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第72話
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「さて、この契約書をどう説明するつもりだ」
ガムン公爵が、にやりとして言う。
「身に覚えがありません」
「私もです。それに研究室にあったのもおかしいと思いませんか?」
「逆に安全だと思ったのだろう」
捏造したぐらいだから、筆跡も真似てあるわよね。どうしよう。
「ファビア。君が大切な物はどこに保管してある」
あ、そっか。あれね!
「陛下! 録音したものが他にもあります。それは研究室にではなく、屋敷にあるのです。リサおばあ様に言えば、場所がわかるのですぐにここへ届けて下さると思います」
「そ、そんなもの、証拠になるか!」
「なります! 今日も身に着けていたのですから、あの時も身に着けていたのです」
「あの時だと……」
「はい。フロール嬢が言っている学園舞踏会の当日です」
ガムン公爵がハッとする。
私達が言っている事が本当だと悟ったのでしょうけど、すでに遅しよ。
「すぐに連絡せよ」
「っは」
陛下が兵士に命令を下し、兵士は部屋から出て行った。
「しかし、契約書がある。これはどうする? あくまでもファビア嬢が作った証にしかならないだろう」
「えぇ。でも、フロール嬢が言っている事が違うと証明ができます」
ガムン公爵の顔色が変わった。
フロール嬢からどう聞いているかわからないけど、事実と全然違うのだからでたらめだと証明できる。
そうなれば、フロール嬢をこの場に引きずり出せるわ。
「そうだ。ちなみにこの前の録音ありましたか?」
レオンス様が、ニヤリとして聞く。
「これではないのか」
陛下が、張りぼての魔法アイテムを指さす。
「いいえ。私の部屋にはそんな物はなかったです」
「処分したのか」
陛下の問いにルイス様は違うと首を横に振った。
「あの後、レオンス様に話を聞き魔法陣はお返ししました」
「な……」
ガムン公爵が、目を見開く。そして、そのまま私の方を向いた。凄い睨みつけられた。
「それが本当ならこの契約書があるのはおかしいな」
そう陛下が呟く。
そうです! おかしいのです。
「それと疑問なのですが、魔法関係の物を持ち出してきたのですよね? なぜ、魔法陣が一枚もないのでしょうか」
そうルイス様が兵士に問いかけた。
「え? そ、それは……」
「もし、燃やしたなどと言うのならガムン公爵の命だと言え、あなたを訴えますからね」
「え……」
「何を言う! 私がそんな命令をするわけないだろう!」
兵士もガムン公爵も慌てている。
研究室の魔法陣の類は全て屋敷に持って行ったはず。
レオンス様が言った通り、燃やすのね。
もし万が一、仕掛けて来た場合は、証拠を探すと言って逆に証拠隠滅を図ろうとするだろう。
だが、兵士が魔法陣を見て判別できるわけもない。
だから見つからなかったとして、全て魔法陣を処分するだろう。紙なら燃やせば済むのだから。
とレオンス様が言った。
その通りだったみたいね。
ルイス様の部屋には、わざとどうでもいい魔法陣を置いておいた。持ってこられても証拠にすらならない魔法陣をね。
「では待っている間、今持っているその魔法陣が本物か検証しようではないか」
「はい。構いません。ですが聞く為には魔法、いえ魔力を使わなくてはなりません。ですので、この部屋では不可能です」
「問題ない。魔法陣で封じているだけだ。一時的に結界を解け」
「っは」
スイッチ式の魔法アイテムで魔法を封じる結界を展開していたのね。
スイッチ式の魔法アイテムは、スイッチが入っている間は片方の魔法陣に入っている魔力が流れ込むようになっていて、それで効力を発揮する。
