どうやら俺は、未来のキスで魔法をかけられたみたいです

すみ 小桜(sumitan)

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第8話

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 男がドアを開け、中へ入ろうとする。
 どん!
 なんと、ディーが体当たりした!
 ピピピっと、男の手から鳥が飛んで行く。
 なんで鳥なんか……。

 「早く中に!」

 そうだった! 鳥を見ている場合じゃない。確認しないと。

 「きさま! 何をするんだ! 鳥が逃げただろうが!」
 「その鳥、何に使う気だったの?」

 ディーが男に問うが、相手は何も答えない。
 そんなやり取りをしている横を俺は通り抜け、小屋の中へ入って行く。

 「あ、待て!」

 俺に気づいた男が叫ぶ。

 小屋の奥に小さな魔法陣がある!
 俺は近づいて見下ろした。
 
 「何やってるのさ! 早く触れて消して!」
 「わかった!」
 「何!? やめろ!」
 「うぎゃ」

 男が俺にダイビングしてきた!
 俺は、男の下敷きに……。

 「きさまよくも!」

 男は俺に馬乗りになり、上から肩を抑えている。
 どうやら魔法陣の上に倒れたらしく、魔法陣は無事消え去った。けど……俺は無事じゃないなぁ。
 おかしい。予知夢では向き合って組み敷かれていたはずなのに、今はうつ伏せに押さえ込まれているんだけど!

 「もう何やっているのさ!」

 ディーが、呆れた様に俺に言った。
 ここは、「大丈夫?」とか、「今助けるからね!」だろうが……。

 「まさか魔物ハンターが本当にいるなんてな!」

 あぁこの台詞。ちょっと違うけど予知夢通りだよ。とほほ……。

 「もう少し考えて行動してよね! せっかく予知夢で情報あるんだからさ」
 「予知だと! へぇ……」

 男がにやりとするのがわかった。
 こいつもしかして、俺に何か予知させてよからぬ事をさせようと、考えていないか?
 うん? あれ? なぜか体が動かない。
 男に押さえつけられている場所じゃない足とかも、全く動かないんだけど!

 「えーと。縄とかないかな? おぉ、あった!」

 ディーが俺達の隣に来た。
 男は何も言わないし、ディーに対し何もしていない様子だ。
 そして、俺の背中は軽くなり、それと同時に束縛が消えた。
 どかっと言う音と共に、男のうめき声が聞こえて男に振り返ると、縄でグルグル巻きにされた男が寝ころんでいた。

 「お前、蹴ったのか?」
 「縄縛って、手が疲れたからね」
 「束縛の魔法みたいの使ったよな?」
 「うん。それにしても要領悪すぎない? 毎回これだと僕、疲れるんだけど」
 「あ、ごめん。……って、そういう魔法を使えるなら最初から使えよな!」

 突き飛ばさなくても束縛すればよかったんじゃないか!

 「えー。そうしたらあの小鳥にもかかちゃうからさ」
 「俺も一緒に掛かりましたが?」
 「それは、自分が悪いんでしょ?」

 俺が悪いんかい!

 「あ、もしかして、ディーも縛ってほしかった? でももう縄はないんだよねぇ」
 「そんなわけあるか!」

 あはははと、ディーは冗談だと笑った。
 初仕事は、何とか成功したけど、さてこの男はどうしようか。
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