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第5話 まさかの災難
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「お待たせ」
「うんうん。似合ってる。初仕事頑張ってね。そして無事に戻って来て」
「うん。馬車なら安心だ。ありがとう」
二人は、馬車乗り場に向かい一日2便しかない2便目の馬車に間に合った。
「じゃ……」
「おじさん、おばさんの事は任せて」
「うん。ありがとう」
手を振り馬車に乗り込めば、一組のカップルが乗っているだけだ。二人はチラッとエストキラを見ただけで、二人の世界に戻って行った。
馬車が見えなくるまで手を振るリナに、エストキラもずっと手を振る。視線を馬車内に戻せば、目の前に座る二人が手を繋ぎ寄り添うようにして、何かコソコソと話していた。
”はぁ。カップルが目の前でいちゃついているよ”
エストキラは、外に目をやる。
外灯と結界を兼ねた結界灯が道の両側に等間隔で立っていた。その光景を物珍しく見つめる。この外灯のお陰で、ほとんどのモンスターは道に入ってこれず、またそれなりのモンスターは倒して対処しているので、外灯がある道にモンスターが出る事はほとんどない。
と、エストキラはリナに聞いていて安心していた。
街へ行くのには一つの小さな山を越える。そのちょうど頂上でカップルがパッと外を見たと思ったら大声を上げた。
「あれ、モンスターだわ!」
「なんでこんなところに!」
二人が大声を上げると同時ぐらいに馬車が急停車すると、構えていなかったエストキラは、床にたたきつけられる。
「いったぁ」
「おい君、逃げるぞ」
バンとドアを開け言うと同時に外へ出て行く。エストキラも恐る恐る馬車の外へと出た。
驚く事に本当にモンスターが目の前に!
クマの様なモンスターが四つん這いになって、エストキラ達に威嚇していた。
「ガルルルル」
”これがモンスター!? って、結界灯があれば大丈夫じゃなかったの?”
驚いてモンスターを見ていたエストキラは、ぐいっと後ろに引っ張られる。いや正確には、リュックを引っ張られ後ろにひっくり返りそうになった。
「ちょっと何?」
振り返れば、カップルの女がリュックを引っ張っていたのだ。
「大人しく渡しな!」
「あ!?」
リュックが女に奪われた。
”なんで? もしかしてこの中に入っている物がほしいとか? どういう事?”
ドン!
「そのまま逃げ――」
御者が女に体当たりして叫ぶが、カップルの男に背後から切りつけられ、目の前でぱたりと倒れ込む。
「ひい」
エストキラは、一歩下がった。
”殺される!”
「ラージ、後ろ!」
男がエストキラに向かって剣を構えた時、モンスターが襲い掛かって来たのだ。
「っち。なぜ俺を」
”逃げないと!”
エストキラは、女の隙をつきリュックを奪い返すと森の中へ逃げ込んだ。慌てて女も追いかけて来る。
「待て!」
”一体、僕に渡された物って何なの?”
リュックを背負い必死に逃げた。森を下りながら必死に。
「え……うわぁ!!」
「くそぉ……まあこれじゃ助からないか」
エストキラは、勢い余って崖から落ちた。走っていたため、勢いがついていて何かにつかまる事すら出来ずに真っ逆さま。
崖の下に流れる大きな川にジャバーンと大きな音を立て落ちて行ったさまを追いかけてきた女は見つめていた。
「失敗か。どうせなら普通に襲えば奪えたのに……」
女は、その場を去って行く。エストキラが死んだと思って――。
◇
”なんで僕は生きているんだろう?”
