ステータスに攻撃力はありませんが、☆《白星》スキルで乗り切ります

すみ 小桜(sumitan)

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第25話 魔鉱石の森に行くのには

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 「私は、アーシャリーと言います」

 「僕は、マイゼンドです」

 危険がないと思ったアーシャリーは、まずは自己紹介をして状況を把握する事にした。

 「よく状況がわからないのでちょっと聞くけど、ここの森の事を知ってる?」

 「……ま、魔鉱石の森」

 「どうしてそう呼ばれているか知ってる?」

 知らないとマイゼンドは首を横に振った。

 「……さっきは悪かったわよ。そんなに怯えなくてもいいじゃない」

 引き留めた癖にと、アーシャリーは思った。
 マイゼンドは、彼女が起きた時はテントの出口付近に居たのに、今は何故か端に居る。どう見てもアーシャリーから距離を置いていた。

 「別に怯えてはいないけど……」

 「じゃ、その態度は何?」

 「じょ、女性とこんなに狭い場所で二人っきりになった事がなくて、どうしたらいいか……」

 「え? でもさっきまで普通に話していたでしょう?」

 引き留める前と今では態度が違うのだ。

 「だから女性だと認識したから……」

 「それって……目が覚めるまでは男だと思っていたって事?」

 アーシャリーが驚いて聞いた。髪は短いが男に間違われ事などなかったからだ。

 「だって、髪が短いし胸もないし」

 「あなた結構失礼ね!」

 ムッとするアーシャリーを見て、マイゼンドは言い方を間違えたとハッとする。

 「そ、そうじゃなくて、それ着けているし」

 マイゼンドは、慌てて言い訳をした。それとは、胸当ての事だ。少し丸みを帯びているので、わかるだろうとアーシャリーは突っ込みたくなるが、あえて言わなかった。

 「胸当てはいいとして、顔を見ればわかるでしょ!」

 「……あ、うん。男の人にしてはかわいい顔だなって思った」

 こくんと頷いてマイゼンドが答えると、「そう」と言ってアーシャリーは少し頬を染める。

 「まあいいわ。話がそれたわね。あなたも命拾いしたのよ。魔鉱石の森はね。魔鉱石があるの。でも強いモンスターがうじゃうじゃいるのよ」

 「うじゃうじゃ? いっぱいって事? アーシャリーさんって強いんだ!」

 「あのね……。もしかしてあなた、魔鉱石を知らないの?」

 「うんと、聞いた事はあるかな? 見た事はないけど」

 「強い武器の材料よ。私はパーティーを組んで魔鉱石集めをしていたのよ。で、敵に吹き飛ばされ森の外よ」

 「あ、だから降って来たんだ」

 なるほどとマイゼンドは頷いた。

 「あ、パーティーの仲間ってまだ森にいるのかな?」

 「たぶん、一旦引いたと思うわ。私達は、反対側から来たからね。そっちに」

 「そうなんだ。追って来てはくれないの?」

 「浮遊を使える者が凄く弱くてね、反対側の川辺に待機しているのよ。合図を送った時に、私達を森から降ろしてくれるの。数日そうして、ちまちま魔鉱石集めをしていたのよ」

 「へえ。その浮遊を使える人凄いね!」

 マイゼンド自身も使えるが、複数はまだ出来なかった。それにここは風が強く、上手く浮けないのだ。

 「そういう魔法だからね。たぶん私を助けに来てくれるはずよ」

 「うーん。でも僕がいなかったら助かってないような気が……」

 「まあね。でもパーティーを組むという事は、そういう事よ。少なくとも救援隊を呼ぶでしょう。ここの川辺にはモンスターがほとんどいないのよ。だとしたら生きている可能性だってあるでしょう?」

 「確かに」

 うんうんと頷くマイゼンドだったが、彼が頷いていたのはそう言えばモンスターに出会わなかったと思ったからだった。

 「あ、でも結局森を越えないといけないから来るの大変だね」

 「そうなのよ。この森でかいし、だからこういう時の為にトンネルを所々掘ってあるはずなのよ。きっとそこを通ってくると思うわ」

 「え? トンネルがあるの? じゃ森を通らなくてもトグリップ街に行けるんだね! よかったぁ。僕では森へ行くの無理そうだったから」

 「まあ、そうね。まず浮遊がないと……って、あなたここまでどうやって来たの? ここに橋を渡していないのは無謀に森に挑んで命を落とさない為よ。つまり浮遊などの何らかの魔法やスキルがないとこれないじゃない!」

 今更ながらアーシャリーは気がついた。
 あまりにもおとぼけすぎるマイゼンドに、凄い魔法やスキルを持っているという想像ができなかったからだ。

 この魔鉱石の森を囲う川は、流れが速く船で渡るのもほぼ不可能。魔鉱石が欲しいならまずは、ここに辿り着けないといけない。そして、この突風が吹く崖の上にある森へ登らなくてはいけないのだ。

 魔鉱石は、森に落ちて・・・いる為、モンスターと戦う必要は特段ない。だが見つかれば襲って来るので、一番必要なのは素早さかもしれない。

 マイゼンドは、ばれちゃったとにへらと笑った。

 「えーと、実は浮遊は持っているんだけど上にしかとべないんだよね」

 「知ってるわよ、そんな事。それより本当に浮遊を持っていたのね」

 とアーシャリーは、驚いて言った。それにマイゼンドは頷く。

 「やっぱりみんな上に浮くだけなんだ。風に飛ばされない?」

 「レベルが上がると、そういうのに流されない様になるみたいよ。私は持ってないからよくわからないけど。パーティーの浮遊担当は、アイテムを使っていたわ」

 「え? アイテム?」

 「……伸びる棒。それで地面を押して進むの。魔法持ちだとその力を駆使して進むらしいけどね」

 そんな方法があったのかと、マイゼンドは感心した。
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