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第77話
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「皆さま、お待たせしました。馬車までお送りします」
兵士が馬車まで誘導してくれる。
王宮内だから必要ないような気もするけどね。
「ルイス!」
「イルデフォンソ殿下。ご心配をおかけいたしました」
「よかった。誤解は解けたようだな」
「いえ……。申し訳ありません。たぶん私は……」
がばっとルイス様は、イルデフォンソ殿下に頭を下げた。
「おいおい。どうした」
「イルデフォンソ殿下。少し彼とお話なさってはどうですか?」
ナタリオ様がそう進言すると、そうするといいとマルシアール殿下が頷く。
「ルイス。話を聞こう」
ルイス様がチラッと私達を見た。レオンス様が頷くと、イルデフォンソ殿下御一行は、この場を離れた。
「お待ちになりますか」
「いや。私達三人は同じ馬車だが、彼は違うので」
「わかりました」
兵士にルイス様を待たないとレオンス様は返事を返す。
早く聞きたいのね。
まあ、レオンス様が言う通り、馬車は別だけど。
「では私達はこれで失礼します」
レオンス様が、マルシアール殿下達に礼をすると、私達も習って礼をした。
「あぁ。気を付けて。詳細は陛下に聞くよ」
マルシアール殿下達に見送られ、タカビーダ侯爵家の馬車で帰路に就く。しかも、御者にゆっくりとと伝えて。
「さて、聞こうか。魔法で外には漏れない」
私の横に座るレオンス様は、いつも通り足を組みリラックスした状態だ。
目の前に座るフロール嬢は苦笑い。
「一応、これから凄い話をするのだけどね」
「わかってるけど、聞いておくだけだから。まあ戦争が起きるかもって言う話なら手を打たないといけないかもしれないが」
「戦争ね。関係なくはないわね」
「「え!」」
私達が驚くと、フロール嬢はクスクスと笑う。
「脅すなよ」
「ごめんなさい。ゲームでは戦争は起こらないわ。でも、戦争も関係ある話なのよ」
「思ったより壮大な話になりそうだな」
フロール嬢は、目線を馬車の外へと移すと話し出した。
「まずは、ガムン公爵の娘というのは、ある事をカモフラージュする為のフェイクよ」
「フェイク……」
「そう。あなたみたいな人が私を調べたら行きつくようにしてあるってこと」
レオンス様は、スーッと真顔になった。
「ガムン公爵の隠し子以上の秘め事か、やはりな……」
「陛下には、母親はディードアウト王国から亡命してきた者だと言われたわ」
ディードアウト王国? どこかで聞いたような気がするわ。
「戦争……そうか」
「えぇ、エイデース帝国に滅ぼされた国よ」
あ! ルイス様が言っていた国だわ。そこに魔物が封印されていたって。
「私の母は、この地に着いてすぐに亡くなったそうよ。私の素性を隠す為に、ガムン公爵の隠し子として私を子爵家に預けたってわけ」
「王族の関係者なのか?」
「そこまでは言っていなかったわ。でも母親は、王女様よ」
「本来ならフロール嬢も殿下って呼ばれていたわけか」
まさかのお姫様!
「このストーリーが明かされるのは、アマート様ルートだけよ」
「アマートか。それが俺にすり替わっていたと」
「うーん。微妙に違うわね」
そう言うと、フロール嬢は大きなため息をついた。
「彼は、貴族学園に通わずに魔法学園に通うのよ。だから貴族学園で出会うわけではないの」
「あいつが魔法学園に本当に通うのか。しかし、属性なしだったはずだ。どうしてそうなるんだ」
「貴族学園に行く前に、あなたたちの秘密を両親から聞いたからよ。侯爵である為には、魔法博士になるしかないと思ったわけ」
「にしたって、よく入れたな」
「あら、彼女だって魔力なしなのでしょう」
フロール嬢が私を見た。
アマート様も私と同じ魔力なしの方だったのね。
「彼と出会うのは、3年生になってからよ。ゲームでは、誰のルートにも入らない事が条件。でも普通にしていたら、メインであるイルデフォンソ殿下ルートに入っちゃうのよ」
「ふ~ん。学園でイチャイチャしなければ、アマートと出会うと」
「えぇ。なのに彼女がいるのだもの驚いたわ。しかもアマート様も貴族学園に居て、レオンス様が魔法学園を卒業しているのだもの。もう滅茶苦茶よ」
「そ、それはすまなかったな。こっちも譲れなかったんだ」
「もう、ゲームシナリオなんてないに等しい。だからあなた達にお願いがあるの」
「何? 恋人探し?」
冗談っぽくレオンス様が言うと、フロール嬢がジド目になった。
「私を卒業まで守って欲しいの」
守る? 何から?
私達は、フロール嬢の言葉に顔を見合わせた。
「どういう事だ? 陛下に何か言われたのか?」
違うと首を横に振る。
「アマート様とのであ……きゃぁ!」
「きゃあ!」
「うわぁ」
馬車が大きく揺れた。
馬のいななきが聞こえる。
これって、馬の制御が聞かなくなってる!?
「やばい! 落ちる!」
橋の端に向かっている。つまり柵が途切れたところに向かっているから、このままだと落ちる!
「きゃぁ」
「っく」
レオンス様が、私とフロール嬢を引き寄せた。
馬車が大きく揺れ、レオンス様は壁に叩きつけられたみたい。
「レオンス様!」
「大丈夫だ。御者が上手く捌いたみたいだけど……」
窓から外を見ると、馬車がお尻からずり落ちそうになっている! というか、半分落ちかけていた。
これ馬の力では引っ張れないかも!
がたん!
「マジかよ!」
私達は、馬車ごと川へと落ちていくのだった!
