【完結】ケーキの為にと頑張っていたらこうなりました

すみ 小桜(sumitan)

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第53話

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 何かおかしいわ。部屋自体は広くないけど、警備は部屋の外。おもてなしはないけど、ソファーに座れている。
 レオンス様も同じような待遇だといいけど。

 パタン。
 いきなり人が入って来た。
 って、ルイス様!? なんで? え、命令を下したのってガムン公爵ではなくて、彼? いやこの場合、父親ノーモノミヤ公爵か。

 慌てて私は立ち上がった。

 「そんな警戒しなくていいよ。襲ったりしないから」
 「………」

 やっぱり知っているのね。
 私をどうする気かしら。レオンス様を動かす為に、私を盾に取る気かしら。絶対にそんなの嫌!

 「わ、私を盾にしたってレオンス様は言う事なんて聞かないわよ」
 「別に。彼には興味はない」
 「え……」

 興味はないですって?
 まあ確かに彼の方がレオンス様より爵位は上だけど。ではここには何をしに来たわけ?

 「私が興味があるのは君だよ。あ、でも婚約者とかになりたいと言う訳ではないから。協力者になろうって事」
 「協力者?」
 「まずさ。これ、聞いてほしんだよね」

 少し離れていた場所にいたルイス様が近づき、目の前のテーブルに魔法アイテムを置いた。
 魔法アイテムと言っても、魔法陣がむき出しのものだけど。
 しかもこれって、闇属性のだわ!

 私が驚いて彼を見れば、ニヤリとして私を見ていた。

 「やっぱりわかるんだね。これがどういう物かもわかるかい?」

 私を試しているの?
 真ん中に、5つの魔法陣に囲まれた魔法陣があって、魔法陣の円が触れているから連携されているわよね。
 真ん中のは、音の出力? 知らない図形もチラホラ。
 闇魔法の図形は、他の属性で使われない図形が多数あるのよね。

 周りの魔法陣は、殆どが同じね。音の記憶? あぁ、一時間ずつぐらいに区切られているんだ。だから全部で五時間ほど記憶できるって事かしら。
 あ、人の声を感知したら記憶を始める様ね。

 って、もしかしてこれ、盗聴器とか!?
 この世界でこんな発想をする人がいるなんて。
 待って。なぜこんな物を私に見せるの? 何が録音されているのよ。

 「これが何かわかったみたいだね」
 「と、盗聴器?」
 「トウチョウキか。いいね。そうこれは、人の音声を記憶する魔法陣。もちろん、こんな品物出回ってなんていないよ」
 「じゃ、ガムン公爵が手配したもの?」
 「あの人が、そんな事を考えるわけないだろう。魔法陣どころか魔法すらよくわかってない人なんだから」
 「………」

 少なくともガムン公爵と手は組んでいなさそうね。
 で、一体何が録音されているのよ。

 「録音内容が知りたいようだね。聞かせてあげる」

 『君って、無属性だけど全種類の適性持ちで入学したって本当?』
 『よくご存じで』
 『でも使えるの水魔法と風魔法なんだよね。レオンスは、2属性持ちだけど、風魔法も使えたみたいだけど』
 『まあ、練習すれば少しは使えるようになりますから』
 『では君は? 最初から素質があったのだから、本当は全種類扱えるのではないの?』
 『ベビット殿下には敵いませんね。一応、全種類使えますよ。これ内緒ですよ』

 ぎゃぁ! やらかしたぁ! まさか盗聴されているなんて思わないじゃない!

 「こ、これどうする気?」
 「別にどうする気もないよ。君しだい」
 「……何に協力させたいのよ」

 まさか、これで脅されるとは思わなかったわ。
 せっかく誤魔化して、魔法博士になったのに。

 「僕の野望かな?」
 「え? 野望? まさか世界征服とか?」
 「何それ。僕にそんな事出来るわけないだろう」
 
 そうなんだ。じゃ一体なんなのよ。

 「僕の力を認めさせたいのさ」
 「力……魔法の事?」
 「そう。もうわかったよね。僕は闇魔法の属性持ちなんだ」
 「えぇ!?」
 「そこまで驚く事? 君もだろう。でも君は、それ以外も扱えたから魔法学園に通えた」
 「もしかして、闇魔法だから反対されたとか?」
 「いいや。試験は受けたさ。学力テストも通過。だが、魔力測定で落とされた。闇属性持ちは、無属性扱いでさ。闇属性以外、合格ラインを越えなかった。だから不合格になったんだ」
 「え……」

 どういう事? 闇属性は越えたのよね。

 「闇属性は、カウントされないんだ。先生もいないしね。不合格だけど、闇属性持ちに渡される書籍をもらったよ。……僕は! 魔法の勉強をしたかったんだ! ちゃんと闇属性は基準を超えたのに、闇属性だからと不合格になったんだ! そんな理不尽があるか!?」

 後半は怒鳴るようにルイス様は語る。
 余程悔しかったのでしょうね。

 「僕は、密かに闇魔法の研究をする事にした。いつか見返してやると思ってね。ねえ、知っているかい。闇魔法で、魔物を封印したんだ。凄い魔法なのに、闇属性ごとそれこそ闇に葬った」

 闇属性の魔法で魔物を封印したですって!
 まさか彼は、闇魔法で魔物を解放しようとしているのではないでしょうね。

 「魔物を解放する気?」
 「まさか。その逆だよ。魔物を消滅させる。知っているよね。エイデース帝国に滅ぼされた、ディードアウト王国があった場所に封印されているのを」

 ディードアウト王国? 知らなかった。場所は、コチラビィ王国に面したエイデース帝国の領土だと習ったけど。
 詳しいわね。本気で魔物を狩るつもりなの?
 無理よ。今より魔法が盛んだった時代にでさえ、倒せなかったのに。
 ガキンチョの野望は恐ろしい。どうすんのこれ!
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