貧乏令嬢は下剋上を目指す

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
上 下
4 / 8

第四話

しおりを挟む
 場所を移して、ハニード殿下と側近の男性と私の三人でお茶を飲む事になりました。
 そうそう、クロは私の膝の上です。
 ここでは、ハニード殿下は、ニッコリとしておりません。どちらかと言うと、ムッとしているご様子。
 私と居るのが嫌ならば、何故招待したのですか?
 断れないのがわかっているのに。

 「お願いがあるのだが……」

 そうハニード殿下が呟いた。しかも顔は、不服そうです。

 「何でしょうか?」

 「クロージュのお世話係をして頂けないだろうか?」

 うん? クロのお世話?
 それを頼むがそんなに不服なのでしょうか?

 「私にですか?」

 「クロージュは、本来、主人にしか懐かないはずなのだが、何故か私に懐かなくて困っていたところだったのです」

 自分に懐かないのに、私にべったりなのが不服でしたのね。
 これ受けても受けなくても、私はハニード殿下に恨まれますわね……。
 だったら――。

 「それは、お仕事という事でしょうか?」

 「うん?」

 私の質問に、二人は驚いた顔を見せた。言っている意味がわからないと言う顔です。

 「お金を頂けるのならお受けしますという事です。招待状を送って来たのですから家の事は、ご存知なのですよね?」

 「驚いたな。そんな交渉してこようとはな。いいだろう。ただし、仕事でというのなら住み込みで行って頂く」

 「殿下!?」

 ハニード殿下の条件に私も驚いたけど、隣に座る側近も驚いている。
 でもこれは、受けない訳にはいきませんわね。
 犬のお世話を住み込みでなんて、流石発想が王族ですわ!

 「わかりました。お受けします。ですが、今お仕事をしている所がありますので、一日待って頂けますか?」

 「いいだろう。ザン、後の事は任せた。クロージュ、おいで」

 彼は、ザンさんと言うのですか。……あ、またハニード殿下の顔が険しく。

 「クロ、明日の夜には行きますから先に待っていて下さい」

 顔を上げたクロは、撫でていた手を舐めた。
 わかってくれたみたいね。
 立ち上がったクロを見て、何故か更にハニード殿下は顔を険しくされた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした

基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。 その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。 身分の低い者を見下すこともしない。 母国では国民に人気のあった王女だった。 しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。 小国からやってきた王女を見下していた。 極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。 ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。 いや、侍女は『そこにある』のだという。 なにもかけられていないハンガーを指差して。 ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。 「へぇ、あぁそう」 夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。 今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

勝手にしなさいよ

恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!

貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

処理中です...