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005ビアンカと一緒!

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 式典が終わった後、そのまま試験をやるみたい。
 皆壁側に寄って、二人ずつ前に出て行う。
 席順らしく、ビアンカと一緒なんですけど!

 あぁ、どんな感じか眺めたかったのに。
 というか、ビアンカと一緒だなんて……やりづらいんですけど!

 あれでもこの試験、中等部から入る人だけみたい。
 という事は、アイスハルト殿下は行わない?
 あれ? じゃあれはいつ……あぁ、最初の授業だ!

 「リンさん。始めて下さい」
 「あ! はい。すみません……」

 つい思い出して考え込んでいた。
 ちらっと隣を見れば、ビアンカがいとも簡単に魔法陣を描いている。
 思ったんだけど、ゲームの中で簡単にやってはいたけど、私出来るのこれ?

 魔法は、大きく分けて三つ。炎、水、風。
 魔力があるものは、どれかが使える。稀に三種類とも使える者もいて、王族は三種類使える事になっていた。
 ビアンカは、確か炎だけ使えなかったはず。

 自分はどうか知らない……。
 取りあえず渡された杖で目の前の空中に円を描く。能力のある人は、この中に略式を描くだけで魔法が使える。

 「おぉ!!」

 ざわめきが聞こえ横を見ると、ビアンカが水を出し空中に浮かせていた。風の魔法も使えるから出来る業だったはず。
 それ、見せつけられちゃうと、本当にやりづらい……。

 もう渡された紙を見ながら描くのもめんどい。
 うん? あれ? 一瞬頭に図形が浮かんだ――。気が付いたら描いていた!
 って、風魔法!!

 「何これ……」

 一応結界の中でやっているから被害はなかったけど、小さなトルネードが出現!
 隣から視線を感じ振り向くと、驚いたビアンカと目が合っちゃった。
 あれ? ビアンカと同じぐらい目立っちゃった?

 うん? あれは!
 なぜリュデロさんが、思いっきり拍手しているのよ! 帰ったんじゃなかったの?

 「あの……一応、他の魔法もお願いします」

 そう係りの人に言われ、ハッとする。
 リュデロさんだけじゃなく、周りから注目されていた。
 き、緊張する。

 「えっと、次は水ね」

 円を描く。紙を見て描こうとするもまた、頭に浮かんだ。そして、またできちゃったんだけど!!
 しかも霧……。
 結界の中は視界ゼロになった。どうなってるの?

 「大丈夫ですか?」
 「あ、はい」

 あ! この人! 担任になるダールドマル先生!
 勿論、私じゃなくてビアンカ達の特進クラスの先生。
 眼鏡を掛けたその奥の瞳は、魔眼。なんでも魔力を見る事が出来るらしい。
 魔と言うと黒をイメージするけど、髪も瞳も藍色。
 それでずっと魔力を見ていると酔うらしいから、普段は眼鏡を掛けて見えなくしているという設定。

 「君は危なっかしいから私がつく」
 「え? あ、はい……」
 「ところで君、さっきの術式、どこで会得した?」

 ぼそっと囁かれた。
 どこと聞かれても記憶がないからわからない。
 でも私って、すごかったのね! たぶん。
 取りあえず、覚えてませんと答えておいた。本当の事だしね。

 そして最後に、炎の魔法陣を展開。また頭に浮かんだのを描くと、炎が出現!
 って、すぐさまダールドマル先生に消された……。
 こうして、試験は何とか終わり、なんと私もビアンカと同じ特進クラスになっちゃった!
 これで、心置きなく近くで鑑賞が出来るのね!

 でも私はこの時知らなかった。ビアンカに向けられる目と同じ視線を向けられる事になる事を――。
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