【完結】お父様の再婚相手は美人様

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
上 下
1 / 10

1話

しおりを挟む
 「きっと今年は、交際を申し込まれると思うの」
 「まあ、どなたが?」

 馬車の中、向かい側に座る自称義母のメーラ夫人とその娘シャーロット嬢がワザとらしく私に聞こえる様に言った。

 「それが、殿下に公爵子息を筆頭にかしら」
 「まあ、それは悩むわね」

 悩むって。まだ告白すらされていないのではないのですか?
 絶対にそうだと自信満々の二人。
 彼女達は、私の目から見ても確かに美人だ。

 2年前の私が14歳になる年に、お父様が結婚すると言って連れて来た二人。メーラ夫人は、くせ毛の赤い髪にクリっとした大きな赤い瞳。スーッと通った鼻筋。キュートなプリっとした口元に、セクシーなほくろ。

 初め連れて来た時には騙されているのではないかと思った。失礼だけどお父様と容姿では釣り合わないのだから仕方がない。
 お父様は、茶色の髪にたれ目の茶色の瞳で、お世辞でもかっこいい顔ではない。まあ、たれ目のせいか優しそうに見えるけど。

 この国では、貴族の恋愛結婚は一般的だけど、再婚の場合は子連れならお付き合いをしても結婚はしない。だから連れて来て驚いた。
 メーラ夫人の娘は私と同じ歳で、数か月だけ産まれが早いシャーロット嬢がいる。彼女は、母親そっくりの容姿。赤茶の髪にクリっとした真っ赤なルビー色の瞳。

 ハッキリ言って、一緒に並びたくないわ。私は、彼女と違って美人ではない。平凡な令嬢よ。まあ、理由はそれだけではないけどね。

 私の茶色い髪は太く剛毛。真っすぐストレートにしかならず、ゆるふわウェーブなんて夢のまた夢。瞳は、亡きお母様と同じ茜色。と、地味だけどこの瞳だけは誇れるの。

 彼女達は、贅沢をしたくてお父様との再婚をしたみたい。
 まあそうでなければ、こんな美人がお父様と再婚などするはずもない。
 どの世界でも、美人は得よね。

 一応、反対はしたのだけど、お父様に頭を下げられた。自分の状況をわかっていて、再婚するならいいとなった。
 けどやっぱり、猛反対してやめさせるべきだったと今は思っているわ。
 何せ、お父様は彼女達の言いなりだもの。

 再婚してすぐに、社交シーズンが訪れた。伯爵家以上の貴族達は、その時期は、王都のタウンハウスで過ごす事が多い。
 私、シャルル・グルーンも一応伯爵令嬢で、14歳だとデビューの年。けど、領土で過ごす予定でいた。
 14歳だけど領土経営に携わっていたから、デビューを来年にする事にしたのよ。
 なのに、お父様ったら……。

 「シャーロットが、14歳でデビューしたいと言うのだ。だから王都で……」
 「お好きにどうぞ。でも彼女にタウンハウスは、貸さないわよ。お父様、わかっているわよね?」

 そうビシッと言えば、頭を下げられた。

 「お願いだ。食費以外は、私のポケットマネーで出すから」

 そこまでして、一緒に居たいのかしらね?
 お母様とは、政略結婚だったようで嫌いではないけど好きでもなかったみたい。だからといって、自分の娘より相手の娘を大切にするわけ?

 「わかったわ。でもわかっているとは思うけど、何か彼女達が事を起こせば……」
 「わかってる。わかってる!」

 こうして、私はデビュー出来ずに領土に籠るというのに、彼女は王都でデビューよ。
 本来彼女は、王都などでデビューなどしない爵位なのにね。

 その後、社交シーズンが終わって戻って来た二人は、伯爵家のお金を当てにして贅沢をしようとしていたので、おばあ様が叱責して下さり、しばらくは大人しくしていた。
 おじい様は、私が産まれてすぐに亡くなったらしく、顔すら覚えていない。

 そのすぐあとに貴族学園に通いたいと言って来た時には、開いた口が塞がらなかったわ。
 きっと社交パーティーで学園の事を聞いたのでしょうけど、あなた達には行けないのだけど。

 「お父様。説明して差し上げて」
 「えーと。学園側から通知が来たら通えるのだ」
 「まあ、そうなの? どうしたら通知を貰えるのかしら?」
 「家庭教師をつけて学力が上がったら……」

 まどろこしいわね。

 「簡潔に言うと、選ばれた者が行くのよ。それも12歳で入学して2年通うのよ。つまり卒業してから社交界に出るの」
 「あらだったら、シャルルはどうだったのかしら?」

 クスリと笑って問うメーラ夫人。
 彼女達が来た時に学園に通っていなかったからでしょうね。

 「私は、10歳から2年間通ったの」

 そう答えれば、二人は驚いた顔つきになった。
 勉強についていける者達が通う学園よ。年齢は関係ないわ。先ほど言った年齢は、最終年齢。それに、私はその学園を早く卒業しなければいけない理由があったからね。

 「ではせめて、この子に家庭教師をつけてあげていいでしょう。ゴラン」

 甘えた声でメーラ夫人が、お父様に擦り寄る。するとお父様が困り顔で私を見た。

 「好きにすればいいでしょう。私を頼られても困るわ」
 「まあ。まだ小娘のくせに何という言い方でしょう」
 「その小娘に頼るのだから、さらに頼りないわよね」
 「まあ、父親に対してなんて言う口の利き方なのでしょう。本当に学園に通ったのかしら?」
 「証拠でもお見せしましょうか? それに文句があるのならこの屋敷から出て行けばいいでしょう。お父様も遠慮なさらずに、どうぞご一緒に」

 私がそう言えば、三人共青ざめる。
 メーラ夫人達も知ってはいるみたいね。私が仮の当主だと。そうお父様は、当主ではない。

 この国では、血筋がモノを言う。女児しか生まれなかった我が家は、お父様を婿に迎えたけど、実権はお母様が握っていた。

 お母様は、私が産まれてすぐに当主であるおじい様を亡くしている。その為、苦労したみたい。だから私には、あり得ない5歳から仕事に関わらせていた。
 と言っても私が、流行り病にかかり九死に一生を得て回復。その時に、私は前世を思い出したのよ。いや走馬灯を見たのかもね。

 5歳児でありながら大人としての知識も持ち合わせた私は、お母様が悩ませていた問題に口を挟んだ。
 普通なら子供が口出しするのではありませんとなるけど、アイデアとして考察してくれた。
 まあ、切羽詰まっていたのでしょうけどね。

 収入源がなくとも、最低限のお金はかかるなのだから。なので、赤字よ。自身で働いたお金で、支払っていたのだから貴族って大変よね。
 お母様は、私に学園を卒業してほしかったみたいね。そうすれば、それなりの貴族と結婚できる。そう思っていたみたい。

 要は、私がいるから領土を手放せないでいた。
 そうわかったから、猛勉強をしたのよ。早く学園を卒業する為にね。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話

ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。 リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。 婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。 どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。 死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて…… ※正常な人があまりいない話です。

皇太女の暇つぶし

Ruhuna
恋愛
ウスタリ王国の学園に留学しているルミリア・ターセンは1年間の留学が終わる卒園パーティーの場で見に覚えのない罪でウスタリ王国第2王子のマルク・ウスタリに婚約破棄を言いつけられた。 「貴方とは婚約した覚えはありませんが?」 *よくある婚約破棄ものです *初投稿なので寛容な気持ちで見ていただけると嬉しいです

特殊能力を持つ妹に婚約者を取られた姉、義兄になるはずだった第一王子と新たに婚約する

下菊みこと
恋愛
妹のために尽くしてきた姉、妹の裏切りで幸せになる。 ナタリアはルリアに婚約者を取られる。しかしそのおかげで力を遺憾なく発揮できるようになる。周りはルリアから手のひらを返してナタリアを歓迎するようになる。 小説家になろう様でも投稿しています。

(完結)貴女は私の親友だったのに・・・・・・

青空一夏
恋愛
私、リネータ・エヴァーツはエヴァーツ伯爵家の長女だ。私には幼い頃から一緒に遊んできた親友マージ・ドゥルイット伯爵令嬢がいる。 彼女と私が親友になったのは領地が隣同志で、お母様達が仲良しだったこともあるけれど、本とバターたっぷりの甘いお菓子が大好きという共通点があったからよ。 大好きな親友とはずっと仲良くしていけると思っていた。けれど私に好きな男の子ができると・・・・・・ ゆるふわ設定、ご都合主義です。異世界で、現代的表現があります。タグの追加・変更の可能性あります。ショートショートの予定。

【完結】我儘で何でも欲しがる元病弱な妹の末路。私は王太子殿下と幸せに過ごしていますのでどうぞご勝手に。

白井ライス
恋愛
シャーリー・レインズ子爵令嬢には、1つ下の妹ラウラが居た。 ブラウンの髪と目をしている地味なシャーリーに比べてラウラは金髪に青い目という美しい見た目をしていた。 ラウラは幼少期身体が弱く両親はいつもラウラを優先していた。 それは大人になった今でも変わらなかった。 そのせいかラウラはとんでもなく我儘な女に成長してしまう。 そして、ラウラはとうとうシャーリーの婚約者ジェイク・カールソン子爵令息にまで手を出してしまう。 彼の子を宿してーー

どうして別れるのかと聞かれても。お気の毒な旦那さま、まさかとは思いますが、あなたのようなクズが女性に愛されると信じていらっしゃるのですか?

石河 翠
恋愛
主人公のモニカは、既婚者にばかり声をかけるはしたない女性として有名だ。愛人稼業をしているだとか、天然の毒婦だとか、聞こえてくるのは下品な噂ばかり。社交界での評判も地に落ちている。 ある日モニカは、溺愛のあまり茶会や夜会に妻を一切参加させないことで有名な愛妻家の男性に声をかける。おしどり夫婦の愛の巣に押しかけたモニカは、そこで虐げられている女性を発見する。 彼女が愛妻家として評判の男性の奥方だと気がついたモニカは、彼女を毎日お茶に誘うようになり……。 八方塞がりな状況で抵抗する力を失っていた孤独なヒロインと、彼女に手を差し伸べ広い世界に連れ出したしたたかな年下ヒーローのお話。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID24694748)をお借りしています。

聖騎士に裏切られた聖女は愛されることを知る

andante
恋愛
聖騎士のために力を与えていた聖女は裏切られたことを知る。 婚約は解消され、お互いに新たな道を歩むことになった。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

処理中です...