川から這い上がり、辺りを見渡す。勢いよく流れる川を挟むように、絶壁があるだけだ。
ぺたんとその場に座り込む。
”これからどうしたらいいんだ”
道なりに行けば街についただろうが、道を外れてしまった。街どころか村にすら戻れない。
「あ、そうだ! 手紙!」
幸いリュックは流されず背負ったままだった。しかし、びっしょり濡れている。開ければ、中にも水が入っていた。
「うわぁ、どうしよう」
指示書は、文字など読めるどころではない。
「あれ? なんだこれ」
手にした手紙は、水の中に浸っていたというのに濡れていなかった。
とりあえず、リュックの中の水を捨て、手紙を中にしまう。
”やっぱり特別な物なんだ。なぜ僕にそんなものを渡したかわからないけど”
エストキラはどうしたらいいか考え込む。
きっとさっきの奴らが探しに来るだろう。こういう不思議なものだと知っていれば、自分自身が死んでいたとしても欲しい物は無事なはずだと。
そして自分が生きているのはきっと、リナが渡してくれたペンダントのお陰だろうと。
”ありがとう、リナ”
「僕が出来る事。それは、オプションを増やす事だ!」
MPが今、どれくらいあるかわからないが1しか消費しない。使いまくればレベルが上がる。オプションのスキルがどうであれ、マスターが上がれば何か役立つかもしれない。
「スキルカルクナレ!」
エストキラは、賭けに出て手にしていたリュックにオプションを付けるのだった。
「うんうん。似合ってる。初仕事頑張ってね。そして無事に戻って来て」
「うん。馬車なら安心だ。ありがとう」
二人は、馬車乗り場に向かい一日2便しかない2便目の馬車に間に合った。
「じゃ……」
「おじさん、おばさんの事は任せて」
「うん。ありがとう」
手を振り馬車に乗り込めば、一組のカップルが乗っているだけだ。二人はチラッとエストキラを見ただけで、二人の世界に戻って行った。
馬車が見えなくるまで手を振るリナに、エストキラもずっと手を振る。視線を馬車内に戻せば、目の前に座る二人が手を繋ぎ寄り添うようにして、何かコソコソと話していた。
”はぁ。カップルが目の前でいちゃついているよ”
エストキラは、外に目をやる。
外灯と結界を兼ねた結界灯が道の両側に等間隔で立っていた。その光景を物珍しく見つめる。この外灯のお陰で、ほとんどのモンスターは道に入ってこれず、またそれなりのモンスターは倒して対処しているので、外灯がある道にモンスターが出る事はほとんどない。
と、エストキラはリナに聞いていて安心していた。
街へ行くのには一つの小さな山を越える。そのちょうど頂上でカップルがパッと外を見たと思ったら大声を上げた。
「あれ、モンスターだわ!」
「なんでこんなところに!」
二人が大声を上げると同時ぐらいに馬車が急停車すると、構えていなかったエストキラは、床にたたきつけられる。
「いったぁ」
「おい君、逃げるぞ」
バンとドアを開け言うと同時に外へ出て行く。エストキラも恐る恐る馬車の外へと出た。
驚く事に本当にモンスターが目の前に!
クマの様なモンスターが四つん這いになって、エストキラ達に威嚇していた。
「ガルルルル」
”これがモンスター!? って、結界灯があれば大丈夫じゃなかったの?”
驚いてモンスターを見ていたエストキラは、ぐいっと後ろに引っ張られる。いや正確には、リュックを引っ張られ後ろにひっくり返りそうになった。
「ちょっと何?」
振り返れば、カップルの女がリュックを引っ張っていたのだ。
「大人しく渡しな!」
「あ!?」
リュックが女に奪われた。
”なんで? もしかしてこの中に入っている物がほしいとか? どういう事?”
ドン!
「そのまま逃げ――」
御者が女に体当たりして叫ぶが、カップルの男に背後から切りつけられ、目の前でぱたりと倒れ込む。
「ひい」
エストキラは、一歩下がった。
”殺される!”
「ラージ、後ろ!」
男がエストキラに向かって剣を構えた時、モンスターが襲い掛かって来たのだ。
「っち。なぜ俺を」
”逃げないと!”
エストキラは、女の隙をつきリュックを奪い返すと森の中へ逃げ込んだ。慌てて女も追いかけて来る。
「待て!」
”一体、僕に渡された物って何なの?”
リュックを背負い必死に逃げた。森を下りながら必死に。
「え……うわぁ!!」
「くそぉ……まあこれじゃ助からないか」
エストキラは、勢い余って崖から落ちた。走っていたため、勢いがついていて何かにつかまる事すら出来ずに真っ逆さま。
崖の下に流れる大きな川にジャバーンと大きな音を立て落ちて行ったさまを追いかけてきた女は見つめていた。
「失敗か。どうせなら普通に襲えば奪えたのに……」
女は、その場を去って行く。エストキラが死んだと思って――。
◇
”なんで僕は生きているんだろう?”
川から這い上がり、辺りを見渡す。勢いよく流れる川を挟むように、絶壁があるだけだ。
ぺたんとその場に座り込む。
”これからどうしたらいいんだ”
道なりに行けば街についただろうが、道を外れてしまった。街どころか村にすら戻れない。
「あ、そうだ! 手紙!」
幸いリュックは流されず背負ったままだった。しかし、びっしょり濡れている。開ければ、中にも水が入っていた。
「うわぁ、どうしよう」
指示書は、文字など読めるどころではない。
「あれ? なんだこれ」
手にした手紙は、水の中に浸っていたというのに濡れていなかった。
とりあえず、リュックの中の水を捨て、手紙を中にしまう。
”やっぱり特別な物なんだ。なぜ僕にそんなものを渡したかわからないけど”
エストキラはどうしたらいいか考え込む。
きっとさっきの奴らが探しに来るだろう。こういう不思議なものだと知っていれば、自分自身が死んでいたとしても欲しい物は無事なはずだと。
そして自分が生きているのはきっと、リナが渡してくれたペンダントのお陰だろうと。
”ありがとう、リナ”
「僕が出来る事。それは、オプションを増やす事だ!」
MPが今、どれくらいあるかわからないが1しか消費しない。使いまくればレベルが上がる。オプションのスキルがどうであれ、マスターが上がれば何か役立つかもしれない。
「スキルカルクナレ!」
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