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第82話
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「あぁ! レオンス! 無事でよかったわ」
「ご心配かけました」
屋敷に着くと、タカビーダ侯爵夫人が抱き着きそうな勢いで駆け寄って来た。
「兄上の無事な姿を確認出来たし、これで一安心だ。うん? もう一人?」
アマート様が、最後に降りて来たフロール嬢を見て不思議そうに呟く。
「私のクラスメイトのフロール嬢です」
「初めまして。お邪魔します」
「まあ。もう一人のご令嬢ね。では、紅茶を。もちろん、ケーキも用意するわよ」
「ありがとうございます」
「やれやれ」
目をキランとさせ嬉々としてお礼を言うと、隣で呆れ声。
珍しくアマート様も混ざり茶会が開催された。
そこで、暗殺疑惑はなくなったと伝えると安堵を見せる。
その後、三人で研究室に移動した。
「へえ。ここが愛の巣ね」
「愛の巣!?」
「「顔が真っ赤」」
「もう、二人共からかわないでよ」
なんで息ぴったりなのよ。
フロール嬢が一通り見て回ってからソファーに座った。
あたりまえの様に、私の隣にレオンス様が座る。
「ナタリオ様が犯人だとして、どうして本当の理由がわかったのかしら? ゲームでは語れなかったのに」
フロール嬢が、座った途端ズバッと聞いてきた。
「俺は、君達より他国の事を知っているからな」
やっぱり勉強して知った知識で推理したのね。凄いわ。
「でも、違ったらどうするのよ」
「違うわけないだろう。だいたい、犯人はゲームと同じ奴なんだから。そいつからしか狙われる事はない」
「狙いが私だとは限らないのでは?」
「あのな。俺を殺してもアマートがいるんだぞ? もしファビアを狙ったとして理由は? 俺の婚約者になる為に狙ったのなら俺を巻き込むのはおかしいだろう」
「まあ、そうね」
フロール嬢は、頷く。
レオンス様の言う通り、ゲームと同じ理由で狙われたという結論になるわね。
「で、どうして犯人がナタリオ様だと伝えただけで理由がわかったの?」
「いや、それだけではない。マルシアール殿下は関係ないって事で判明した」
「え? そうなの」
「それって、個人的な恨み的な?」
フロール嬢が驚いて聞く。
王女の子で個人の恨みって何?
「まずは順を追って話すな。ゲームでの話を聞いた時にナタリオ様が捕まったけど、本当の理由は言わなかった。そもそも亡命した者を探し出したとして、暗殺命令が出ていなければいきなり殺そうとしないだろう。命令が出ていれば、マルシアール殿下に言わずに行動したとしても殿下も知るところとなる」
「なんか、そこだけ聞くと乙女ゲームではないみたいね」
私が言うと、だろうなとレオンス様が返してきた。
「襲うシナリオを作ったとしても理由付けだろう。でないと、この世界はあべこべになっているだろうけど。そうでもないし。つまり、罪を犯せば罰せられるって事な」
「まあそうね。ガムン公爵もベビット殿下もそうなったわ」
フロール嬢の言葉にそうねと私も頷く。
「だとすれば、ナタリオ様自身にフロール嬢を殺す動機を持たせているって事だ。陛下とフロール嬢の密会を盗み見た。本来ならあり得ない状況だが、そこがシナリオの影響なのだろうな」
「なるほど。だから時期が早まった。という事は、狙う理由はやっぱり亡命した王女の子だから?」
私の問いにレオンス様は、そうだと頷く。
「本当の理由は違うけど、それが王女の子だった。もっと言えば、亡命云々は関係ない」
「「え!?」」
どういう事?