『聞こえるか』
『聞こえるわ』
『こっから叩きのめすぞ』
私は、レオンス様を見て頷いた。
「では、どうぞ。こちらに闇属性の魔力を流すだけです」
「うむ。何? 闇属性だと」
「はい」
「そうでした。彼女が落とした魔法陣は闇属性で、驚きました」
「それは私のセリフですわ。闇属性などほとんどの人が扱えませんもの。まさかルイス様が扱えるなんて」
「待て。あの時は、無属性を流して聞かせたのだぞ」
私達の会話を聞き、驚いたノーモノミヤ公爵が話に割って入って来た。
「えぇ。そこだけ魔法陣を付け加えたのです。そして魔法アイテムに偽造した」
「何を言う! 魔法博士でもない、貴様が魔法陣を描けるわけがないだろう! しかも闇魔法だと。笑わせるな!」
ガムン公爵が、大嘘を付くなと怒鳴る。
気持ちはわからなくもない。魔法博士でもない彼が、誰も扱えないという闇魔法を使えるなど誰が思うだろうか。
「本当の事です。陛下、それに私が魔力を流して証明します」
「そうだな。まずは、私が流してみよう。それで作動しなければ、お願いしよう」
「へ、陛下、き、危険ではありませんか」
「おやガムン公爵。ファビアが、危険な物をいつも持ち歩いているとおっしゃるのですか?」
そうよ。持ち歩いているわけないじゃない。
これだって、瓶と一緒に持って来てレオンス様から渡されたものなんだから。
もちろん、私が作ったものだけどね。
ルイス様に、負けてなんていられないわ。
「ガムン公爵よ。そう思うのならあなたがやってみるとよいだろう」
「はい……」
本来なら破り捨てたいだろうけど、出来るわけもない。
ガムン公爵が魔力を流すも発動しなかった。続いて、陛下も流す。兵士にも試させた。
「レオンスよ。あなたも試しなさい」
「私ですか? 私でも無理ですが」
陛下に言われそう返し、レオンス様も魔力を流すが発動しない。
「では、ルイス。君もやってみなさい」
注目される中、ルイス様は魔法陣に魔力を流し込むのだった。
ガムン公爵が、にやりとして言う。
「身に覚えがありません」
「私もです。それに研究室にあったのもおかしいと思いませんか?」
「逆に安全だと思ったのだろう」
捏造したぐらいだから、筆跡も真似てあるわよね。どうしよう。
「ファビア。君が大切な物はどこに保管してある」
あ、そっか。あれね!
「陛下! 録音したものが他にもあります。それは研究室にではなく、屋敷にあるのです。リサおばあ様に言えば、場所がわかるのですぐにここへ届けて下さると思います」
「そ、そんなもの、証拠になるか!」
「なります! 今日も身に着けていたのですから、あの時も身に着けていたのです」
「あの時だと……」
「はい。フロール嬢が言っている学園舞踏会の当日です」
ガムン公爵がハッとする。
私達が言っている事が本当だと悟ったのでしょうけど、すでに遅しよ。
「すぐに連絡せよ」
「っは」
陛下が兵士に命令を下し、兵士は部屋から出て行った。
「しかし、契約書がある。これはどうする? あくまでもファビア嬢が作った証にしかならないだろう」
「えぇ。でも、フロール嬢が言っている事が違うと証明ができます」
ガムン公爵の顔色が変わった。
フロール嬢からどう聞いているかわからないけど、事実と全然違うのだからでたらめだと証明できる。
そうなれば、フロール嬢をこの場に引きずり出せるわ。
「そうだ。ちなみにこの前の録音ありましたか?」
レオンス様が、ニヤリとして聞く。
「これではないのか」
陛下が、張りぼての魔法アイテムを指さす。
「いいえ。私の部屋にはそんな物はなかったです」
「処分したのか」
陛下の問いにルイス様は違うと首を横に振った。
「あの後、レオンス様に話を聞き魔法陣はお返ししました」
「な……」
