ステータスに攻撃力はありませんが、☆《白星》スキルで乗り切ります

すみ 小桜(sumitan)

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第12話 育てる

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 「あの、出来てますか?」

 マイゼンドは、仕立て屋を訪ねた。

 「あぁ。いいのかい、本当に」

 マイゼンドは、頷いて一角兎の毛で作った小さな・・・寝袋を受け取った。

 昨日卵を発見したマイゼンドは、一角兎を狩らずに仕立て屋へと向かった。お願いしていた寝袋の大きさを変更してもらい、今ある毛で出来る大きさで作って欲しいと頼んだ。
 お金はそのままでいいと言うと、次の日までに作ってくれると言ってくれたので取りに来たのだった。

 大きさは、枕程しかない。到底人が入る大きさではないので、ペットでも買う事にしたのだと仕立て屋は思っていた。

 「毎度アリ。また何かあったら宜しくな」

 「こちらこそ、無理を聞いてくれてありがとうございます」

 それを持って急いで家へと帰った。そしてふわふわの暖かい寝袋へと卵を移す。
 実際、生まれて来るかもわからないが、これでよしとマイゼンドは冒険者協会へと向かった。

 「おぉ。無事だったか。よかった」

 昨日来なかったので、もしかしたらとシャーフは思って気が気ではなかったのだ。

 「あ、ごめんなさい。疲れて結局そのまま帰って寝ちゃった」

 報告を済ませたマイゼンドは、袋を買ってから森へと向かった。一角兎の角の依頼がまだ残っていたのだ。
 奥には行かずに、近くの一角兎を狩る。一時いなくなっていた一角兎は復活していた。

 不思議だなと思いながらも一角兎を倒した。そうしたらめでたく10レベルになり、1レベルに下がった。

 「あ、上がった」

 すっかりレベルの事を忘れていたが、次で10レベルだったのだ。

 ――育てるを獲得しました。

 うん? 育てる?

 「なんでまた、そんなスキルなんだぁ!!」

 マイゼンドは、森の中で大声で叫んだ。
 どうせなら攻撃魔法とか、攻撃のスキルとか、調理のスキルなど冒険に役立つのがほしいのにと。

 「あ……」

 大声で叫んだので、一角兎が集まって来た。

 「探す手間が省けたよ。次からはこうして集めよう!」

 一斉に飛びかかって来るも、鎖鎌を振り回し一角兎を吹き飛ばす。マイゼンドは、ちょっとすっきりしたと一角兎を回収した。



 「これまた大量だな」

 「うん。30体ぐらい狩った」

 ストレス発散に叫ぶと、一角兎が寄って来る。それを一気に鎖鎌で倒し10体でいいところを3倍の数になったのだ。

 「そうだ。今日の夕刻に討伐隊が着くのだが、どこらへんにあのモンスターを放した?」

 「川辺に。血がついたところがあるからわかると思う。でも、川の中に入って行ったけど?」

 「何? 川か。わかった」

 シャーフは、難しい顔つきをしていた。水の中だと探し出せないかもしれないからだ。

 家に帰って来たマイゼンドは、卵の様子を伺うも変わりない。

 「これ、育ってるのかな? 温めるだけじゃダメ?」

 寝袋から出して、卵を手に乗せると不思議な事が起こった。

 『ザラモリスの生命体
  維持率低迷中
  必要なもの「魔力MP」』

 「これって何? なんで突然見える様に……あ!」

 思い当たるのは、今日覚えたスキルだ。

 育てるレベル1:育てるモノのスタータスを見る事が出来る。

 (見えているのってステータス!?)

 驚くマイゼンドだが、卵を優しく両手で持って魔力~っと念じてみた。どうやあって与えるかわからないからだ。だがそれは成功した。
 自分のステータスを見ると、MPが減っていた。使った事になっているのだ。こうして、MPを与え続けた。

 もぞもぞ。手の平がくすぐったいと、マイゼンドが目を覚ます。いつの間にか寝てしまったようだ。銀色に光を帯びた物体が、手のひらにいた!

 「あ……生まれた!?」

 『ザラモリスの生命体
  維持持続中
  必要なモノ「ネーム」』

 「うん? ネーム? 名前?」

 (突然言われても思いつかないんだけど)

 「ザラ……うわぁ」

 思いつかないので頭文字をとると、マイゼンドの手の平で、ザラが白い小さな亀の姿になった。

 「かわいいかも」

 『聖獣ザラモリス:ザラ
  レベル:1
  HP:100
  MP:10
  魔法防御:10
  回復力:10
  素早さ:70
  適正属性:―
  不適正属性:―
  必要なモノ「食べ物」 』

 食べ物かと燻製を与えようとして、はたっと動きが止まった。そして、ザラのステータスをもう一度見直す。

 「どこかでみたステータスだと思ったら僕と同じだ!」

 マイゼンドが一番最初のレベル1だった時と同じステータスだった! スキルがないだけだ。

 「はい」

 ザラは、一角兎の燻製をあげるとむしゃむしゃと食べた。

 「かわいい! 絶対にシャーフさんに見つからないようにしないとね」
 
 マイゼンドは、ザラの甲羅を優しく撫でるのだった。
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