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第44話
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「驚きました。まさか、無鉄砲な教え方だと思っていたら、思わぬ逸材が相手だったとは」
トリカリト先生、興奮しすぎです。ちょっと意味不明な言葉になっていますよ。
つまり、フロール嬢が凄かったからレオンス様のやり方でもうまく行ったと言いたいのよね。
「確認だが、今日初めて魔法を使ったのだよな」
「えぇ。もちろんですわ」
レオンス様の問いに、にっこりとほほ笑んでフロール嬢が答えた。
「それは、教え甲斐がありそうだ」
「ご指導宜しくお願い致しますわ」
「私も頑張らなければ!」
二人の様子を見てバビット殿下が気合を入れている。これは、危ないわね。
「バビット様。ここ以外では呪文を唱えてはいけませんよ。魔法が発動してしまいます」
「う……。そうだ。あの魔法陣を」
「持っておりません」
あれは支給されたものだけど、自作はもちろん持っている。けどあれは、闇魔法を流さないと使えない魔法陣なのよね。
「ではせめて、毎日授業を!」
「え!」
魔法の授業は、週に二度になっている。毎日なんて冗談ではない!
「わ、私では決めかねます。それにバビット様だけ毎日は無理だと思われます」
王子だから贔屓しているのではないという体裁の為に、フロール嬢にレオンス様が教える事になったのだから。
「どうしてもと言うのなら、魔法学園で支給されているブレスレットをお願いしてみてはいかがでしょうか。先ほどの魔法陣と同じ効果があります。授業をお受けなる時に外せばいいかと」
「ナイスアイデアだ! ファビア嬢」
余程嬉しかったのか、ギュッと両手を握られた。
「あ、あの痛いです、殿下」
「あ、すまぬ」
ハッとして、ベビット殿下が手を離す。
「では、ありがとう。イルデフォンソ! 行くぞ」
ガシッとイルデフォンソ殿下を捕まえると、驚く殿下をお構いなく引っ張って行く。
「お待ちを!」
「おい。待て。わかったから、離せ」
騒がしくバビット殿下とイルデフォンソ殿下、その護衛達四人が教室から出て行った。
「魔法とは不思議なものだな。何もない所に火を出すのだから」
一緒に出て行かなかったマルシアール殿下が、レオンス様に向かって言う。
剣など下げているし、魔法になど興味がないのかと思っていたけど、そうでもないのかしらね。
「何もないわけではありませんよ。火種はあります。魔力です」
「なるほど」
「ちなみに、マルシアール様でも魔法は使えますよ」
「ほう。俺には、適正はなかったが」
「ファビアは、無属性です」
「何!?」
驚いて皆が私を見た。
「風と水ではなかったのですか?」
フロール嬢が信じられない様な顔を私に向けた。
「えーと。頑張りマシタ?」
もう厄介だからそう言う事をここで言わないでよね!
「どうですマルシアール様も習ってみては」
「なりません! 陛下に許可もなく、その様な事を」
トリカリト先生が、レオンス様を睨みつけていた。温厚な人だと思ったけど、ちょっと怖いです。
「これは出過ぎた真似を致しました。今のは、聞かなかった事にして頂くとありがたい」
「そうだな。私にはこれがある」
腰に下げた剣にポンと手を置くと、マルシアール殿下は歩き出し、護衛と一緒に教室を出て行った。
もうレオンス様ったら何を言い出すのよ。
魔法学園を敵に回すつもり? いや国かな。もしマルシアール殿下が、同じ方法で魔法を使えてしまったら、魔法測定して属性を調べている意味がなくなるじゃないの。
たぶん、規定値を越えた属性でないと、威力が出ない。それと、持続性もないだけ。発動するだけなら可能だと思う。
まあだからと言って、魔法博士になれる可能性があるかと問われれば、否だけど。
だと言って、これ証明しちゃってはいけないやつだと思うのよね!
魔学の授業が終わり、私達は一緒の馬車で帰宅する。魔学の授業がある時は、一緒に帰る事になった。
そして、タカビーダ侯爵家に寄りケーキを食べるのよ!
にしても、機嫌が悪そうね。隣に座るレオンス様が無言だわ。そんなに、トリカリト先生がに叱られたのが、癪にさわったのかしらね。
――◆――◆――◆――
どういう事だ。30秒も魔法を持続させた。才能云々ではない。これが、凄い火を放ったならわかるが。
彼女が出した火は、威力はないものの一定だった。
俺達だって、魔力を一定に保つ訓練をして出来るようになった。つまり、魔法は扱えるって事だ。
魔法を習いたいと言ったというが、王子達に近づく為か? 子爵家の令嬢でありながら王都の学園に入り、実力で優良クラスになった。
けどファビアもそうだが、子爵家の勉強だけではまず無理だ。
本家のルナイリー侯爵家が、目を掛けているという情報はない。
だが、ルナイリー侯爵家には、あのガムン公爵の姉が嫁いでいる。
王子達に近づく為に、彼女を優良クラスに潜入させたのか? しかし、令嬢より令息の方がいいだろう。同じ年の傍系はいる。
わからないな。フロール嬢を調べてみる必要があるようだ。
はぁ。本当に面倒くさい。俺が、侯爵家に生まれなければ。伯爵家ぐらいが丁度よかったのに。
いやそれより、あいつめ! ファビアの手を握りやがって!
「ファビア、手を貸せ」
「え? 手? 何? 何かするの?」
「そうじゃなく。手を拭く」
「はい!? ちょっと痛いのだけど!」
俺は、ごしごしとファビアの両手を拭いた。
「もう、何をするのよ!」
「いたぁ」
ハンカチを持った手の甲をつねられた。拭いたぐらいでつねるなよな!
トリカリト先生、興奮しすぎです。ちょっと意味不明な言葉になっていますよ。
つまり、フロール嬢が凄かったからレオンス様のやり方でもうまく行ったと言いたいのよね。
「確認だが、今日初めて魔法を使ったのだよな」
「えぇ。もちろんですわ」
レオンス様の問いに、にっこりとほほ笑んでフロール嬢が答えた。
「それは、教え甲斐がありそうだ」
「ご指導宜しくお願い致しますわ」
「私も頑張らなければ!」
二人の様子を見てバビット殿下が気合を入れている。これは、危ないわね。
「バビット様。ここ以外では呪文を唱えてはいけませんよ。魔法が発動してしまいます」
「う……。そうだ。あの魔法陣を」
「持っておりません」
あれは支給されたものだけど、自作はもちろん持っている。けどあれは、闇魔法を流さないと使えない魔法陣なのよね。
「ではせめて、毎日授業を!」
「え!」
魔法の授業は、週に二度になっている。毎日なんて冗談ではない!
「わ、私では決めかねます。それにバビット様だけ毎日は無理だと思われます」
王子だから贔屓しているのではないという体裁の為に、フロール嬢にレオンス様が教える事になったのだから。
「どうしてもと言うのなら、魔法学園で支給されているブレスレットをお願いしてみてはいかがでしょうか。先ほどの魔法陣と同じ効果があります。授業をお受けなる時に外せばいいかと」
「ナイスアイデアだ! ファビア嬢」
余程嬉しかったのか、ギュッと両手を握られた。
「あ、あの痛いです、殿下」
「あ、すまぬ」
ハッとして、ベビット殿下が手を離す。
「では、ありがとう。イルデフォンソ! 行くぞ」
ガシッとイルデフォンソ殿下を捕まえると、驚く殿下をお構いなく引っ張って行く。
「お待ちを!」
「おい。待て。わかったから、離せ」
騒がしくバビット殿下とイルデフォンソ殿下、その護衛達四人が教室から出て行った。
「魔法とは不思議なものだな。何もない所に火を出すのだから」
一緒に出て行かなかったマルシアール殿下が、レオンス様に向かって言う。
剣など下げているし、魔法になど興味がないのかと思っていたけど、そうでもないのかしらね。
「何もないわけではありませんよ。火種はあります。魔力です」
「なるほど」
「ちなみに、マルシアール様でも魔法は使えますよ」
「ほう。俺には、適正はなかったが」
「ファビアは、無属性です」
「何!?」
驚いて皆が私を見た。
「風と水ではなかったのですか?」
フロール嬢が信じられない様な顔を私に向けた。
「えーと。頑張りマシタ?」
もう厄介だからそう言う事をここで言わないでよね!
「どうですマルシアール様も習ってみては」
「なりません! 陛下に許可もなく、その様な事を」
トリカリト先生が、レオンス様を睨みつけていた。温厚な人だと思ったけど、ちょっと怖いです。
「これは出過ぎた真似を致しました。今のは、聞かなかった事にして頂くとありがたい」
「そうだな。私にはこれがある」
腰に下げた剣にポンと手を置くと、マルシアール殿下は歩き出し、護衛と一緒に教室を出て行った。
もうレオンス様ったら何を言い出すのよ。
魔法学園を敵に回すつもり? いや国かな。もしマルシアール殿下が、同じ方法で魔法を使えてしまったら、魔法測定して属性を調べている意味がなくなるじゃないの。
たぶん、規定値を越えた属性でないと、威力が出ない。それと、持続性もないだけ。発動するだけなら可能だと思う。
まあだからと言って、魔法博士になれる可能性があるかと問われれば、否だけど。
だと言って、これ証明しちゃってはいけないやつだと思うのよね!
魔学の授業が終わり、私達は一緒の馬車で帰宅する。魔学の授業がある時は、一緒に帰る事になった。
そして、タカビーダ侯爵家に寄りケーキを食べるのよ!
にしても、機嫌が悪そうね。隣に座るレオンス様が無言だわ。そんなに、トリカリト先生がに叱られたのが、癪にさわったのかしらね。
――◆――◆――◆――
どういう事だ。30秒も魔法を持続させた。才能云々ではない。これが、凄い火を放ったならわかるが。
彼女が出した火は、威力はないものの一定だった。
俺達だって、魔力を一定に保つ訓練をして出来るようになった。つまり、魔法は扱えるって事だ。
魔法を習いたいと言ったというが、王子達に近づく為か? 子爵家の令嬢でありながら王都の学園に入り、実力で優良クラスになった。
けどファビアもそうだが、子爵家の勉強だけではまず無理だ。
本家のルナイリー侯爵家が、目を掛けているという情報はない。
だが、ルナイリー侯爵家には、あのガムン公爵の姉が嫁いでいる。
王子達に近づく為に、彼女を優良クラスに潜入させたのか? しかし、令嬢より令息の方がいいだろう。同じ年の傍系はいる。
わからないな。フロール嬢を調べてみる必要があるようだ。
はぁ。本当に面倒くさい。俺が、侯爵家に生まれなければ。伯爵家ぐらいが丁度よかったのに。
いやそれより、あいつめ! ファビアの手を握りやがって!
「ファビア、手を貸せ」
「え? 手? 何? 何かするの?」
「そうじゃなく。手を拭く」
「はい!? ちょっと痛いのだけど!」
俺は、ごしごしとファビアの両手を拭いた。
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