「ファビアは、付け焼き刃で習ったから他国の事はサラッとだろう。フロール嬢も学園で好成績を得る為の勉強だから、これもまたサラッとだろう。だから知らない」
「もう、そんな前置きはいいから教えてよ」
私が抗議すれば、フロール嬢も頷く。
「わかってるって。エイデース帝国の王弟が下る先の貴族は、女性が主人になるんだ。王弟に権力を持たせない為だろうな」
そう言えば、ナタリオ様にそんな事を言っていたわね。そこの貴族だろうって。
「なので、本来ならナタリオ様は後継ぎではない。けど、実子は彼しかいないんだ。養子とするにしても直系から。その直系だが、実は兄がいてディードアウト王国の第二王女の婿になっている。本人も子も死亡したと思っていた。だから特例で彼が継ぐ。まあ王族が継ぐための制度みたいなものだしな。今回は彼が継いでも問題ない」
「え!」
「もしかして、その子供が私?」
「そういう事。まあこれは感だけどな。何せ、母親の名前を聞いていないし。けど、これしか思い当たらない」
感って! でもそれって、フロール嬢が生きていると邪魔だから殺そうとしたって事よね。本当に個人的な事だったぁ!
「だが、ナタリオ様に言ったけど、ガムン公爵の隠し子となっているんだ。それを養子にって事にはならない。いや出来ない。なぜなら、ディードアウト王国が魔物を解放しようとしていた事は本当だったから。きっと逃がされた王女は、悪事に加担していなかった。それ自体も知らなかったのだろう。そして、逃がしたのも嫁いだナタリオ様の叔父だろう。彼は、戦争時死亡した事になっているようだが、裏切り者として罰せられと思われる」
よくそんなストーリー思いつくわね。というか、推理できたわね。恐ろしい頭だわ。
「では私は、エイデース帝国に見つかれば殺される?」
「それはないだろう。フロール嬢は絶対に関わっていないだろう。そして、ガムン公爵の子となっているのに、それこそ戦争でもする気でもなければ、知ったとしても放置するだろうよ。そこまでする価値はない。まあ君が復讐でも企てない限りわな」
「するわけないでしょう!」
「本当にクソみたいなストーリーを考えるもんだ。ただ俺にも少し責任があるからな。フロール嬢に話してやってくれって俺が頼んだからな」
そう言えばそうだ。ナタリオ様が知る機会を作ってしまった。
でも3年生になれば、知る機会が出来たかもしれないけどね。
「ご心配かけました」
屋敷に着くと、タカビーダ侯爵夫人が抱き着きそうな勢いで駆け寄って来た。
「兄上の無事な姿を確認出来たし、これで一安心だ。うん? もう一人?」
アマート様が、最後に降りて来たフロール嬢を見て不思議そうに呟く。
「私のクラスメイトのフロール嬢です」
「初めまして。お邪魔します」
「まあ。もう一人のご令嬢ね。では、紅茶を。もちろん、ケーキも用意するわよ」
「ありがとうございます」
「やれやれ」
目をキランとさせ嬉々としてお礼を言うと、隣で呆れ声。
珍しくアマート様も混ざり茶会が開催された。
そこで、暗殺疑惑はなくなったと伝えると安堵を見せる。
その後、三人で研究室に移動した。
「へえ。ここが愛の巣ね」
「愛の巣!?」
「「顔が真っ赤」」
「もう、二人共からかわないでよ」
なんで息ぴったりなのよ。
フロール嬢が一通り見て回ってからソファーに座った。
あたりまえの様に、私の隣にレオンス様が座る。
「ナタリオ様が犯人だとして、どうして本当の理由がわかったのかしら? ゲームでは語れなかったのに」
フロール嬢が、座った途端ズバッと聞いてきた。
「俺は、君達より他国の事を知っているからな」
やっぱり勉強して知った知識で推理したのね。凄いわ。
「でも、違ったらどうするのよ」
「違うわけないだろう。だいたい、犯人はゲームと同じ奴なんだから。そいつからしか狙われる事はない」
「狙いが私だとは限らないのでは?」
「あのな。俺を殺してもアマートがいるんだぞ? もしファビアを狙ったとして理由は? 俺の婚約者になる為に狙ったのなら俺を巻き込むのはおかしいだろう」
「まあ、そうね」
フロール嬢は、頷く。
レオンス様の言う通り、ゲームと同じ理由で狙われたという結論になるわね。
「で、どうして犯人がナタリオ様だと伝えただけで理由がわかったの?」
「いや、それだけではない。マルシアール殿下は関係ないって事で判明した」
「え? そうなの」
「それって、個人的な恨み的な?」
フロール嬢が驚いて聞く。
王女の子で個人の恨みって何?
「まずは順を追って話すな。ゲームでの話を聞いた時にナタリオ様が捕まったけど、本当の理由は言わなかった。そもそも亡命した者を探し出したとして、暗殺命令が出ていなければいきなり殺そうとしないだろう。命令が出ていれば、マルシアール殿下に言わずに行動したとしても殿下も知るところとなる」
「なんか、そこだけ聞くと乙女ゲームではないみたいね」
私が言うと、だろうなとレオンス様が返してきた。
「襲うシナリオを作ったとしても理由付けだろう。でないと、この世界はあべこべになっているだろうけど。そうでもないし。つまり、罪を犯せば罰せられるって事な」
「まあそうね。ガムン公爵もベビット殿下もそうなったわ」
フロール嬢の言葉にそうねと私も頷く。
「だとすれば、ナタリオ様自身にフロール嬢を殺す動機を持たせているって事だ。陛下とフロール嬢の密会を盗み見た。本来ならあり得ない状況だが、そこがシナリオの影響なのだろうな」
「なるほど。だから時期が早まった。という事は、狙う理由はやっぱり亡命した王女の子だから?」
私の問いにレオンス様は、そうだと頷く。
「本当の理由は違うけど、それが王女の子だった。もっと言えば、亡命云々は関係ない」
「「え!?」」
どういう事?
「ファビアは、付け焼き刃で習ったから他国の事はサラッとだろう。フロール嬢も学園で好成績を得る為の勉強だから、これもまたサラッとだろう。だから知らない」
「もう、そんな前置きはいいから教えてよ」
私が抗議すれば、フロール嬢も頷く。
「わかってるって。エイデース帝国の王弟が下る先の貴族は、女性が主人になるんだ。王弟に権力を持たせない為だろうな」
そう言えば、ナタリオ様にそんな事を言っていたわね。そこの貴族だろうって。
「なので、本来ならナタリオ様は後継ぎではない。けど、実子は彼しかいないんだ。養子とするにしても直系から。その直系だが、実は兄がいてディードアウト王国の第二王女の婿になっている。本人も子も死亡したと思っていた。だから特例で彼が継ぐ。まあ王族が継ぐための制度みたいなものだしな。今回は彼が継いでも問題ない」
「え!」
「もしかして、その子供が私?」
「そういう事。まあこれは感だけどな。何せ、母親の名前を聞いていないし。けど、これしか思い当たらない」
感って! でもそれって、フロール嬢が生きていると邪魔だから殺そうとしたって事よね。本当に個人的な事だったぁ!
「だが、ナタリオ様に言ったけど、ガムン公爵の隠し子となっているんだ。それを養子にって事にはならない。いや出来ない。なぜなら、ディードアウト王国が魔物を解放しようとしていた事は本当だったから。きっと逃がされた王女は、悪事に加担していなかった。それ自体も知らなかったのだろう。そして、逃がしたのも嫁いだナタリオ様の叔父だろう。彼は、戦争時死亡した事になっているようだが、裏切り者として罰せられと思われる」
よくそんなストーリー思いつくわね。というか、推理できたわね。恐ろしい頭だわ。
「では私は、エイデース帝国に見つかれば殺される?」
「それはないだろう。フロール嬢は絶対に関わっていないだろう。そして、ガムン公爵の子となっているのに、それこそ戦争でもする気でもなければ、知ったとしても放置するだろうよ。そこまでする価値はない。まあ君が復讐でも企てない限りわな」
「するわけないでしょう!」
「本当にクソみたいなストーリーを考えるもんだ。ただ俺にも少し責任があるからな。フロール嬢に話してやってくれって俺が頼んだからな」
そう言えばそうだ。ナタリオ様が知る機会を作ってしまった。
でも3年生になれば、知る機会が出来たかもしれないけどね。
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