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第28話 パーティーの届け出は重要です
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「ご、ごめんね。嫌な思いさせて……」
アーシャリーは、涙を拭きつつ言った。
「なんでアーシャリーさんが謝るの? 悪いのはあの人達だよね? アーシャリーさんの荷物勝手に処分しちゃったんでしょ?」
「ありがとう。元気が出たわ」
アーシャリーは、マイゼンドの言葉が嬉しかった。彼は裏表がない。本当にそう思っていってくれているとわかっているからだ。
「目立っちゃたわね。冒険者協会へ行きましょう」
「うん」
何事かと見られていた。まだすぐに彼らが去ったので野次馬が集まる事はなかったが、ここで言い合いをすれば集まって来ただろう。それが嫌なので、彼らはさっさと去ったのだ。
二人は、冒険者協会を目指し歩き出す。
「荷物って取り返せないの?」
「どこに売ったかわからないからね。荷物自体二束三文にしかならないわ。たぶん魔鉱石を売る時に、邪魔だから一緒に買い取ってもらったんだと思う」
「なるほど。それにしても酷いよね。仲間なのに」
「仲間と言っても所詮他人だからね。結構トラブルは多いのよ。長く一緒に居れば信頼関係が出来るだろうけど。それに魔鉱石を取りに行くという、即席パーティーだったからね」
「へえ。そういうもんなんだ」
「ここよ」
マイゼンドは、建物を見上げた。大きさが全然違うのだ。
アーシャリーの後を見失わない様についていく。驚く事に、中は凄く広いスペースになっていた。そこに冒険者がいっぱいだ。
「あの、すみません。パーティーの事で相談があるのですが」
「では、こちらへどうぞ」
受付の人に話しかけると二人は、小さな部屋へと通される。ここで話を聞くのだ。
二人は、木の長椅子に座った。
暫くすると、髭を生やしたごつい男が入って来た。
「俺は、シバリだ。話を聞く前に、君達の身元確認をしたい。ステータスの提示をお願いします」
「はい」
ステータスとは、冒険者の神からステータスを賜った時に、手にするステータスが記されたカードだ。なのでレベル1の時のステータスになる。
「アーシャリーさんとマイゼンドさんね。で、どのような事でしょうか」
「実は、三日前からパーティーを組んで魔鉱石を取りに森に行っていたのですが、その森でモンスターの攻撃に遭い森の外へと飛ばされたんです。ちょうど彼がそばに居て、私は助かりました。彼が、この街に行きたいと言うので、救援隊を待たずに街に来たのですが、街の出入り口でパーティーの仲間に出くわしたのです。そうしたら私の分の魔鉱石も荷物も売り払ったって言って、逃げて行ったのです。しかも救援隊の手配さえしてないって言われて……」
「なるほど。それは酷いですね。パーティーの届け出は?」
「してません。魔鉱石を取りに行くだけのパーティーだったので。ステータスの確認をしただけです」
パーティーの届け出をしないのは別に違反ではない。今回の様に依頼を受けるわけではなく、自分達で使う分のアイテムなどを取りに行く時は必要はない。ただ届け出をしないと、証拠がないのだ。
「そうですか。あなたの鞄が見つかればいいのですが。こちらもそれがないと、動けないですね」
「ですよね……」
アーシャリーは、わかっていたとはいえその言葉にシュンとしてしまう。こういうトラブルを避ける為にもパーティーを組む時は、届け出を出す事が推奨されている。
「あの、相手の人には、話を聞かないんですか? 確かマージさんって言うはずなんですけど」
マイゼンドがそう聞くと、うむとシバリが頷いた。
「その者を探し出せればいいが、証拠がないのでこちらでは人の手配が出来ないのです。変な話、彼女が遺体として発見されれば、パーティーを組んでいたのか調べ、パーティーを組んでいたとわかれば、その者達から事情を聞く事も出来るのですが、基本的に自己責任となっています。せめてパーティーを組んでいたという届け出さえ出ていれば、今回の事を問えるのですがね」
「仕方がないわよ。こういうリスクがあるってわかっていて、どうせ4、5日だからと届け出を出さなかったんだから」
「でも救援隊も呼ばないなんてひどくない?」
「彼らも本当に私が生きているとは思ってなかったのでしょうね。思っていれば、救援隊を呼んだでしょう。救援隊も後でお金を請求されるのよ。だから、救援隊を要請して私が死んでいた場合は、彼らだけでそのお金を払わなければならいのよ」
「え? だから放置したの?」
「そういう事にならない為に届け出を出して頂けるとこちらも助かります。冒険者は命を掛けて、モンスターを退治する仕事です。その使命を我々は授かったのです。ですが中には、それよりも私利私欲に走る者もいる。彼らがそうとは限らないが、救援隊を呼ばなかったのは、彼女の命よりもお金を取ったという事でしょうな」
「ならなんで」
「こうなるかもしれないからパーティーの届け出を出して下さいとこちらもお願いしています。出してあれば、救援隊を呼ばなかった事に対して罰せます。パーティーを組んでいたという証拠がありますからね」
「だったらアーシャリーさんの荷物を探し出せば、パーティーを組んでいた証拠になるんだよね?」
「そうでですね……」
「だったら僕、探し出します!」
がばっと立ち上がって、マイゼンドは断言した。
「探すと言っても……」
アーシャリーはその気持ちは嬉しいと思うが、売ったのかさえわからないのだ。捨てたかもしれない。