ガムン公爵が、目を見開く。そして、そのまま私の方を向いた。凄い睨みつけられた。
「それが本当ならこの契約書があるのはおかしいな」
そう陛下が呟く。
そうです! おかしいのです。
「それと疑問なのですが、魔法関係の物を持ち出してきたのですよね? なぜ、魔法陣が一枚もないのでしょうか」
そうルイス様が兵士に問いかけた。
「え? そ、それは……」
「もし、燃やしたなどと言うのならガムン公爵の命だと言え、あなたを訴えますからね」
「え……」
「何を言う! 私がそんな命令をするわけないだろう!」
兵士もガムン公爵も慌てている。
研究室の魔法陣の類は全て屋敷に持って行ったはず。
レオンス様が言った通り、燃やすのね。
もし万が一、仕掛けて来た場合は、証拠を探すと言って逆に証拠隠滅を図ろうとするだろう。
だが、兵士が魔法陣を見て判別できるわけもない。
だから見つからなかったとして、全て魔法陣を処分するだろう。紙なら燃やせば済むのだから。
とレオンス様が言った。
その通りだったみたいね。
ルイス様の部屋には、わざとどうでもいい魔法陣を置いておいた。持ってこられても証拠にすらならない魔法陣をね。
「では待っている間、今持っているその魔法陣が本物か検証しようではないか」
「はい。構いません。ですが聞く為には魔法、いえ魔力を使わなくてはなりません。ですので、この部屋では不可能です」
「問題ない。魔法陣で封じているだけだ。一時的に結界を解け」
「っは」
スイッチ式の魔法アイテムで魔法を封じる結界を展開していたのね。
スイッチ式の魔法アイテムは、スイッチが入っている間は片方の魔法陣に入っている魔力が流れ込むようになっていて、それで効力を発揮する。
『聞こえるか』
『聞こえるわ』
『こっから叩きのめすぞ』
私は、レオンス様を見て頷いた。
「では、どうぞ。こちらに闇属性の魔力を流すだけです」
「うむ。何? 闇属性だと」
「はい」
「そうでした。彼女が落とした魔法陣は闇属性で、驚きました」
「それは私のセリフですわ。闇属性などほとんどの人が扱えませんもの。まさかルイス様が扱えるなんて」
「待て。あの時は、無属性を流して聞かせたのだぞ」
私達の会話を聞き、驚いたノーモノミヤ公爵が話に割って入って来た。
「えぇ。そこだけ魔法陣を付け加えたのです。そして魔法アイテムに偽造した」
「何を言う! 魔法博士でもない、貴様が魔法陣を描けるわけがないだろう! しかも闇魔法だと。笑わせるな!」
ガムン公爵が、大嘘を付くなと怒鳴る。
気持ちはわからなくもない。魔法博士でもない彼が、誰も扱えないという闇魔法を使えるなど誰が思うだろうか。
「本当の事です。陛下、それに私が魔力を流して証明します」
「そうだな。まずは、私が流してみよう。それで作動しなければ、お願いしよう」
「へ、陛下、き、危険ではありませんか」
「おやガムン公爵。ファビアが、危険な物をいつも持ち歩いているとおっしゃるのですか?」
そうよ。持ち歩いているわけないじゃない。
これだって、瓶と一緒に持って来てレオンス様から渡されたものなんだから。
もちろん、私が作ったものだけどね。
ルイス様に、負けてなんていられないわ。
「ガムン公爵よ。そう思うのならあなたがやってみるとよいだろう」
「はい……」
本来なら破り捨てたいだろうけど、出来るわけもない。
ガムン公爵が魔力を流すも発動しなかった。続いて、陛下も流す。兵士にも試させた。
「レオンスよ。あなたも試しなさい」
「私ですか? 私でも無理ですが」
陛下に言われそう返し、レオンス様も魔力を流すが発動しない。
「では、ルイス。君もやってみなさい」
注目される中、ルイス様は魔法陣に魔力を流し込むのだった。
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