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第19話 お金の使い道

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 がらがら。
 ガントが、引き取ってきた魔道具を雑に倉庫の山に加える。

 「うん? なんか甘い匂いがしないか?」
 「あ……」

 オレンジジュースの香りだった。洗う事もできなかったので、そのままなのだ。

 「えーと、お昼はオレンジジュースで……」
 「お前は。それだけだと、体がもたないぞ。それ振り回すんだから」

 エストキラが手にしたハンマーを指さし、ガントが言った。

 「で、どれくらいになった」

 虫眼鏡を持ってガントが覗く。

 「おぉ、202か。凄いじゃないか。100ぐらいでへばると思ったが、思ったより根性あるな」
 「あははは」

 ”たぶん重いままなら100も無理だった”

 「今日はこれぐらいにして、夕飯にするか」
 「わーい」
 「その前に、銀貨20枚と銅貨200枚な」
 「ありがとうございます!」

 エストキラは、受け取ったお金をまじまじと見て、瞳をキラキラとさせる。

 ”凄い、一日でこんなに稼いじゃった”

 「あのところで、変換された鉱石ってどうなってるんですか? 扉をあけてもないんですけど……」

 もしかして、失敗しているのではないかとエストキラは思っていた。

 「あぁ。反対側に鉱石を入れるケースがあってな、そこに自動的に入る仕組みだ。でないと、大量の鉱石を入れ物に移動させないといけないからな」

 ”確かに。あれは結構めんどくさかった”

 「さあ、たらふく食って明日に備えるぞ!」
 「はい!」

 元気に返事を返すエストキラだった。





 「ふう。お腹いっぱい」
 「それはよかった。じゃおやすみ。俺は家に帰るからな」
 「はい。おやすみなさい」

 ガントは、仕事場と住まいが別だった。なので、仕事場にエストキラを残し帰宅していった。
 エストキラは、借りた毛布に包まりごろんと横になる。

 ”そういえば、どんなオプションを覚えたんだろう”

 今までは、役に立たないと思っていたオプションだが、+50も付与出来れば効果はある。

 *オプション
  消費MP:1(マスター効果)
  装備全般に有効
  成功率:59%(マスター効果)
  オプションが付いているモノは上書きになる。
  *レベル8:素早さ+1/重さ-1/衝撃吸収+1/命中+1/回復+1/柔らかさ+1/硬さ+1/大きさ+1
   次のレベルまで:6P/8000P
   成功時4P、失敗時2P(マスター効果)

 ”うーん。回復ってどんな効果?”

 *回復+1/このオプションがついているモノの状態を10秒に1回復させる。
  発動条件:対象に触れながら『スキルカイフク』と発する。

 「うわぁ。凄そうだけど、どういう事? 装備品の修復って事なのかな? それにこれ回復するまでずっと? 何度でも? だとしたら凄いけど……僕の装備じゃなぁ」

 試したところで回復していっているのかわからないかと思うが、試したい気持ちが出てきた。

 「うーん。強い装備でも目に見えて修復していかないとわからないよね。倉庫にある鑑定キットに見えるのあるかな? あ……あっても装備品がないからダメか」

 ”うーん、でも試したい。もし修復するなら中古品を買って装備すればすごく強くなるんじゃない。武器はいらないけど、身を護る装備はあってもいいよね”

 お金を貯めなくてはいけないのはわかってはいるが、お金があると思うと使ってみたくなった。そもそも買い物など、ここにきて初めてしたのだ。見るだけではなく、買い物をもっとしたいと思うのだった。





 「では、今日も頼んだぞ」
 「はい。任せて下さい」

 次の日、一緒に倉庫に来たガントがまた顧客回りに出かけた。

 ”よし。ダメージ具合を見る虫眼鏡はないかな”

 結局なかった。ここにある鑑定キットはどうやら魔道具用らしい。

 ”これ面白いかも”

 最後に手に取った白い虫眼鏡越しに覗くと、魔法陣が見えた。

 ”うーん。魔法陣を扱えれば誰でも魔道具を作れるって言っていたよね。こうやって見れるんだから照らし合わせたらやれそうな気も……”

 「よし! 200回叩いたら探しに行こう」

 最初の決意はどこにいったのやら。どんどん違う方向に興味がむくエストキラは、魔法陣の解読の為にがんがん叩き、探しに街へ向かうのだった。
 だが一般人側の通りには、それらしいのは売っていなかった。

 ”やっぱり貴族側の方のお店にいかないとだめかな? そっち側行った事ないけど大丈夫だろうか?”

 不安になりながらも好奇心の方が勝ち、貴族側の店に足を踏み入れる。特段文句は言われなかったが、売っているモノの値段が、0一つ多かった。

 ”た、高いんだけど。うん? 魔法陣の基礎? これだ!”

 だが買えなかった。銀貨30枚したのだ。しかし、今日給金を貰えば買えるとにんまりして倉庫へ戻ったのだった。
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