3 / 30
第3話 恩返し
しおりを挟む
「今日中に出かけてほしい。そして三日以内に届けるように。着替えたら荷物を取りに来るように」
はいと、装備一式を渡された。
商人風の服で、守備力があるとは思えない。それを両手に持ってトボトボと家に向かう。
”お父さんとお母さんになんて言おう”
話を聞けばショックを受けるだろう。両親もエストキラと同じく酪農系を与えられると思っているからだ。
「キラ~!」
”うん? リナだ!”
クルっと振り向けば、手を振って近づく茶色い髪の少女。エストキラと同じ年齢の彼女だが、彼とは違ってつやつやした髪に綺麗な洋服を着ていた。身長なんて、リナの方が高い。
「聞いたわよ。おめでとう」
「……あ、ありがとう」
「あまり嬉しそうじゃなさそうね」
「……うん。まあ。オプションだからね」
「え、あのオプション?」
「そう。あのオプション」
二人は、話しながら歩く。
リナは、1年前に祈りと炎のスキルを授かった。エストキラとは違い、最初からグレード3。彼女はピンク色のブレスレットをしている。
グレード2からは、スキル系統で色分けされていた。赤が戦闘系、青が製造系、黄がサポート系、ピンクが神殿入り。そして、グレード3からはブレスレッドに☆がつけられ、グレードが上がると☆の数も増えていく。
リナのブレスレッドには、☆が一つ付いている。
「そ、それでね、僕、荷物運びを任命されたんだ」
「え? 一人で?」
驚き聞くリナに、そうだと静かにエストキラは頷いた。
契約を交わし、ブレスレッドを授かった時点で、拒否する事はできない。いやなら最初からスキルを授かりに来なければいいという考え方だからだ。望んだのは、自分自身。
「なんとか今回乗り越えるのよ」
「乗り越えるって?」
「生き延びるって事よ。ここは村だからギルドはないけど、街にはあるの」
「それは聞いた事あるけど……」
「色んなギルドがあって、そこに登録できれば神殿の仕事を受けなくてもいいのよ。しかも選べるらしいの」
「はぁ……」
つまりは、ギルドの仕事を受けるという事だ。そうすれば、強制的に危ない仕事を受けなくてもいいという理屈だった。
「ありがとう。でも三日はかかるからたどり着く前にモンスターにやられちゃうかも」
「歩いて行く気?」
「うん」
「三日じゃ行けないわよ」
「え!?」
”行けないの?”
エストキラは、村から出た事がなかった。モンスターの話も街の話も全て人伝に聞いた話だ。
「馬車で3時間かかるのよ? 普段歩いていないあなたが三日で行けるわけないでしょう」
「………」
”本当にあったんだ。切り捨て……”
いらないスキルを持った者を処分する為に、わざとできない仕事を与える。そんな噂も聞いた事があった。
スキル持ちは、仕事をしてお金を貰う生活だ。雇い主でもある神殿は、スキル持ちに仕事を与えその見返りにお金をあげなくてはいけない。
「ついてきて。あ、その前にスコップある?」
「何する気?」
「恩返し」
「恩返し?」
オウム返しをすると、微笑んで頷いた。
リナとエストキラは隣同士で、同じ畑を使って生活していた。二年前リナの両親が病気で亡くなった。お金がないリナの両親は、病院に行けないどころか薬さえ買えなかったのだ。
その後、リナはスキル持ちになる一年の間、エストキラの家族と一緒に生活をした。
両親が亡くなった後、スキル持ちになって恩返しすると、神殿に通うようになる。それにエストキラが付き合う形で一緒に行っていたのだが、本当にリナがスキルを授かり、エストキラも本気でスキルがほしいと願うようになった。
リナは、神殿入りする事になり思っていた仕事と違った為、恩返しができていなかったのだ。
「別にいいのに。十分返してもらったから」
本当は、お給料の一部をエストキラの家族に渡したかったが、スキル持ちではない家族以外の者にお金を渡す事が禁じられていた。その為、ちょっとした食べ物を持って行ったりするぐらいしかできなかったのだ。
エストキラは、そういつつも貰った服を置いてスコップを持って彼女について行く。どこへ行くのかと思えば、家の裏だ。
「ここを掘って」
「ここ?」
なぜにと思いながらもエストキラは、穴を掘っていくと木箱が出てきた。
「え? 木箱?」
「やったぁ。朽ちてない」
「いつ埋めたの?」
「半年前ぐらいかな? まさかこんなに早く渡す日来るなんて」
リナは、小さな木箱を手に取り中からペンダントを取り出す。
「はい。私が半年間祈りを捧げた結界のペンダントよ」
「え!?」
それは、エストキラが手に出来る品物ではない。きっと見る事も叶わないだろう貴重な物だった。
はいと、装備一式を渡された。
商人風の服で、守備力があるとは思えない。それを両手に持ってトボトボと家に向かう。
”お父さんとお母さんになんて言おう”
話を聞けばショックを受けるだろう。両親もエストキラと同じく酪農系を与えられると思っているからだ。
「キラ~!」
”うん? リナだ!”