兵士が馬車まで誘導してくれる。
王宮内だから必要ないような気もするけどね。
「ルイス!」
「イルデフォンソ殿下。ご心配をおかけいたしました」
「よかった。誤解は解けたようだな」
「いえ……。申し訳ありません。たぶん私は……」
がばっとルイス様は、イルデフォンソ殿下に頭を下げた。
「おいおい。どうした」
「イルデフォンソ殿下。少し彼とお話なさってはどうですか?」
ナタリオ様がそう進言すると、そうするといいとマルシアール殿下が頷く。
「ルイス。話を聞こう」
ルイス様がチラッと私達を見た。レオンス様が頷くと、イルデフォンソ殿下御一行は、この場を離れた。
「お待ちになりますか」
「いや。私達三人は同じ馬車だが、彼は違うので」
「わかりました」
兵士にルイス様を待たないとレオンス様は返事を返す。
早く聞きたいのね。
まあ、レオンス様が言う通り、馬車は別だけど。
「では私達はこれで失礼します」
レオンス様が、マルシアール殿下達に礼をすると、私達も習って礼をした。
「あぁ。気を付けて。詳細は陛下に聞くよ」
マルシアール殿下達に見送られ、タカビーダ侯爵家の馬車で帰路に就く。しかも、御者にゆっくりとと伝えて。
「さて、聞こうか。魔法で外には漏れない」
私の横に座るレオンス様は、いつも通り足を組みリラックスした状態だ。
目の前に座るフロール嬢は苦笑い。
「一応、これから凄い話をするのだけどね」
「わかってるけど、聞いておくだけだから。まあ戦争が起きるかもって言う話なら手を打たないといけないかもしれないが」
「戦争ね。関係なくはないわね」
「「え!」」
私達が驚くと、フロール嬢はクスクスと笑う。
「脅すなよ」
「ごめんなさい。ゲームでは戦争は起こらないわ。でも、戦争も関係ある話なのよ」
「思ったより壮大な話になりそうだな」
フロール嬢は、目線を馬車の外へと移すと話し出した。
「まずは、ガムン公爵の娘というのは、ある事をカモフラージュする為のフェイクよ」
「フェイク……」
「そう。あなたみたいな人が私を調べたら行きつくようにしてあるってこと」
レオンス様は、スーッと真顔になった。
「ガムン公爵の隠し子以上の秘め事か、やはりな……」
「陛下には、母親はディードアウト王国から亡命してきた者だと言われたわ」
ディードアウト王国? どこかで聞いたような気がするわ。
「戦争……そうか」
「えぇ、エイデース帝国に滅ぼされた国よ」
あ! ルイス様が言っていた国だわ。そこに魔物が封印されていたって。
「私の母は、この地に着いてすぐに亡くなったそうよ。私の素性を隠す為に、ガムン公爵の隠し子として私を子爵家に預けたってわけ」
「王族の関係者なのか?」
「そこまでは言っていなかったわ。でも母親は、王女様よ」
「本来ならフロール嬢も殿下って呼ばれていたわけか」
まさかのお姫様!
「このストーリーが明かされるのは、アマート様ルートだけよ」
「アマートか。それが俺にすり替わっていたと」
「うーん。微妙に違うわね」
そう言うと、フロール嬢は大きなため息をついた。
「彼は、貴族学園に通わずに魔法学園に通うのよ。だから貴族学園で出会うわけではないの」
「あいつが魔法学園に本当に通うのか。しかし、属性なしだったはずだ。どうしてそうなるんだ」
「貴族学園に行く前に、あなたたちの秘密を両親から聞いたからよ。侯爵である為には、魔法博士になるしかないと思ったわけ」
「にしたって、よく入れたな」
「あら、彼女だって魔力なしなのでしょう」
フロール嬢が私を見た。
アマート様も私と同じ魔力なしの方だったのね。
「彼と出会うのは、3年生になってからよ。ゲームでは、誰のルートにも入らない事が条件。でも普通にしていたら、メインであるイルデフォンソ殿下ルートに入っちゃうのよ」
「ふ~ん。学園でイチャイチャしなければ、アマートと出会うと」
「えぇ。なのに彼女がいるのだもの驚いたわ。しかもアマート様も貴族学園に居て、レオンス様が魔法学園を卒業しているのだもの。もう滅茶苦茶よ」
「そ、それはすまなかったな。こっちも譲れなかったんだ」
「もう、ゲームシナリオなんてないに等しい。だからあなた達にお願いがあるの」
「何? 恋人探し?」
冗談っぽくレオンス様が言うと、フロール嬢がジド目になった。
「私を卒業まで守って欲しいの」
守る? 何から?
私達は、フロール嬢の言葉に顔を見合わせた。
「どういう事だ? 陛下に何か言われたのか?」
違うと首を横に振る。
「アマート様とのであ……きゃぁ!」
「きゃあ!」
「うわぁ」
馬車が大きく揺れた。
馬のいななきが聞こえる。
これって、馬の制御が聞かなくなってる!?
「やばい! 落ちる!」
橋の端に向かっている。つまり柵が途切れたところに向かっているから、このままだと落ちる!
「きゃぁ」
「っく」
レオンス様が、私とフロール嬢を引き寄せた。
馬車が大きく揺れ、レオンス様は壁に叩きつけられたみたい。
「レオンス様!」
「大丈夫だ。御者が上手く捌いたみたいだけど……」
窓から外を見ると、馬車がお尻からずり落ちそうになっている! というか、半分落ちかけていた。
これ馬の力では引っ張れないかも!
がたん!
「マジかよ!」
私達は、馬車ごと川へと落ちていくのだった!
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