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第50話
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「ファビア……」
レオンス様が静かに私の名前を呼んだ。
私の目を見て真剣な顔つきになる。
ちょっと、何を言う気なの? 告白? それともまた思わせぶり!?
「もし、爵位をアマートに譲り、一緒に逃避行しようと言ったらついてくるか?」
「は!?」
突拍子なさすぎナノデスガ。
「俺は、お前を離したくない」
「それって、この世界で生きていくために?」
「アホか。それならフロール嬢に乗り替えるだろうに」
それだけ言って、またジッと私を見つめる。
えーと……。これは、何? 私に答えを求めてる?
都合がいいから私を選んだけど、今は違うって事でいいのかな? うん? それって私を好きになったから離さないって事?
え? え? それで合ってる?
凄く心臓が早く動いている。どう答えたらいいの?
「耳まで真っ赤」
「………」
「俺、ロリだったのかな」
「は?」
「君を好きになってしまっていた……」
「す……」
好きになっていたぁ!?
え? なんて返事をすればいいの? もうそれはロリですって言えばいい?
「誰にも奪われたくないって思って気が付いた。二人が一緒にいるだけで、イラついて……。フロール嬢のお陰かな。悔しいけど」
フロール嬢のお陰……。
そう言えば私も、フロール嬢がレオンス様を好きかもと思った時、渡したくないと思った。
私も好きになっちゃった?
前世20代のはずだったのに。ううん。前世なんて関係ないのよね。きっと……。
「わ、私も好きに……」
「ごめん。聞こえない。もうちょっとボリューム上げて」
聞こえているでしょう。顔がニヤついているわよ!
「私も好きって言ったの!」
「了承とった」
え? えぇ!!!!
一瞬だったけど、彼の唇が私の唇に触れた。
「ななな! 了承してませんけどぉ!!!」
って、何抱きしめてるんだよ!
「うかうかしていたら、全部持ってかれそうで」
「あ、あのね。別にベビット殿下は私を好きなわけではないわ。既成事実があったと思わせる為にキスマークをつけようと……」
「へえ。じゃ先に付けちゃう?」
「何言ってるのよ! ダメに決まってるでしょう!」
「クククク……」
もうすぐに揶揄うんだから!
「はぁ。しかし困ったな」
「そうね。相手は王子に公爵家だもね」
「あぁ。王子達三人相手にしなくてはいけない」
「え? 全員?」
それはないでしょう。
「別にベビット殿下の様な事をしてくると言う事ではなく、彼らを使って仕掛けて来るって事だ」
「仕掛けてくるって、フロール嬢が?」
そうだとレオンス様は頷くけど、今回はベビット殿下の策なんでしょう?
「ベビット殿下が気づいていないだけで、たぶん彼女が誘導したんだと思う。彼女が、ガムン公爵の隠し子だと教わっているかどうかは、わからない。けどそれは、ゲームの知識として知っているんだ」
「そうだけど。そんなに上手くいく?」
「彼らの性格なども把握していれば可能だろう。ただもう一つ引っ掛かっている事があるんだ」
「引っかかる」
レオンス様は、そうだと頷く。
「ガムン公爵の隠し子だろうと言ったら、彼女は俺がゲームを知らないとわかったと言ったんだ」
「え? どういう事?」
「わからない。この情報も、殆どが知らない事だ。フロール嬢の事を中心に詳しく調べないとな」
そう言えば、ルイス様はフロール嬢を悪く言っていたけど、公爵家を馬鹿にした事にならない?
「ねえレオンス様。フロール嬢の本家ってガムン公爵家なんだよね?」
「いいや。そうだったら簡単に知れているだろう。彼女が隠し子だって。彼女の本家は、ルナイリー侯爵家。ただし、ガムン公爵の姉が嫁いだところだ」
そう言う事か。
ルイス様は、フロール嬢の本家がルナイリー侯爵家だとは知っていたけど、ガムン公爵の隠し子だとは知らなかったんだ。
まあ王弟である父親は知っているかもしれないけどね。
乙女ゲームの世界か。彼女は何を求めているのかしらね。少なくとも攻略者とくっつく事ではないわね。
「彼女は、ベビット殿下の何を知っていて利用したのかしら?」
「そうだな。たぶん、こんな事を考える程に魔法に執着していて、帰れば婚約者がいるって事を知っていたのだろうな」
そうか。ゲームでは、それをどうやって解決したのかしら?
ベビット殿下の考えた作戦の様な、魔法博士と結婚? 彼が攻略者ならフロール嬢とくっつかないとハッピーエンドにならないわよね。
「もしかしてゲームでは、結婚する為にフロール嬢は魔法学園に通うのかしら?」
「うーん。それならベビット殿下自身ではないか? まあ魔法学園に受かったならフロール嬢との婚約を認める的な? 俺もそんな感じで、取引したんだし」
そうだった。この人、親とそんな取引したって言っていたわね。
タカビーダ侯爵家の秘密を知れば、何か手掛かりになるかもしれないわ。
「ねえ。物は相談なのだけど。タカビーダ侯爵家の秘密を暴露してみない? そこに何かがあるかもしれないわ」
「……本当は教えたくないんだけどな。知れば君にも背負わせてしまう」
「何を言っているのよ。あなたと婚約した時点で、もう担いでるみたいなものじゃないの」
少し困惑してみせるも、レオンス様は頷いた。
「そうだな。たぶん、ゲーム内で凄く変えた事って、タカビーダ侯爵家の内情だろうだからな」
そう言うとレオンス様は、大きく息を吸ってから語り出したのだった――。
レオンス様が静かに私の名前を呼んだ。
私の目を見て真剣な顔つきになる。
ちょっと、何を言う気なの? 告白? それともまた思わせぶり!?
「もし、爵位をアマートに譲り、一緒に逃避行しようと言ったらついてくるか?」
「は!?」
突拍子なさすぎナノデスガ。
「俺は、お前を離したくない」
「それって、この世界で生きていくために?」
「アホか。それならフロール嬢に乗り替えるだろうに」
それだけ言って、またジッと私を見つめる。
えーと……。これは、何? 私に答えを求めてる?
都合がいいから私を選んだけど、今は違うって事でいいのかな? うん? それって私を好きになったから離さないって事?
え? え? それで合ってる?
凄く心臓が早く動いている。どう答えたらいいの?
「耳まで真っ赤」
「………」
「俺、ロリだったのかな」
「は?」
「君を好きになってしまっていた……」
「す……」
好きになっていたぁ!?
え? なんて返事をすればいいの? もうそれはロリですって言えばいい?
「誰にも奪われたくないって思って気が付いた。二人が一緒にいるだけで、イラついて……。フロール嬢のお陰かな。悔しいけど」
フロール嬢のお陰……。
そう言えば私も、フロール嬢がレオンス様を好きかもと思った時、渡したくないと思った。
私も好きになっちゃった?
前世20代のはずだったのに。ううん。前世なんて関係ないのよね。きっと……。
「わ、私も好きに……」
「ごめん。聞こえない。もうちょっとボリューム上げて」
聞こえているでしょう。顔がニヤついているわよ!
「私も好きって言ったの!」
「了承とった」
え? えぇ!!!!
一瞬だったけど、彼の唇が私の唇に触れた。
「ななな! 了承してませんけどぉ!!!」
って、何抱きしめてるんだよ!
「うかうかしていたら、全部持ってかれそうで」
「あ、あのね。別にベビット殿下は私を好きなわけではないわ。既成事実があったと思わせる為にキスマークをつけようと……」
「へえ。じゃ先に付けちゃう?」
「何言ってるのよ! ダメに決まってるでしょう!」
「クククク……」
もうすぐに揶揄うんだから!
「はぁ。しかし困ったな」
「そうね。相手は王子に公爵家だもね」
「あぁ。王子達三人相手にしなくてはいけない」
「え? 全員?」
それはないでしょう。
「別にベビット殿下の様な事をしてくると言う事ではなく、彼らを使って仕掛けて来るって事だ」
「仕掛けてくるって、フロール嬢が?」
そうだとレオンス様は頷くけど、今回はベビット殿下の策なんでしょう?
「ベビット殿下が気づいていないだけで、たぶん彼女が誘導したんだと思う。彼女が、ガムン公爵の隠し子だと教わっているかどうかは、わからない。けどそれは、ゲームの知識として知っているんだ」
「そうだけど。そんなに上手くいく?」
「彼らの性格なども把握していれば可能だろう。ただもう一つ引っ掛かっている事があるんだ」
「引っかかる」
レオンス様は、そうだと頷く。
「ガムン公爵の隠し子だろうと言ったら、彼女は俺がゲームを知らないとわかったと言ったんだ」
「え? どういう事?」
「わからない。この情報も、殆どが知らない事だ。フロール嬢の事を中心に詳しく調べないとな」
そう言えば、ルイス様はフロール嬢を悪く言っていたけど、公爵家を馬鹿にした事にならない?
「ねえレオンス様。フロール嬢の本家ってガムン公爵家なんだよね?」
「いいや。そうだったら簡単に知れているだろう。彼女が隠し子だって。彼女の本家は、ルナイリー侯爵家。ただし、ガムン公爵の姉が嫁いだところだ」
そう言う事か。
ルイス様は、フロール嬢の本家がルナイリー侯爵家だとは知っていたけど、ガムン公爵の隠し子だとは知らなかったんだ。
まあ王弟である父親は知っているかもしれないけどね。
乙女ゲームの世界か。彼女は何を求めているのかしらね。少なくとも攻略者とくっつく事ではないわね。
「彼女は、ベビット殿下の何を知っていて利用したのかしら?」
「そうだな。たぶん、こんな事を考える程に魔法に執着していて、帰れば婚約者がいるって事を知っていたのだろうな」
そうか。ゲームでは、それをどうやって解決したのかしら?
ベビット殿下の考えた作戦の様な、魔法博士と結婚? 彼が攻略者ならフロール嬢とくっつかないとハッピーエンドにならないわよね。
「もしかしてゲームでは、結婚する為にフロール嬢は魔法学園に通うのかしら?」
「うーん。それならベビット殿下自身ではないか? まあ魔法学園に受かったならフロール嬢との婚約を認める的な? 俺もそんな感じで、取引したんだし」
そうだった。この人、親とそんな取引したって言っていたわね。
タカビーダ侯爵家の秘密を知れば、何か手掛かりになるかもしれないわ。
「ねえ。物は相談なのだけど。タカビーダ侯爵家の秘密を暴露してみない? そこに何かがあるかもしれないわ」
「……本当は教えたくないんだけどな。知れば君にも背負わせてしまう」
「何を言っているのよ。あなたと婚約した時点で、もう担いでるみたいなものじゃないの」
少し困惑してみせるも、レオンス様は頷いた。
「そうだな。たぶん、ゲーム内で凄く変えた事って、タカビーダ侯爵家の内情だろうだからな」
そう言うとレオンス様は、大きく息を吸ってから語り出したのだった――。
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