5 / 40
第5話 ゲテモノ好きに入りますか?
しおりを挟む
「マイゼンド、大丈夫か!?」
カウンターに座る冒険者のシャーフが、一角兎を3体手にして戻ってきたマイゼンドを見て驚いた。
彼は、引退した冒険者だ。引退と言っても冒険者の神の加護がある限り一生冒険者のままなので、冒険者協会の仕事をしている。現役で活躍出来なくなった冒険者は、裏方へと回る仕組みになっていた。
シャーフの担当は、★ランクなし。すぐに★ランク1に昇格する為、マイゼンドの様に今だに★なしなのは珍しく、名前を憶えてしまったほどだ。普通は、名前を覚える暇なく昇格していく。
「え? 何がですか?」
「腕!」
左腕の服に血がにじんでいたのだ。一角兎に攻撃を食らい怪我をしていた。だがすでにそれは完治している。
回復力のパラメータがある者は、HPとMPの両方が自然回復するのだ。このパラメータがあるのとないのとでは、生き残る確率が断然変わって来る。
攻撃力のパラメータもなく魔法を持たないマイゼンドは、一度ぐらいはモンスター退治をリトーン達と一緒にやった事があったが、あとは拾うだけだった為にこの恩恵は受けた事はなかった。
「あれ? 本当だ。そう言えば一回攻撃を食らったんだっけ?」
今気がついたという台詞を言うマイゼンドを大丈夫だろうかと、心配になるシャーフ。
「確かに自分で倒せと言ったが、無理はするな。命を落とすぞ」
「あ、うん。でも僕、強くなったよ!」
「まあ、レベルは上がっているだろうし。何レベルになった?」
シャーフは、マイゼンドに攻撃力のパラメータがない事を忘れていた。大抵の者は、魔法か攻撃が出来るステータスを授かる。マイゼンドの様な全く戦闘に不向きなステータスは珍しいのだ。
「8レベルです。残念ながら3体も倒したのにレベル上がりませんでした」
「そのレベルなら普通は、一角兎3体ぐらい倒したぐらいじゃ上がらんよ。で、自分で倒した証拠に一角兎自体を持って来たのか?」
「あ、いえ。お金を貯める為に、食べようかと思って」
「調理出来るのか? スキルは持っていなかったよな?」
モンスターを調理するのには、スキルとして調理が必要なのだ。だが、マイゼンドはそれを知らなかった。
「え? スキル?」
「はぁ……まあ最悪、切って焼くだけならスキルがなくても出来るから食べれなくもないが」
「よかった。じゃそうします」
「今回はただでさばいてやるが、通常は1体につき銅貨1枚だからな」
「ありがとうございます!」
一角兎をさばいてもらっても拾うクエストよりは、報酬は多い。さばくのも調理のスキルが必要だ。
「って、それ一人では食べるの無理じゃないのか?」
「うーん。数日に分ければ食べられると思います」
「腐るだろうに!」
「あ!」
「仕方がない、燻製にしてやる。1体銅貨5枚な。明日には燻製になっているから」
「えっと、ありがとうございます」
結局、1体分のお肉を貰い家に帰る事にした。
(今日は、初めてのモンスターの食事だ)
マイゼンドは、一度はモンスターを食べてみたいと思っていたのだ。冒険者の醍醐味だと思っていた変わり者だった。
□
アパートの前で肉を持ったまま、マイゼンドは10階の自分の部屋を見つめていた。これから浮遊で、10階まで上がろうと思って見上げていたのだ。
「よし!」
気合を入れマイゼンドは、浮き上がる。
冒険者用のアパートは街の外れにあり、基本冒険者以外の者は近づかないので、周りには誰も居ない。
スーッと浮き上がり無事10階の手すりにつまり、10階の廊下に下りる事が出来た。
「大成功!」
10階に降り立ったマイゼンドは、地上を見下ろす。
「うーん。暫くは、上がる時だけに浮遊を使おう」
かぎ縄を買ってからそれを使って下りる事にした。
部屋に入り、さっそく切り分けてくれたお肉を焼く。塩を振っただけの簡単メニュー。
焼きあがったお肉にかぶりつく。
「あ、結構おいしい」
もぐもぐとマイゼンドは、おいしそうに食べた。次は違うモンスターも食べてみたいなどと、他人が聞いたら引くような事を思っていた。
「調理のスキルがほしいな」
余ったお肉を借りた冷凍箱に入れ布団に入る。おなかいっぱいになって眠くなったのもあるが、戦闘をして疲れたのだ。
次の日、ゴミ拾いのクエストを受けレベル上げ基、レベル下げをする為に経験値稼ぎをした。2つの拾うクエストを請け負い無事、10レベルに上がり1レベルに戻ったが、今回は残念な事にスキルも魔法を覚えなかった。
「あぁ、残念。次に期待しよう」
いつも通り前向きなマイゼンドは、残りのお肉を食しこの日も眠りについたのだった。
カウンターに座る冒険者のシャーフが、一角兎を3体手にして戻ってきたマイゼンドを見て驚いた。
彼は、引退した冒険者だ。引退と言っても冒険者の神の加護がある限り一生冒険者のままなので、冒険者協会の仕事をしている。現役で活躍出来なくなった冒険者は、裏方へと回る仕組みになっていた。
シャーフの担当は、★ランクなし。すぐに★ランク1に昇格する為、マイゼンドの様に今だに★なしなのは珍しく、名前を憶えてしまったほどだ。普通は、名前を覚える暇なく昇格していく。
「え? 何がですか?」
「腕!」
左腕の服に血がにじんでいたのだ。一角兎に攻撃を食らい怪我をしていた。だがすでにそれは完治している。
回復力のパラメータがある者は、HPとMPの両方が自然回復するのだ。このパラメータがあるのとないのとでは、生き残る確率が断然変わって来る。
攻撃力のパラメータもなく魔法を持たないマイゼンドは、一度ぐらいはモンスター退治をリトーン達と一緒にやった事があったが、あとは拾うだけだった為にこの恩恵は受けた事はなかった。
「あれ? 本当だ。そう言えば一回攻撃を食らったんだっけ?」
今気がついたという台詞を言うマイゼンドを大丈夫だろうかと、心配になるシャーフ。
「確かに自分で倒せと言ったが、無理はするな。命を落とすぞ」
「あ、うん。でも僕、強くなったよ!」
「まあ、レベルは上がっているだろうし。何レベルになった?」
シャーフは、マイゼンドに攻撃力のパラメータがない事を忘れていた。大抵の者は、魔法か攻撃が出来るステータスを授かる。マイゼンドの様な全く戦闘に不向きなステータスは珍しいのだ。
「8レベルです。残念ながら3体も倒したのにレベル上がりませんでした」
「そのレベルなら普通は、一角兎3体ぐらい倒したぐらいじゃ上がらんよ。で、自分で倒した証拠に一角兎自体を持って来たのか?」
「あ、いえ。お金を貯める為に、食べようかと思って」
「調理出来るのか? スキルは持っていなかったよな?」
モンスターを調理するのには、スキルとして調理が必要なのだ。だが、マイゼンドはそれを知らなかった。
「え? スキル?」
「はぁ……まあ最悪、切って焼くだけならスキルがなくても出来るから食べれなくもないが」
「よかった。じゃそうします」
「今回はただでさばいてやるが、通常は1体につき銅貨1枚だからな」
「ありがとうございます!」
一角兎をさばいてもらっても拾うクエストよりは、報酬は多い。さばくのも調理のスキルが必要だ。
「って、それ一人では食べるの無理じゃないのか?」
「うーん。数日に分ければ食べられると思います」
「腐るだろうに!」
「あ!」
「仕方がない、燻製にしてやる。1体銅貨5枚な。明日には燻製になっているから」
「えっと、ありがとうございます」
結局、1体分のお肉を貰い家に帰る事にした。
(今日は、初めてのモンスターの食事だ)
マイゼンドは、一度はモンスターを食べてみたいと思っていたのだ。冒険者の醍醐味だと思っていた変わり者だった。
□
アパートの前で肉を持ったまま、マイゼンドは10階の自分の部屋を見つめていた。これから浮遊で、10階まで上がろうと思って見上げていたのだ。
「よし!」
気合を入れマイゼンドは、浮き上がる。
冒険者用のアパートは街の外れにあり、基本冒険者以外の者は近づかないので、周りには誰も居ない。
スーッと浮き上がり無事10階の手すりにつまり、10階の廊下に下りる事が出来た。
「大成功!」
10階に降り立ったマイゼンドは、地上を見下ろす。
「うーん。暫くは、上がる時だけに浮遊を使おう」
かぎ縄を買ってからそれを使って下りる事にした。
部屋に入り、さっそく切り分けてくれたお肉を焼く。塩を振っただけの簡単メニュー。
焼きあがったお肉にかぶりつく。
「あ、結構おいしい」
もぐもぐとマイゼンドは、おいしそうに食べた。次は違うモンスターも食べてみたいなどと、他人が聞いたら引くような事を思っていた。
「調理のスキルがほしいな」
余ったお肉を借りた冷凍箱に入れ布団に入る。おなかいっぱいになって眠くなったのもあるが、戦闘をして疲れたのだ。
次の日、ゴミ拾いのクエストを受けレベル上げ基、レベル下げをする為に経験値稼ぎをした。2つの拾うクエストを請け負い無事、10レベルに上がり1レベルに戻ったが、今回は残念な事にスキルも魔法を覚えなかった。
「あぁ、残念。次に期待しよう」
いつも通り前向きなマイゼンドは、残りのお肉を食しこの日も眠りについたのだった。
0
お気に入りに追加
562
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
甘い婚約~王子様は婚約者を甘やかしたい~
モモ
恋愛
私の名前はバロッサ・ラン・ルーチェ今日はお父様とお母様に連れられて王家のお茶会に参加するのです。
とっても美味しいお菓子があるんですって
楽しみです
そして私の好きな物は家族、甘いお菓子、古い書物に新しい書物
お父様、お母様、お兄さん溺愛てなんですか?悪役令嬢てなんですか?
毎日優しい家族と沢山の書物に囲まれて自分らしいくのびのび生きてる令嬢と令嬢に一目惚れした王太子様の甘い溺愛の物語(予定)です
令嬢の勘違いは天然ボケに近いです
転生ものではなくただただ甘い恋愛小説です
初めて書いた物です
最後までお付き合いして頂けたら幸いです。
完結をいたしました。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
みんながみんな「あの子の方がお似合いだ」というので、婚約の白紙化を提案してみようと思います
下菊みこと
恋愛
ちょっとどころかだいぶ天然の入ったお嬢さんが、なんとか頑張って婚約の白紙化を狙った結果のお話。
御都合主義のハッピーエンドです。
元鞘に戻ります。
ざまぁはうるさい外野に添えるだけ。
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?
藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。
目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。
前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。
前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない!
そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
スライムから人間への転生〜前世の力を受け継いで最強です
モモンガ
ファンタジー
5/14HOT(13)人気ランキング84位に載りました(=´∀`)
かつて勇者と共に魔王を討伐したスライムが世界から消えた…。
それから300年の月日が経ち、人間へと転生する。
スライムだった頃の力【勇者】【暴食】を受け継ぎいろんな場所を巡る旅をする
そんな彼の旅への目的はただ1つ!世界中の美味しいご飯を食べる事!
そんな食いしん坊の主人公が何事もないように強敵を倒し周りを巻き込んで行く!
そんな主人公の周りにはいつのまにか仲間ができ一緒に色々なご飯を食べて行く!
*去年の9月まで小説家になろう。で連載を辞めた作品です。
続きを書こうと気持ちになりまして、こちらで再開しようもおもった次第です。
修正を加えてます。
大きいのは主人公の名前を変えました。(ヒロインと最初の一文字が被っている為)
レアル→リューク
ラノベ専用アカウント作りましたー( ̄∀ ̄)
Twitter→@5XvH1GPFqn1ZEDH
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる