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第三話

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 困りました。この頃プレゼント攻めです。しかも私が欲しいものなのです。いえ、もっと困っているのは、結婚の日取りを決めたいと言ってきた事です。
 どうやら私の親がリヤルド様にプッシュしたようなのですが、それで話を進めてどうするのですか!

 「シラーヌ嬢」
 「ヒメリ嬢」

 ぼんやりと考え事をしていたらヒメリ嬢が久しぶりに現れた。婚約してからは、ここには来なかったのに。

 「驚きましたわ。シラーヌ嬢もリヤルド様とご婚約なされたとか」
 「え? あ、えーと」
 「よかったですわ。うまくいって」

 うまく?
 まさか、私がリヤルド様を好いていると思っていたのでしょうか?

 「あの……」
 「見ていたらわかりそうなものなのに、気づかないのですもの。うふふ」

 とキラキラした瞳で、私を覗き込んできたのです。

 私って、彼を好きだったの? 傍から見てそう見える態度を示していたのでしょうか? 嫌いではありません。いえむしろ、他の男性の中で一番仲良く……まさか、本当に私はリヤルド様をいつの間にか好きになっていたのでしょうか。

 いえ、そんなはずありませんわ!



 「シラーヌ嬢? 僕の顔に何かついていますか?」

 気が付けば、リヤルド様の顔を凝視しておりました。
 私は彼を好きになったのかしら? だとしたらどこに惹かれたのでしょう?
 優しく気遣いができ、一歩引いて相手を立て……あれ? これ女性がするものではないでしょうか?

 えーと、押しに弱く自分の意思を強く押し通せない――。
 これは長所と言いにくいわね。いえ、どちらかというと短所。
 でも総合的に見ると、良い方だわ。

 この頃一緒に居て思いますもの。
 優しく傍にいるだけで安心できる方。そうね。そういう方がいいのかもしれませんね。
 だったら好きになっていても不思議ではない。

 「どうしたのです? ご気分でも悪いですか?」
 「いえ……」

 今頃気づいてどうするのですか……。
 最後には、別れる運命だというのに。
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