「大丈夫です! 僕、拾うのスキルを持ってますから!」
と、自信満々に言うマイゼンドだった。
アーシャリーは、涙を拭きつつ言った。
「なんでアーシャリーさんが謝るの? 悪いのはあの人達だよね? アーシャリーさんの荷物勝手に処分しちゃったんでしょ?」
「ありがとう。元気が出たわ」
アーシャリーは、マイゼンドの言葉が嬉しかった。彼は裏表がない。本当にそう思っていってくれているとわかっているからだ。
「目立っちゃたわね。冒険者協会へ行きましょう」
「うん」
何事かと見られていた。まだすぐに彼らが去ったので野次馬が集まる事はなかったが、ここで言い合いをすれば集まって来ただろう。それが嫌なので、彼らはさっさと去ったのだ。
二人は、冒険者協会を目指し歩き出す。
「荷物って取り返せないの?」
「どこに売ったかわからないからね。荷物自体二束三文にしかならないわ。たぶん魔鉱石を売る時に、邪魔だから一緒に買い取ってもらったんだと思う」
「なるほど。それにしても酷いよね。仲間なのに」
「仲間と言っても所詮他人だからね。結構トラブルは多いのよ。長く一緒に居れば信頼関係が出来るだろうけど。それに魔鉱石を取りに行くという、即席パーティーだったからね」
「へえ。そういうもんなんだ」
「ここよ」
マイゼンドは、建物を見上げた。大きさが全然違うのだ。
アーシャリーの後を見失わない様についていく。驚く事に、中は凄く広いスペースになっていた。そこに冒険者がいっぱいだ。
「あの、すみません。パーティーの事で相談があるのですが」
「では、こちらへどうぞ」
受付の人に話しかけると二人は、小さな部屋へと通される。ここで話を聞くのだ。
二人は、木の長椅子に座った。
暫くすると、髭を生やしたごつい男が入って来た。
「俺は、シバリだ。話を聞く前に、君達の身元確認をしたい。ステータスの提示をお願いします」
「はい」
ステータスとは、冒険者の神からステータスを賜った時に、手にするステータスが記されたカードだ。なのでレベル1の時のステータスになる。
「アーシャリーさんとマイゼンドさんね。で、どのような事でしょうか」
「実は、三日前からパーティーを組んで魔鉱石を取りに森に行っていたのですが、その森でモンスターの攻撃に遭い森の外へと飛ばされたんです。ちょうど彼がそばに居て、私は助かりました。彼が、この街に行きたいと言うので、救援隊を待たずに街に来たのですが、街の出入り口でパーティーの仲間に出くわしたのです。そうしたら私の分の魔鉱石も荷物も売り払ったって言って、逃げて行ったのです。しかも救援隊の手配さえしてないって言われて……」
「なるほど。それは酷いですね。パーティーの届け出は?」
「してません。魔鉱石を取りに行くだけのパーティーだったので。ステータスの確認をしただけです」
パーティーの届け出をしないのは別に違反ではない。今回の様に依頼を受けるわけではなく、自分達で使う分のアイテムなどを取りに行く時は必要はない。ただ届け出をしないと、証拠がないのだ。
「そうですか。あなたの鞄が見つかればいいのですが。こちらもそれがないと、動けないですね」
「ですよね……」
アーシャリーは、わかっていたとはいえその言葉にシュンとしてしまう。こういうトラブルを避ける為にもパーティーを組む時は、届け出を出す事が推奨されている。
「あの、相手の人には、話を聞かないんですか? 確かマージさんって言うはずなんですけど」
マイゼンドがそう聞くと、うむとシバリが頷いた。
「その者を探し出せればいいが、証拠がないのでこちらでは人の手配が出来ないのです。変な話、彼女が遺体として発見されれば、パーティーを組んでいたのか調べ、パーティーを組んでいたとわかれば、その者達から事情を聞く事も出来るのですが、基本的に自己責任となっています。せめてパーティーを組んでいたという届け出さえ出ていれば、今回の事を問えるのですがね」
「仕方がないわよ。こういうリスクがあるってわかっていて、どうせ4、5日だからと届け出を出さなかったんだから」
「でも救援隊も呼ばないなんてひどくない?」
「彼らも本当に私が生きているとは思ってなかったのでしょうね。思っていれば、救援隊を呼んだでしょう。救援隊も後でお金を請求されるのよ。だから、救援隊を要請して私が死んでいた場合は、彼らだけでそのお金を払わなければならいのよ」
「え? だから放置したの?」
「そういう事にならない為に届け出を出して頂けるとこちらも助かります。冒険者は命を掛けて、モンスターを退治する仕事です。その使命を我々は授かったのです。ですが中には、それよりも私利私欲に走る者もいる。彼らがそうとは限らないが、救援隊を呼ばなかったのは、彼女の命よりもお金を取ったという事でしょうな」
「ならなんで」
「こうなるかもしれないからパーティーの届け出を出して下さいとこちらもお願いしています。出してあれば、救援隊を呼ばなかった事に対して罰せます。パーティーを組んでいたという証拠がありますからね」
「だったらアーシャリーさんの荷物を探し出せば、パーティーを組んでいた証拠になるんだよね?」
「そうでですね……」
「だったら僕、探し出します!」
がばっと立ち上がって、マイゼンドは断言した。
「探すと言っても……」
アーシャリーはその気持ちは嬉しいと思うが、売ったのかさえわからないのだ。捨てたかもしれない。
「大丈夫です! 僕、拾うのスキルを持ってますから!」
と、自信満々に言うマイゼンドだった。
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