クルっと振り向けば、手を振って近づく茶色い髪の少女。エストキラと同じ年齢の彼女だが、彼とは違ってつやつやした髪に綺麗な洋服を着ていた。身長なんて、リナの方が高い。
「聞いたわよ。おめでとう」
「……あ、ありがとう」
「あまり嬉しそうじゃなさそうね」
「……うん。まあ。オプションだからね」
「え、あのオプション?」
「そう。あのオプション」
二人は、話しながら歩く。
リナは、1年前に祈りと炎のスキルを授かった。エストキラとは違い、最初からグレード3。彼女はピンク色のブレスレットをしている。
グレード2からは、スキル系統で色分けされていた。赤が戦闘系、青が製造系、黄がサポート系、ピンクが神殿入り。そして、グレード3からはブレスレッドに☆がつけられ、グレードが上がると☆の数も増えていく。
リナのブレスレッドには、☆が一つ付いている。
「そ、それでね、僕、荷物運びを任命されたんだ」
「え? 一人で?」
驚き聞くリナに、そうだと静かにエストキラは頷いた。
契約を交わし、ブレスレッドを授かった時点で、拒否する事はできない。いやなら最初からスキルを授かりに来なければいいという考え方だからだ。望んだのは、自分自身。
「なんとか今回乗り越えるのよ」
「乗り越えるって?」
「生き延びるって事よ。ここは村だからギルドはないけど、街にはあるの」
「それは聞いた事あるけど……」
「色んなギルドがあって、そこに登録できれば神殿の仕事を受けなくてもいいのよ。しかも選べるらしいの」
「はぁ……」
つまりは、ギルドの仕事を受けるという事だ。そうすれば、強制的に危ない仕事を受けなくてもいいという理屈だった。
「ありがとう。でも三日はかかるからたどり着く前にモンスターにやられちゃうかも」
「歩いて行く気?」
「うん」
「三日じゃ行けないわよ」
「え!?」
”行けないの?”
エストキラは、村から出た事がなかった。モンスターの話も街の話も全て人伝に聞いた話だ。
「馬車で3時間かかるのよ? 普段歩いていないあなたが三日で行けるわけないでしょう」
「………」
”本当にあったんだ。切り捨て……”
いらないスキルを持った者を処分する為に、わざとできない仕事を与える。そんな噂も聞いた事があった。
スキル持ちは、仕事をしてお金を貰う生活だ。雇い主でもある神殿は、スキル持ちに仕事を与えその見返りにお金をあげなくてはいけない。
「ついてきて。あ、その前にスコップある?」
「何する気?」
「恩返し」
「恩返し?」
オウム返しをすると、微笑んで頷いた。
リナとエストキラは隣同士で、同じ畑を使って生活していた。二年前リナの両親が病気で亡くなった。お金がないリナの両親は、病院に行けないどころか薬さえ買えなかったのだ。
その後、リナはスキル持ちになる一年の間、エストキラの家族と一緒に生活をした。
両親が亡くなった後、スキル持ちになって恩返しすると、神殿に通うようになる。それにエストキラが付き合う形で一緒に行っていたのだが、本当にリナがスキルを授かり、エストキラも本気でスキルがほしいと願うようになった。
リナは、神殿入りする事になり思っていた仕事と違った為、恩返しができていなかったのだ。
「別にいいのに。十分返してもらったから」
本当は、お給料の一部をエストキラの家族に渡したかったが、スキル持ちではない家族以外の者にお金を渡す事が禁じられていた。その為、ちょっとした食べ物を持って行ったりするぐらいしかできなかったのだ。
エストキラは、そういつつも貰った服を置いてスコップを持って彼女について行く。どこへ行くのかと思えば、家の裏だ。
「ここを掘って」
「ここ?」
なぜにと思いながらもエストキラは、穴を掘っていくと木箱が出てきた。
「え? 木箱?」
「やったぁ。朽ちてない」
「いつ埋めたの?」
「半年前ぐらいかな? まさかこんなに早く渡す日来るなんて」
リナは、小さな木箱を手に取り中からペンダントを取り出す。
「はい。私が半年間祈りを捧げた結界のペンダントよ」
「え!?」
それは、エストキラが手に出来る品物ではない。きっと見る事も叶わないだろう貴重な物だった。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
15歳になった男子は、冒険者になる。それが当たり前の世界。だがクテュールは、冒険者になるつもりはなかった。男だけど裁縫が好きで、道具屋とかに勤めたいと思っていた。
クテュールは、15歳になる前日に、幼馴染のエジンに稽古すると連れ出され殺されかけた!いや、偶然魔物の上に落ち助かったのだ!それが『レッドアイの森』のボス、キュイだった!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~
はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。
俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。
ある日の昼休み……高校で事は起こった。
俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。
しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。
……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
異世界複利! 【1000万PV突破感謝致します】 ~日利1%で始める追放生活~
蒼き流星ボトムズ
ファンタジー
クラス転移で異世界に飛ばされた遠市厘(といち りん)が入手したスキルは【複利(日利1%)】だった。
中世レベルの文明度しかない異世界ナーロッパ人からはこのスキルの価値が理解されず、また県内屈指の低偏差値校からの転移であることも幸いして級友にもスキルの正体がバレずに済んでしまう。
役立たずとして追放された厘は、この最強スキルを駆使して異世界無双を開始する。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる