【完結】お父様の再婚相手は美人様

すみ 小桜(sumitan)

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4話

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 「どうでした? 彼女、美人だったでしょう」
 「そうだね。だったね。僕が見かけに騙されると思う? それに君にぞっこんなのだから。僕も君の為なら何でもするよ」

 にっこり怖い笑顔でほほ笑み、私の髪をひと房手に取り口づけを落とす。
 彼が自分で言う通り、私に惚れている。どこに惚れたのか。引くほど愛されているのよ。

 彼の事は嫌いではない。でも、愛してはいない。それは仕方がないわよ。だって彼は18歳なのだもの。やっと前世の自分の年の半分まで年を取った私からすれば、恋愛対象にならない。

 レイモンドとの出会いは、プロジェクトの初の顔合わせの時だった。
 私が提案して、ツッピェ侯爵と議論を重ね、その後ラドリフーン辺境伯とも協議した結果、ある程度形になりプロジェクトとして進める為にラドリフーン辺境伯達と会って話す事になった。

 それまでは、ラドリフーン辺境伯と協議していたのは、ツッピェ侯爵だった。
 プロジェクトなんて言っているが、直線にトンネルを掘るだけの話だけど、この国でそれは大変な作業だった。
 しかも、貫通先はラドリフーン辺境伯管轄の領土。相手に了承を得ないと無理な話だったのだから。

 その貫通先が、ネポーヌ子爵家が治めている領土だった。と言ってもツッピェ侯爵管轄の倍はあるラドリフーン辺境伯管轄の小さな区画。まるで狙った様にトンネルを掘った先にあった。彼ら曰く『猫の額ほどの大きさ』。

 後で視察に行った時になるほどと思ったほど領土としては狭かった。
 グルーン領土も狭いけど、山を入れればそれなりの領土。けど山を除けば、何もすることが出来ない広さしかない。
 領土には、視察に訪れた時に泊まる為にある屋敷。それに、一応見回り兵を雇っているので、その者達が住まう宿舎しかない。
 なので、領民はいない。彼らを領民と呼べるなら10数名ほどとなるけど。

 その初顔合わせに、私も付き添った。
 『次期当主になるのだから年齢は関係ないわ』などと理由を付けて、私も同席したのよ。
 そう告げていたからか、相手も次期当主を連れて来た。それが、レイモンド。

 あの時私は7歳だったから二つ年上の彼は、9歳ね。
 一般的に当主になる予定だとしても、学園に通わなければなれないのだから、まだ確定ではない。
 そんな子供が二人、大人に交じって話を聞いていた。

 まあトンネルを掘るだけだと、グルーン家とネポーヌ家には何も利益をもたらさない。観光する場所はないからね。
 でもツッピェ侯爵管轄領土には、多大な金が入る事となる。ツッピェ侯爵としては話を進めたいでしょう。

 ラドリフーン辺境伯の管轄領土から王都に行くのには、ツッピェ侯爵管轄領土を突っ切れればかなり早くたどり着く事が可能になる。
 今までは、山がある為に迂回して行く事になるので、山の裏側にあるツッピェ侯爵管轄領土に、立ち寄る者は少なかった。
 けど、そこを通るなら観光していくでしょう。

 ラドリフーン辺境伯にもメリットはある。
 管轄領土の都市は管轄領土の中心にあるので、もしトンネルが出来ればそこを通過するようになる。
 ラドリフーン辺境伯管轄領土で言えば、トンネルが出来てもそこまでメリットはないが、ラドリフーン辺境伯にすれば大きな収入になるでしょう。
 ただ、管轄領土内でも収入場所が様変わりする事になるので、反対意見も出るはず。

 そこで、トンネル使用料を取る事を提案した。
 そう、これがグルーン家とネポーヌ家のメリット。

 お金を取るとなれば、使用しないのでは? と思うかもしれないが、利用するのは貴族なのだから高額でなければ使用すると思われる。

 もちろん、外国人も視野に入れている。
 なにせ、ラドリフーン辺境伯の管轄領土の向こう側は他国。関所を通り入国してくる者達は、王都に用事がある事が多い。
 トンネルを通れば3日ほどの短縮になるのだから、利用するでしょう。

 一番の問題は、ラドリフーン辺境伯の管轄領土内での、人の流れの変化。それにより今まで収入があった場所でかなり収入が減るかもしれない。

 そこで、トンネルに入る時に向こう側の領土のパンフレットと共に、サービス券なるものを使用特典として渡す。
 これにより、今まで寄っていた地域へ寄って行くかもしれない。
 まあリピーターになっている人なら、そんな事をしなくても寄るでしょうけどね。

 またトンネルを目玉にする事で、管轄領土に人を呼ぶ事になる。わざわざトンネルを利用し、渡したパンフレットを見て興味を持った行った事のない地域にも赴くかもしれない。

 お母様とツッピェ侯爵は、そう力説した。
 納得してくれれば、後は金額の設定やトンネルの内装を決め、周りにどのような施設が必要か話し合う事になる。
 けど、話は難航した。ラドリフーン辺境伯の管轄領土内で反対が出ただめだった。

 そこで更なる提案をする。
 トンネル利用者にスタンプラリーの用紙を渡す事。
 この世界には、そういう観光の仕方は今までなかった。貴族達が、それを行うかもわからない。
 でもこれが、色々と議論するきっかけとなり話が纏まった!

 宝石ラリーを行う事になった。さすがは貴族、スタンプなんてダメよね。
 トンネルを出る時(ここが重要)に、宝石箱を買う事ができて、それを持って観光地巡りをしてもらう。
 それぞれの場所には、の宝石が売っていて宝石箱を持っている方は、格安で購入できる。

 そして、宝石が入った宝石箱を管轄領土の都市にある宝石店に持っていけば、無料でネックレスなどの装飾品に加工してくれるサービスを行う事になった。
 もちろんすぐには加工は出来ないので、また来る方はその時に受け取り、来れない方は郵送する。まあ郵送は国内に限るけど。

 方針が決まっても、後は名産の宝石を決めたり、トンネルまでの道や国から許可を取ったりとやる事はいっぱいあった。
 結局、トンネルを掘り始めるまでにも時間が掛かり私は学園へ通う事になる。

 学園は、管轄領土に一つはあるのでそれぞれの管轄領土に通うのが一般的なのに、レイモンドは私が通う学園へ入学してきた。

 「僕と同じ時期に学園に通うって聞いたから、どうせなら一緒に通いたくてね」

 そんな理由で、他の管轄領土の学園に通う人なんていないわよ。
 彼はなんと、ツッピェ侯爵家から2年間通った。
 でも彼のお陰で、お母様が亡くなってもそこまで気落ちしなくてすんだのだと思う。心の支えになってくれた。
 それは凄く感謝しているわ。

 学園卒業後、彼は名残惜しそうに領土へと帰って行った。
 そして、ツッピェ侯爵を通して婚約の申し出をしてきたのよ。

 え? 跡取りではないの? 当主になるんでしょう?
 驚いたけど、どうやら学園に通っている時にすでにツッピェ侯爵に相談していたらしい。

 妹に当主の座を譲り、私との結婚は私が16歳になった時にという事になってしまったのよ!
 トンネルのプロジェクトは、予想だにしていない結果も付いてきたのだった。
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