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第27話 舞い戻ってみると
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アーシャリーは、とりあえず今はパーティーの仲間と合流する事が先決だと、詳しくは聞かずにトンネル内に入った。
広くはないトンネルだが、馬車一台は通れる広さはある。一応、倒れた者を助け出す為に作ったトンネルだからだ。
走って30分で出口だった。
「会わなかったね」
アーシャリーの仲間が向かっていればトンネル内で出会っていないとおかしい。
「救援隊を呼んだのかもね。私達のパーティーには回復魔法を扱える者がいないからね」
「そういうもんなんだ」
「ところで聞くけど、私を向こう岸に渡せる?」
「え!?」
マイゼンドは、仲間に出会えなかったという事は自分がアーシャリーを向こう岸へ運ばなくてはいけない事に気がついた。
今まで浮遊をかけて移動した事はあるが、どれも手で押していたのだ。飛ばしたわけではない。
「あ、そっか。助走をつけてジャンプしてくれれば、浮遊させて移動する事が出来ると思うけど、ただ……五分間だけなんだよね。浮かせられるの」
「そ、そう……」
マイゼンドから心許ない返事が返って来て、アーシャリーは不安になるも渡る方法はそれしかない。
恐怖心はあるが、助走をつけてジャンプする。
アーシャリーは、ふわりと浮いて横に飛ばされた!
「きゃー!」
「わー。ごめんなさい! 頑張れ~」
何を頑張ればいいのよ! と叫びたくなるほどアーシャリーは風に煽られ斜めに進んだ。何とか向こう岸までたどり着いた彼女は、川辺に座り込んでいる。
「行きます!」
次は自分の番だと、マイゼンドも助走をつけてジャンプ。みごと、風に煽られアーシャリー同様斜めに進んだ。
「あぁ、酷い目にあった」
「それ、私の台詞じゃないかな?」
川辺に降りたマイゼンドが、四つん這いになって言ったのを聞きつけ、アーシャリーが言う。
「あ、ごめんなさい」
「別に責めてないわよ。でも浮遊の魔法のレベルが違うと、こうも違うものなのね……」
今回の事で、また浮遊のスキル上げをやろうと心に誓うマイゼンドだった。
□
トグリップ街は、魔鉱石の森がある近くにある街だ。あの大きな川が街から見える場所にある。二人は、走って街へと向かう。
その時にマイゼンドは思った。いつも走っているスピードよりかなり遅いのだ。他人と走った事なんてしばらくなかったマイゼンドは、自分が凄く速くなっている事に本当に驚いていた。
走っていれば彼らに追いつくと思っていたアーシャリーだったが、よく考えれば救援隊を呼びに行ったのなら走って戻っているはずだ。しかも二人は、トンネルを抜けて来ている分、時間を食っている。
「このままだと救援隊と行き違いになる可能性があるわね」
パーティーの仲間は、アーシャリーを知っているので気がつくが、救援隊だと本人とすれ違っても気づかないだろう。レベル差があるので、救援隊だと発見できてもアーシャリーでは追いつけないのだ。
「残っていればよかったかしら?」
「うん? 何?」
「ううん。街に着いたら冒険者協会に向かいましょう」
「うん」
マイゼンドはわかったと頷く。
川を渡ってからずっと走り続けて一時間ほどで、街に到着した。
アーシャリーは、自分の速さについて来たマイゼンドをやはりただ者ではないと思っていた。
「あれ? マージ」
「うん? 誰?」
アーシャリーが街の出入り口付近にいる冒険者達を見て呟いた。
マイゼンドが質問をするも答えずに、そっちに走って行く。
「マージ!」
アーシャリーが名を呼ぶと、冒険者の一人が振り返った。大きな荷物を背負い、大きな剣を下げた男性だ。
マージは振り返りアーシャリーを見た途端、固まりおののいた。
「お前、生きていたのか……」
そうマージに返されたアーシャリーも三人を見て驚いていた。軽やかに笑っていたのだ。仲間が死んだかも知れないという状況には見えなかった。なので、今の台詞は、「生きていてよかった」とは聞こえない。
「彼のお蔭で助かったわ」
「そ、そっか」
「救援隊は?」
「救援隊? 頼んでない」
「え? それって見捨てたって事?」
マージの台詞に、更にアーシャリーは驚いた。
「いや、だって、生きていると思わなかったから……」
そう目を泳がしマージは答える。
「そう、よくわかったわ! 私の荷物返してもらえる?」
「……ねぇよ」
「え?」
「だからないって! 死んだと思ったから処分した!」
「何それ! 生死も確認せずパーティー仲間の装備品を勝手に処分したの? もしかしたらこうやって帰って来るかもしれないのに、一瞬も待たずに? もう処分したって事は、戻ってすぐに売ったって事だよね? 魔鉱石は? 昨日の分までの集めた私の分!」
「あるわけないだろう?」
「何よそれ!」
「おい、行くぞ」
パーティーに声をかけマージがアーシャリーに背を向けた。
「訴えてやるからね!」
逃げるように去る三人に、泣きながらアーシャリーが叫ぶ。
マイゼンドは、何が起きたかよくわからないが、荷物が全部なくなったのだけは理解したのだった。
広くはないトンネルだが、馬車一台は通れる広さはある。一応、倒れた者を助け出す為に作ったトンネルだからだ。
走って30分で出口だった。
「会わなかったね」
アーシャリーの仲間が向かっていればトンネル内で出会っていないとおかしい。
「救援隊を呼んだのかもね。私達のパーティーには回復魔法を扱える者がいないからね」
「そういうもんなんだ」
「ところで聞くけど、私を向こう岸に渡せる?」
「え!?」
マイゼンドは、仲間に出会えなかったという事は自分がアーシャリーを向こう岸へ運ばなくてはいけない事に気がついた。
今まで浮遊をかけて移動した事はあるが、どれも手で押していたのだ。飛ばしたわけではない。
「あ、そっか。助走をつけてジャンプしてくれれば、浮遊させて移動する事が出来ると思うけど、ただ……五分間だけなんだよね。浮かせられるの」
「そ、そう……」
マイゼンドから心許ない返事が返って来て、アーシャリーは不安になるも渡る方法はそれしかない。
恐怖心はあるが、助走をつけてジャンプする。
アーシャリーは、ふわりと浮いて横に飛ばされた!
「きゃー!」
「わー。ごめんなさい! 頑張れ~」
何を頑張ればいいのよ! と叫びたくなるほどアーシャリーは風に煽られ斜めに進んだ。何とか向こう岸までたどり着いた彼女は、川辺に座り込んでいる。
「行きます!」
次は自分の番だと、マイゼンドも助走をつけてジャンプ。みごと、風に煽られアーシャリー同様斜めに進んだ。
「あぁ、酷い目にあった」
「それ、私の台詞じゃないかな?」
川辺に降りたマイゼンドが、四つん這いになって言ったのを聞きつけ、アーシャリーが言う。
「あ、ごめんなさい」
「別に責めてないわよ。でも浮遊の魔法のレベルが違うと、こうも違うものなのね……」
今回の事で、また浮遊のスキル上げをやろうと心に誓うマイゼンドだった。
□
トグリップ街は、魔鉱石の森がある近くにある街だ。あの大きな川が街から見える場所にある。二人は、走って街へと向かう。
その時にマイゼンドは思った。いつも走っているスピードよりかなり遅いのだ。他人と走った事なんてしばらくなかったマイゼンドは、自分が凄く速くなっている事に本当に驚いていた。
走っていれば彼らに追いつくと思っていたアーシャリーだったが、よく考えれば救援隊を呼びに行ったのなら走って戻っているはずだ。しかも二人は、トンネルを抜けて来ている分、時間を食っている。
「このままだと救援隊と行き違いになる可能性があるわね」
パーティーの仲間は、アーシャリーを知っているので気がつくが、救援隊だと本人とすれ違っても気づかないだろう。レベル差があるので、救援隊だと発見できてもアーシャリーでは追いつけないのだ。
「残っていればよかったかしら?」
「うん? 何?」
「ううん。街に着いたら冒険者協会に向かいましょう」
「うん」
マイゼンドはわかったと頷く。
川を渡ってからずっと走り続けて一時間ほどで、街に到着した。
アーシャリーは、自分の速さについて来たマイゼンドをやはりただ者ではないと思っていた。
「あれ? マージ」
「うん? 誰?」
アーシャリーが街の出入り口付近にいる冒険者達を見て呟いた。
マイゼンドが質問をするも答えずに、そっちに走って行く。
「マージ!」
アーシャリーが名を呼ぶと、冒険者の一人が振り返った。大きな荷物を背負い、大きな剣を下げた男性だ。
マージは振り返りアーシャリーを見た途端、固まりおののいた。
「お前、生きていたのか……」
そうマージに返されたアーシャリーも三人を見て驚いていた。軽やかに笑っていたのだ。仲間が死んだかも知れないという状況には見えなかった。なので、今の台詞は、「生きていてよかった」とは聞こえない。
「彼のお蔭で助かったわ」
「そ、そっか」
「救援隊は?」
「救援隊? 頼んでない」
「え? それって見捨てたって事?」
マージの台詞に、更にアーシャリーは驚いた。
「いや、だって、生きていると思わなかったから……」
そう目を泳がしマージは答える。
「そう、よくわかったわ! 私の荷物返してもらえる?」
「……ねぇよ」
「え?」
「だからないって! 死んだと思ったから処分した!」
「何それ! 生死も確認せずパーティー仲間の装備品を勝手に処分したの? もしかしたらこうやって帰って来るかもしれないのに、一瞬も待たずに? もう処分したって事は、戻ってすぐに売ったって事だよね? 魔鉱石は? 昨日の分までの集めた私の分!」
「あるわけないだろう?」
「何よそれ!」
「おい、行くぞ」
パーティーに声をかけマージがアーシャリーに背を向けた。
「訴えてやるからね!」
逃げるように去る三人に、泣きながらアーシャリーが叫ぶ。
マイゼンドは、何が起きたかよくわからないが、荷物が全部なくなったのだけは理解したのだった。
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