おまけスキルはマスタースキルによって使い勝手が良くなりました

すみ 小桜(sumitan)

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第3話 恩返し

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 「今日中に出かけてほしい。そして三日以内に届けるように。着替えたら荷物を取りに来るように」

 はいと、装備一式を渡された。
 商人風の服で、守備力があるとは思えない。それを両手に持ってトボトボと家に向かう。

 ”お父さんとお母さんになんて言おう”

 話を聞けばショックを受けるだろう。両親もエストキラと同じく酪農系を与えられると思っているからだ。

 「キラ~!」

 ”うん? リナだ!”

 クルっと振り向けば、手を振って近づく茶色い髪の少女。エストキラと同じ年齢の彼女だが、彼とは違ってつやつやした髪に綺麗な洋服を着ていた。身長なんて、リナの方が高い。

 「聞いたわよ。おめでとう」
 「……あ、ありがとう」
 「あまり嬉しそうじゃなさそうね」
 「……うん。まあ。オプションだからね」
 「え、あのオプション?」
 「そう。あのオプション」

 二人は、話しながら歩く。
 リナは、1年前に祈りと炎のスキルを授かった。エストキラとは違い、最初からグレード3。彼女はピンク色のブレスレットをしている。

 グレード2からは、スキル系統で色分けされていた。赤が戦闘系、青が製造系、黄がサポート系、ピンクが神殿入り。そして、グレード3からはブレスレッドに☆がつけられ、グレードが上がると☆の数も増えていく。
 リナのブレスレッドには、☆が一つ付いている。

 「そ、それでね、僕、荷物運びを任命されたんだ」
 「え? 一人で?」

 驚き聞くリナに、そうだと静かにエストキラは頷いた。
 契約を交わし、ブレスレッドを授かった時点で、拒否する事はできない。いやなら最初からスキルを授かりに来なければいいという考え方だからだ。望んだのは、自分自身。

 「なんとか今回乗り越えるのよ」
 「乗り越えるって?」
 「生き延びるって事よ。ここは村だからギルドはないけど、街にはあるの」
 「それは聞いた事あるけど……」
 「色んなギルドがあって、そこに登録できれば神殿の仕事を受けなくてもいいのよ。しかも選べるらしいの」
 「はぁ……」

 つまりは、ギルドの仕事を受けるという事だ。そうすれば、強制的に危ない仕事を受けなくてもいいという理屈だった。

 「ありがとう。でも三日はかかるからたどり着く前にモンスターにやられちゃうかも」
 「歩いて行く気?」
 「うん」
 「三日じゃ行けないわよ」
 「え!?」

 ”行けないの?”

 エストキラは、村から出た事がなかった。モンスターの話も街の話も全て人伝に聞いた話だ。

 「馬車で3時間かかるのよ? 普段歩いていないあなたが三日で行けるわけないでしょう」
 「………」

 ”本当にあったんだ。切り捨て……”

 いらないスキルを持った者を処分する為に、わざとできない仕事を与える。そんな噂も聞いた事があった。
 スキル持ちは、仕事をしてお金を貰う生活だ。雇い主でもある神殿は、スキル持ちに仕事を与えその見返りにお金をあげなくてはいけない。

 「ついてきて。あ、その前にスコップある?」
 「何する気?」
 「恩返し」
 「恩返し?」

 オウム返しをすると、微笑んで頷いた。
 リナとエストキラは隣同士で、同じ畑を使って生活していた。二年前リナの両親が病気で亡くなった。お金がないリナの両親は、病院に行けないどころか薬さえ買えなかったのだ。
 その後、リナはスキル持ちになる一年の間、エストキラの家族と一緒に生活をした。

 両親が亡くなった後、スキル持ちになって恩返しすると、神殿に通うようになる。それにエストキラが付き合う形で一緒に行っていたのだが、本当にリナがスキルを授かり、エストキラも本気でスキルがほしいと願うようになった。

 リナは、神殿入りする事になり思っていた仕事と違った為、恩返しができていなかったのだ。

 「別にいいのに。十分返してもらったから」

 本当は、お給料の一部をエストキラの家族に渡したかったが、スキル持ちではない家族以外の者にお金を渡す事が禁じられていた。その為、ちょっとした食べ物を持って行ったりするぐらいしかできなかったのだ。

 エストキラは、そういつつも貰った服を置いてスコップを持って彼女について行く。どこへ行くのかと思えば、家の裏だ。

 「ここを掘って」
 「ここ?」

 なぜにと思いながらもエストキラは、穴を掘っていくと木箱が出てきた。

 「え? 木箱?」
 「やったぁ。朽ちてない」
 「いつ埋めたの?」
 「半年前ぐらいかな? まさかこんなに早く渡す日来るなんて」

 リナは、小さな木箱を手に取り中からペンダントを取り出す。

 「はい。私が半年間祈りを捧げた結界のペンダントよ」
 「え!?」

 それは、エストキラが手に出来る品物ではない。きっと見る事も叶わないだろう貴重な物だった。

 
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