
「え!?」
「別に嫌だったらいいのよ。たぶん私、足手まといだと思うから。ただあなた強いけど、危なっかしいくてね」
マイゼンドは、アーシャリーの言葉に驚いた。足手まといだとマイゼンドに言ったのではなく自分自身と言った事や、戦っていないのに強いとまで言われたからだ。
「あの僕、攻撃力ないし弱いけど?」
「攻撃力だけが全てではないわ。変な話、素早さが低いとダメージを与えられないの。モンスターに攻撃が当たらないからね。装備品や魔法などで補正出来るのって、攻撃力は出来ても素早さは難しいのよ」
「そうなんだ」
そうなると強い事になるのかな? と、マイゼンドは納得する。今回、自分がアーシャリーより凄く速いのがわかった。彼女もそれを知っている。
「でも僕でいいの?」
「何それ……嬉しそうに言って」
マイゼンドはいいのと聞きながら嬉しそうな顔つきだ。おかしくなってアーシャリーは、吹き出した。
「だって。パーティー組むのも夢だったから。入ってはいたけど、リトーンが入れてもらえる様に言ってくれたからなんだよね。でもパーティーとして行動したのって一回ぐらいなんだ」
マイゼンドにしては、パーティー仲間という気はしていなかった。拾う仕事も認めてくれる人がよかったのだ。
「あ、そうだ。拾う仕事も引き受けていいよね?」
「何それ?」
「★なしの仕事だよ」
「え! ★1になったのにランク下の仕事するつもりなの?」
「ダメかぁ……」
マイゼンドは、シュンとしてしまう。アーシャリーなら許してくれると思ったのだ。モンスター退治もするが、拾うスキルも役立てたいと思っていた。
「ダメではないわよ。ただお金にも経験値にもならないから、私から言ったらボランティアみたいなものだから」
「僕には経験値になるんだけどね」
「え? 本当ならある意味凄いわね……」
あんぐりとするアーシャリーだった。
「マイゼンド! こんな遅くまで今日中でなくてもよかったのに! ありがとう!」
「うん。5つも!」
「5つ!?」
戻ってきたマイゼンドを見て安堵したアーシャリーだが、5つと聞いて全部周ってから言いに来てくれた――30軒以上を走って全部周れたのかと驚いたのだ。
「あなた、本当に凄いわね」
「えっとね、これだよ」
マイゼンドは、転化空間から次々と拾ったリュックを床に置いて行く。
「ちょっと、ここで何やってるの!」
アーシャリーは、隠している異空間を普通に使って驚いた。お店の中には、ちょうど客はいなかったが慌てて止めるも全部出し終わってしまう。
「あ、そっか。森に捨てられていたリュックだもんね。床汚しちゃうよね。ご、ごめんなさい」
「そうじゃなくて、あ、これ! 私のリュック!」
一番ボロボロのリュックをアーシャリーは手に取った。そして、中身を覗く。案の序、食料は抜き取られていた。
「おや……そのリュックは」
「これ、見覚えあるのですか?」
アーシャリーは、この店に来た事がなかった。なので店主がアーシャリーのリュックを見たのは初めてのはずだ。
「たしか今日、魔鉱石を売りに来た男がいてな、手にそれを持っていた。だからうちでは魔鉱石以外は買取はしていませんよっと言ったら、最初からこんなゴミ、売るつもりはないと言っていてな。彼らのリュックはどれも新品ではなかったから、買い替えたわけでもなさそうでちょっと不思議に思ってな。覚えていたんだ」
二人は顔を見合わせた。
証人も一緒に見つけたのだ!
「お願いです。今の話を冒険者協会の人にもう一度言って下さい」
アーシャリーは、そう言って頭を下げた。一緒にマイゼンドも下げる。
「あぁ、いいよ。魔鉱石の買い取りリストならあるから名前もわかる」
「ありがとうございます!」
その後、シバリに言いに行くと凄く驚かれ、すぐに店主の聞き取りの手配をしてくれた。マージ達が、リュックを持っていた事が立証され、彼らの聴取の手配がとられたのだ。
因みに、残りの4つのリュックは、落とし物としてマイゼンドが冒険者協会に渡したのだった。
□
街の外れにランプの明かりが一つ。輝く月と星を見つめ、三人はボアの燻製にかぶりつく。ザラも鞄から出て来たので、マイゼンドがこっそりとあげた。マイゼンドの後ろでもぐもぐと食べている。
結局二人共お金がなく宿に泊まれなかったのだ。マイゼンドに至っては、宿に泊まるという事はまったく考えになかったが。
「なんか凄くお世話になっちゃったわね」
「うん? あ! そうだった。リトーンを探すの忘れてた」
「ごめんね。私のせいよね」
違うとマイゼンドは、首を横に振った。
「ねえマイゼンド。あなた別にその人のパーティーに入る気はないのよね?」
「うん。僕も戦える様になったよって、知らせようと思って。だから急いではいないよ」
本当は、早く教えたいが、今日でなくてはダメというわけではない。
「ねえ。もしよかったら私とパーティーを組まない?」
「え!?」
「別に嫌だったらいいのよ。たぶん私、足手まといだと思うから。ただあなた強いけど、危なっかしいくてね」
マイゼンドは、アーシャリーの言葉に驚いた。足手まといだとマイゼンドに言ったのではなく自分自身と言った事や、戦っていないのに強いとまで言われたからだ。
「あの僕、攻撃力ないし弱いけど?」
「攻撃力だけが全てではないわ。変な話、素早さが低いとダメージを与えられないの。モンスターに攻撃が当たらないからね。装備品や魔法などで補正出来るのって、攻撃力は出来ても素早さは難しいのよ」
「そうなんだ」
そうなると強い事になるのかな? と、マイゼンドは納得する。今回、自分がアーシャリーより凄く速いのがわかった。彼女もそれを知っている。
「でも僕でいいの?」
「何それ……嬉しそうに言って」
マイゼンドはいいのと聞きながら嬉しそうな顔つきだ。おかしくなってアーシャリーは、吹き出した。
「だって。パーティー組むのも夢だったから。入ってはいたけど、リトーンが入れてもらえる様に言ってくれたからなんだよね。でもパーティーとして行動したのって一回ぐらいなんだ」
マイゼンドにしては、パーティー仲間という気はしていなかった。拾う仕事も認めてくれる人がよかったのだ。
「あ、そうだ。拾う仕事も引き受けていいよね?」
「何それ?」
「★なしの仕事だよ」
「え! ★1になったのにランク下の仕事するつもりなの?」
「ダメかぁ……」
マイゼンドは、シュンとしてしまう。アーシャリーなら許してくれると思ったのだ。モンスター退治もするが、拾うスキルも役立てたいと思っていた。
「ダメではないわよ。ただお金にも経験値にもならないから、私から言ったらボランティアみたいなものだから」
「僕には経験値になるんだけどね」
「え? 本当ならある意味凄いわね……」
あんぐりとするアーシャリーだった。
0
お気に入りに追加
561
あなたにおすすめの小説

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜
西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」
主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。
生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。
その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。
だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。
しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。
そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。
これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。
※かなり冗長です。
説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

伯爵家の三男は冒険者を目指す!
おとうふ
ファンタジー
2024年8月、更新再開しました!
佐藤良太はとある高校に通う極普通の高校生である。いつものように彼女の伶奈と一緒に歩いて下校していたところ、信号無視のトラックが猛スピードで突っ込んで来るのが見えた。良太は咄嗟に彼女を突き飛ばしたが、彼は迫り来るトラックを前に為すすべも無く、あっけなくこの世を去った。
彼が最後に見たものは、驚愕した表情で自分を見る彼女と、完全にキメているとしか思えない、トラックの運転手の異常な目だった...
(...伶奈、ごめん...)
異世界に転生した良太は、とりあえず父の勧める通りに冒険者を目指すこととなる。学校での出会いや、地球では体験したことのない様々な出来事が彼を待っている。
初めて投稿する作品ですので、温かい目で見ていただければ幸いです。
誤字・脱字やおかしな表現や展開など、指摘があれば遠慮なくお願い致します。
1話1話はとても短くなっていますので、サクサク読めるかなと思います。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

みんながみんな「あの子の方がお似合いだ」というので、婚約の白紙化を提案してみようと思います
下菊みこと
恋愛
ちょっとどころかだいぶ天然の入ったお嬢さんが、なんとか頑張って婚約の白紙化を狙った結果のお話。
御都合主義のハッピーエンドです。
元鞘に戻ります。
ざまぁはうるさい外野に添えるだけ。
小説家になろう様でも投稿しています。


【完結】聖女ディアの処刑
大盛★無料
ファンタジー
平民のディアは、聖女の力を持っていた。
枯れた草木を蘇らせ、結界を張って魔獣を防ぎ、人々の病や傷を癒し、教会で朝から晩まで働いていた。
「怪我をしても、鍛錬しなくても、きちんと作物を育てなくても大丈夫。あの平民の聖女がなんとかしてくれる」
聖女に助けてもらうのが当たり前になり、みんな感謝を忘れていく。「ありがとう」の一言さえもらえないのに、無垢で心優しいディアは奇跡を起こし続ける。
そんななか、イルミテラという公爵令嬢に、聖女の印が現れた。
ディアは偽物と糾弾され、国民の前で処刑されることになるのだが――
※ざまあちょっぴり!←ちょっぴりじゃなくなってきました(;´・ω・)
※サクッとかる~くお楽しみくださいませ!(*´ω`*)←ちょっと重くなってきました(;´・ω・)
★追記
※残酷なシーンがちょっぴりありますが、週刊少年ジャンプレベルなので特に年齢制限は設けておりません。
※乳児が地面に落っこちる、運河の氾濫など災害の描写が数行あります。ご留意くださいませ。
※ちょこちょこ書き直しています。セリフをカッコ良くしたり、状況を補足したりする程度なので、本筋には大きく影響なくお楽しみ頂けると思います。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる