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第26話 驚きの連続のアーシャリー
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「あの、アーシャリーさんはこれからどうするんですか? 出来れば一緒にトグリップ街まで案内して欲しいけど、仲間を待ちます?」
「待つと言ったらどうするの?」
「トンネルの場所を聞いて、そこから向こう側に行こうと思います」
マイゼンドは、アーシャリーを残して行く事にすまなそうに言った。怪我をしているなら一緒にいるが、怪我が治ったと言っていたし自分より強いなら問題ないだろうと、思ったからだ。
この森を抜けようと思ったのは、トグリップ街に早く行く為だ。なので迎えに来るなら置いて行こうと思った。
「一緒に行くわ。向こうも来るにしてもトンネルを通ってくるのだから。そして一旦、トグリップに戻ると思うわ。一緒に行きましょう」
「ありがとうございます」
マイゼンドは、ぺこりと頭を下げた。
「これぐらいのお礼はさせて。じゃ行きましょうか」
「うん」
二人がテントの中から出ると、川の流れる音が大きくなり強い風が体を押す。
「あいかわらず凄い風よね」
「うん」
川を見つめつつアーシャリーが言った。マイゼンドは、相づちを打ちながら見られないうちにと、転化空間にテントをしまう。
「トンネルの場所は……テントは!?」
マイゼンドに話しかけながら振り返ったアーシャリーは、テントが忽然と消えているのに驚いた。
「しまったよ」
「どこに?」
「……あ!」
聞かれてマイゼンドは、見られない様に転化空間にしまったとしても消えてなくなれば、同じ事だと気がつきどうしようと固まる。
「あなた、無自覚なのね……。別に誰にも言わないわよ。しかし、異空間も持っていたなんてね……」
「あ、ありがとう。言わない方がいいと言われていたから」
「私もそう思うわ。きっと利用されるのがおちよ。街に行ったら早めに知り合いにあった方がいいわよ」
「うん。いればいいな」
戦える様になったと早く教えたいと、楽しみにしているのだ。
二人は、小走りに移動を始める。トンネルはすぐ近くにあった。中を覗くと真っ暗だ。
「ねえ、ランプってある? 私、荷物は預けてあるのよ」
アーシャリーが所属するパーティーは、留守番の浮遊持ちが荷物番をしていたので、荷物を川辺に置いて森の中へ入っていた。なのでランプなど持っていない。
「うん。あるよ」
頷いてそう言うとマイゼンドは、転化空間から袋を取り出した。テントの中に置いてあったランプはここに入れたのだ。
わかっていても目の前で袋をポンとだされ、アーシャリーは驚く。
それに彼はなぜ、どこのパーティーにも入っていないのかも不思議だった。弱くても彼女のパーティーの様に、戦闘に加わらなくても一緒に行動出来るのだ。浮遊だけではなく、異空間持ちならなおさらだ。
「はい、ランプ」
「ねえ、あなたはなぜ、その知り合いと一緒にパーティーに入ってないの? その人がトグリップに居るならパーティーに所属しているでしょう?」
ソロで活動する者は少ない。ましてレベルが低いうちは、ソロで行動するなら☆スキルか魔法を持っている者だ。それでも稀だった。
「あ、うん。初めはパーティーに入っていたんだけど僕、レベルが中々上がらなくてパーティーランクを上げたいから抜けてって言われて……」
「待って、それってEランクに上げるのにって事?」
マイゼンドはそうだと頷いた。
レベル11には、モンスターを退治して居ればすぐに上がる。大抵は、ランクを上げても少しはその場にとどまるものだ。だけど、彼がレベルを上がるのを待たずに、トグリップ街に出てきた事になる。
高ランクを目指すパーティーだったようだ。
「実は僕、攻撃力のパラメータを持っていなくって……」
「え!?」
アーシャリーは、マイゼンドの今の言葉に一番驚いた。そして納得もした。
彼が置いて行かれたのは、待っていてもレベルが上がらないだろうと思われたからだ。
マイゼンドは、浮遊と異空間の二つを持っているが、この二つは10レベル以上で覚えたのだろう。でなければ、攻撃力がなくても仲間から外さないはずだ。パーティー内に、他に同じスキルか魔法を持っていれば別だが、二つとも獲得しづらいスキルと魔法なのだ。
「そのパーティーリーダーもバカね。10レベルまで待てば浮遊か異空間を覚えて、パーティーには欠かせないメンバーになったのにね」
「……あ、10レベルでは覚えてないよ」
「え? そうだわ。あなた、本当はレベルいくつなの?」
「うーんと……もうわかんなくなっちゃった」
アーシャリーは、キョトンとする。レベルがわからない事などないからだ。もしかして、ステータスの見方を知らないとか?
あり得そうだが、さすがに周りが教えてくれるだろうとアーシャリーは思う。これは、知り合いに会って聞いてみないとと思うが、ふとある事に気がついた。
「同じパーティーに会いに行く知り合いも所属していたのよね?」
「うん」
「置いて行かれたのに会いに行くの? もう一度仲間に入れてもらう気?」
「会いには行くけどパーティーには入る気はないよ。モンスターと戦える様になったけど、僕と感覚が違うみたいなんだよね。戦闘以外でレベル上げるのをよしとしないというか……」
またもや言っている意味がよくわからないアーシャリーだった。
「待つと言ったらどうするの?」
「トンネルの場所を聞いて、そこから向こう側に行こうと思います」
マイゼンドは、アーシャリーを残して行く事にすまなそうに言った。怪我をしているなら一緒にいるが、怪我が治ったと言っていたし自分より強いなら問題ないだろうと、思ったからだ。
この森を抜けようと思ったのは、トグリップ街に早く行く為だ。なので迎えに来るなら置いて行こうと思った。
「一緒に行くわ。向こうも来るにしてもトンネルを通ってくるのだから。そして一旦、トグリップに戻ると思うわ。一緒に行きましょう」
「ありがとうございます」
マイゼンドは、ぺこりと頭を下げた。
「これぐらいのお礼はさせて。じゃ行きましょうか」
「うん」
二人がテントの中から出ると、川の流れる音が大きくなり強い風が体を押す。
「あいかわらず凄い風よね」
「うん」
川を見つめつつアーシャリーが言った。マイゼンドは、相づちを打ちながら見られないうちにと、転化空間にテントをしまう。
「トンネルの場所は……テントは!?」
マイゼンドに話しかけながら振り返ったアーシャリーは、テントが忽然と消えているのに驚いた。
「しまったよ」
「どこに?」
「……あ!」
聞かれてマイゼンドは、見られない様に転化空間にしまったとしても消えてなくなれば、同じ事だと気がつきどうしようと固まる。
「あなた、無自覚なのね……。別に誰にも言わないわよ。しかし、異空間も持っていたなんてね……」
「あ、ありがとう。言わない方がいいと言われていたから」
「私もそう思うわ。きっと利用されるのがおちよ。街に行ったら早めに知り合いにあった方がいいわよ」
「うん。いればいいな」
戦える様になったと早く教えたいと、楽しみにしているのだ。
二人は、小走りに移動を始める。トンネルはすぐ近くにあった。中を覗くと真っ暗だ。
「ねえ、ランプってある? 私、荷物は預けてあるのよ」
アーシャリーが所属するパーティーは、留守番の浮遊持ちが荷物番をしていたので、荷物を川辺に置いて森の中へ入っていた。なのでランプなど持っていない。
「うん。あるよ」
頷いてそう言うとマイゼンドは、転化空間から袋を取り出した。テントの中に置いてあったランプはここに入れたのだ。
わかっていても目の前で袋をポンとだされ、アーシャリーは驚く。
それに彼はなぜ、どこのパーティーにも入っていないのかも不思議だった。弱くても彼女のパーティーの様に、戦闘に加わらなくても一緒に行動出来るのだ。浮遊だけではなく、異空間持ちならなおさらだ。
「はい、ランプ」
「ねえ、あなたはなぜ、その知り合いと一緒にパーティーに入ってないの? その人がトグリップに居るならパーティーに所属しているでしょう?」
ソロで活動する者は少ない。ましてレベルが低いうちは、ソロで行動するなら☆スキルか魔法を持っている者だ。それでも稀だった。
「あ、うん。初めはパーティーに入っていたんだけど僕、レベルが中々上がらなくてパーティーランクを上げたいから抜けてって言われて……」
「待って、それってEランクに上げるのにって事?」
マイゼンドはそうだと頷いた。
レベル11には、モンスターを退治して居ればすぐに上がる。大抵は、ランクを上げても少しはその場にとどまるものだ。だけど、彼がレベルを上がるのを待たずに、トグリップ街に出てきた事になる。
高ランクを目指すパーティーだったようだ。
「実は僕、攻撃力のパラメータを持っていなくって……」
「え!?」
アーシャリーは、マイゼンドの今の言葉に一番驚いた。そして納得もした。
彼が置いて行かれたのは、待っていてもレベルが上がらないだろうと思われたからだ。
マイゼンドは、浮遊と異空間の二つを持っているが、この二つは10レベル以上で覚えたのだろう。でなければ、攻撃力がなくても仲間から外さないはずだ。パーティー内に、他に同じスキルか魔法を持っていれば別だが、二つとも獲得しづらいスキルと魔法なのだ。
「そのパーティーリーダーもバカね。10レベルまで待てば浮遊か異空間を覚えて、パーティーには欠かせないメンバーになったのにね」
「……あ、10レベルでは覚えてないよ」
「え? そうだわ。あなた、本当はレベルいくつなの?」
「うーんと……もうわかんなくなっちゃった」
アーシャリーは、キョトンとする。レベルがわからない事などないからだ。もしかして、ステータスの見方を知らないとか?
あり得そうだが、さすがに周りが教えてくれるだろうとアーシャリーは思う。これは、知り合いに会って聞いてみないとと思うが、ふとある事に気がついた。
「同じパーティーに会いに行く知り合いも所属していたのよね?」
「うん」
「置いて行かれたのに会いに行くの? もう一度仲間に入れてもらう気?」
「会いには行くけどパーティーには入る気はないよ。モンスターと戦える様になったけど、僕と感覚が違うみたいなんだよね。戦闘以外でレベル上げるのをよしとしないというか……」
またもや言っている意味がよくわからないアーシャリーだった。
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